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第1話  影になった日

俺は執事として働いている、名前をゲルドと言うものだ。大変だと思っていた執事業も、十年が経った今では楽なもんだ。 

そんな俺も今年30歳になった。同僚達の中には結婚してきたものもちらほら…。


可愛い女の子にプロポーズ!結婚!幸せな家庭!


俺も絶対にそうなってやる。

そう風思ってたんだ。


…あの日までは。


忘れようと思ったって忘れることが出来ない。

俺の人生が大きく変わったあの日。

そういえばあの日も、今日みたいなバカみたいな晴れだった。




第1話


ペール国は世界一平和的と言われる平和な国。

国の実権を支配しているのはペロル家。カインズ家。ドスロリ家の3大名家。3大貴族は500年もの間、互いに協力しながら国を牽引してきた。


ペロル家は国内で、特に平和的思想の貴族。

国民からの支持も3大名家の中で1番だった。


しかし、そんなペール国に不穏な噂が立った。

「2つの名家がペロル家を国から追い出そうとしている」というのだ。


ペロル家の当主はこの噂を聞いて長く頭を悩ませた。

そして、党首はペロル家の者にしか伝えない、秘密の計画を進めることにしたのだ。


その計画とは「王女影武者計画」

近い将来、反乱が起こった際に王女を逃がすため。瓜2つの影武者を作り出し囮にするという計画だ。


この計画の影武者に選ばれたのは家に仕える執事の男。歳は30で背が低い結婚をしていない男だ。

王女のお気に入りであり、当主からの信頼も厚かった"ゲルド"と言う男は計画の立案がされた当日からの1年間。体型の改善、宮廷作法の徹底、社会情勢、ありとあらゆる知識の勉強を叩き込まれた。


そして計画開始から1年が経過。

過酷すぎる心身の改造を乗り越えて、執事は見事に計画を成し遂げた。完璧な王女の影武者となったのだ。


男らしかった体は徹底した食事管理と運動療法で柔らかくなり。荒々しかった言葉遣いや行動は、どの地位の人間が見ても上級貴族の振る舞いにしか見えなかった。更には王族に必要である知識、その全て頭に埋め込まれた。

執事の姿は、今や誰が見ても"王女そのもの"だった。


ただの噂話だった両家の陰謀論は1年が経った現在。

いつ反乱が起こってもおかしく無いという状況に悪化していた。




そして、影武者計画の完成から程なくしてペロル家の内通者が決行日の詳細を当主に持ち帰った。

計画を聞いた当主は、直ぐに王女を呼び、計画を伝えた。当主の計画を聞いた王女は、覚悟を決めたようにコクッと1つ頷いて部屋を出た。


…そして王女は影武者である執事のいる部屋へと向かう。


部屋に入ると、自分と同じ顔の自分と同じ服を着ている"かつて執事だった者"が窓から街の景色を眺めていた。


影武者

「これはこれは姫様。窓をご覧ください。今日はいつにも増してお日様が輝いてはいませんか」


影武者は王女に気づくと、1年前と同じように話しかけてきた。


王女

「ねえ…。お父様から決行の日が聞かされたわ」


影武者

「そうでしたか」


王女

「貴方は…私のために命を落とせるの?」


影武者

「勿論です。私はそのために作られたのですよ」


影武者はおっとりとした声でそう話した。


王女

「…」


王女はそんなゲルドを強く睨んでいた。


王女

「お父様の話では明日。私は国1番の技師に作らせた馬車に乗って逃げることになってる。貴方は身代わりとして…」


王女は声を震わせながら、影武者に計画の内容を伝えていく。


王女

「この家の西に停めてある馬車を使って走りなさい。兵士がは西側に配備されてるそうだから出来るだけ全力で逃げきって、いい囮になるのよ」


影武者

「えぇ…畏まりました」


影武者はその内容を承諾した。


王女

「それじゃ…さよなら…。これまで…ありがとね…」


王女はそう言って影武者のいる部屋を出て行った。

お気に入りで自身が小さかった頃から世話をしてくれた執事への感謝を述べて。


影武者

「…」


影武者もこの時だけは、王女の言葉にに答えられず。

震える口を必死に噛みこんだ。









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