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探偵胡吉治シリーズ第一弾「消えた200円」その2

私立「会夢中学校」にこの人ありと謳われた名探偵がいた!

その名は名探偵胡吉治。

後に市の中学という中学を席巻するつもりでいる探偵部部長である彼に夏休み、とある依頼が訪れた!!


それは200円を置いたら翌日消えてしまうというものだった!!

盗難事件だ!!どうする探偵!?

 依頼の内容はこうだった。

 

降魔(ごうま)小学校の職員室前に黒電話があるんじゃが、夜中そこに200円を置くとなぜか翌日なくなっているそうなんじゃ。他の硬貨や100円だけならそのままなんじゃが、何故か200円のみ消えてしまうんじゃ。意味がわからんぞい。というわけで、どういうカラクリか調査して欲しいというわけじゃ」


 なるほど。

 要するに、降魔小学校の職員室前に黒電話があるが夜中そこに200円を置くとなぜか翌日なくなっているとのことで、他の硬貨や100円だけならそのままなのに何故か200円のみ消えてしまうので意味がわからんから、私のところにどういうカラクリなのか調査して欲しいということだな。


「胡吉くん、それ一国君のセリフまんま読んでるだけだねぇ~、うはは」


 この私の地の文にケチをつけ笑う野字原は置いておくとして、降魔小学校というのは、20年ほど前に廃校になった地元の小学校だ。

 当然校舎は立ち入り禁止なのだが、実は校庭のフェンスの一部に穴が開いてるらしく、そこから侵入することが可能のようで、一時期は不良のたまり場になっていたらしいのだが、確か何年か前にその校舎内で高校生たちの乱闘事件があったとのことで、それ以降誰も近寄らなくなっているとのことだ。


「うわさなんだけど、その時刃物で刺しちゃったとかで死人が出たらしいんだよ~。怖いよねぇ」

 

 野字原が私のクーラーボックスから勝手に取り出したコーヒー片手に恐怖なぞ微塵も感じていないあっけらかんとした顔で頷いていた。

 

「恐らくなんじゃが死人が出たのはその時だけではないぞ。現にあの校舎、ワシが見たところ怨霊が湧いてるんじゃ。ワシ霊感強いから見えるんじゃが、校庭の周りを地縛霊がうようよしておるから、入ろうにも入れん有様じゃ。祟られるのはゴメンなんじゃ」


 この頃賀市で死んだ人というのは、死んだ魂が一ツ橋公園にある「灯火の像」と呼ばれる銅像へ行き、そこでどのような霊になるか決められることとなっている。

 大往生なら天国行きだが、生前未練を残して死んだ者は、強い残留思念が浄化できず、怨霊や地縛霊となって現世に残ってしまう。

 そして街のあらゆる場所に派遣されるのだが、そういった場所を心霊スポットと呼んでいるのだ。

 霊の数だけ死人が出ている計算なので、怨霊や地縛霊が湧いているということは、どうやら高校生の乱闘以外にも何らかの事件があったみたいだな。


「ちなみに日本3大怨霊って知ってる?平将門(たいらのまさかど)菅原道真(すがわらのみちざね)崇徳天皇(すとくてんのう)の3人なんだよ。恨みが深かったみたいだねぇ、うらめしや~」


 野字原が両手をだらりと下げて一国君に迫り、それを見て恐怖におののく一国君の可憐な顔を見て、写真を一枚撮りたいものだと思った私は、ふと肝心なことに気づいた。


「ちょっと待て!!!そんなに悪霊がうようよしているところに200円を置きに行くやつがいるのか!?」

 

 すると一国君はそうじゃと鼻を鳴らした。


「ワシも解せんが同期の桜から聞いた確かな噂じゃ。ワシのような霊感のあるやつは中に入れんが、まったくないやつなら可能じゃ。霊は見えない人間には基本興味ないんじゃ」


 う~む、胡吉探偵事務所初の事件が心霊スポットの調査とは。

 ともあれ、ようやく舞い込んできた仕事だ。

 やらない選択史など存在しない。

 私はうむ、一任したまえと胸を叩くと、早速事件の調査をはじめることにした。


 調査の内容については描写するのが面倒なので割愛させていただくのだが、依頼人である一国君を連れ、私たちは手分けして夏休みを自宅で満喫しているクラスメイト達の家を訪れ、各位「消えた200円事件」のうわさについて情報をかき集めることに専念した。


 夕方過ぎ。

 鉄板焼き「(かど)」のテーブルに集合した我々は、それぞれが集めた情報を整理することにした。

 ちなみに一国君が頼んだものはイカ玉、野字原は焼きそばのハーフサイズ、私はイカも豚もない安さが売りのプレーンのお好み焼きである。

  

 情報をまとめるとこうだ。


「私たち3人合わせて20人くらいの同級生の家を訪ねたんだけど、うわさを知ってた人はその半分くらい。それで実際に試した人はその中で4人いたんだよねぇ~。4人とも声を揃えて言ってるのは、夜の8時に黒電話の前に200円を置いて翌朝見に行ったらなくなってるってことだねぇ。それも黒電話の前じゃないとダメみたい。他の場所に置いても消えないんだってねぇ~」


「更に言うと100円玉2枚でなければいかんらしんじゃ。1枚でそのままなのはもちろんのこと、試しに黒電話の前に500円玉や1000円札を置いて行った輩もおったらしいんじゃが、消えずにそのままだったと言うんじゃ。加えて言うなら、例えば10円玉を20枚というように累計で200円にしてもそのままだというんじゃ。100円玉を2枚にしてはじめて消えるという。物取りにしては意味不明で摩訶不思議じゃ。ワシなら1000円札置いてあったら即奪うぞい、犯人は金の価値が分からんのか計算できんやつなのかもしれん」

 

 探偵の私をさしおいて説明するな!! 

 呪われるかもしれないリスクを負いながら試しに行くというのはなかなかに度胸のある者たちだが、4人が4人ともそう言っているのなら信ぴょう性は高いだろう。

 なぜに200円なのだ…。

 野字原は腕組みをしてる私の前に置いてあるソースの香りただようプレーンのお好み焼きを切り分け、ちゃっかり自分の皿に持っていきパクリと食べながら答えた。


「4人のうち、日付がかぶってはち合わせちゃった人もいたみたいだけど、どうやら犯行時刻は翌朝4時~7時までの間みたいだねぇ」


「ぬ?なぜそう言い切れるのだ?」


 私が腕組みしながら野字原の次の言葉を待っているうちに、切り分けた私のお好み焼きを一国君がペロリと平らげて答えた。


「犯行現場を目撃してやろうと置いた輩が待ち伏せしておったんじゃ。が、朝方4時になっても地縛霊以外、生きてる人間なぞ人っ子一人現れなかったというんじゃな。それで引き上げたそうなんじゃが、翌朝7時に再度確認に行くと無くなっていたと、そういうわけじゃ」


 なるほど、そういうことか。そして私の食べるものがなくなってしまった。

 事件の概要はわかったが、これは自分の目で確かめねばなるまいな。

 時間を見ると、夜の7時を過ぎるかというところだった。

 ここから降魔小までなら自転車を飛ばせば30分もかからんだろう。 

 よし、行ってみるか。


「ワシは地縛霊は苦手なので帰るぞい。朗報を待っておるぞ」 

 

 依頼人であり情報あつめに協力してくれた一国君と別れ、私と野字原は問題の降魔小学校へ向かうことにした。

夏のホラー2024年に書いた作品ですが5話完結予定です。

これで残り3話です。 

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