24:宣戦布告?
摩雪の化けの皮がはがれる話です。
「鈴之姉ちゃんまで……どして?」
それに、ケンカは?
教室にはケンカした後なんて何処にも無い。それ所かハッピーバースデー アイリ!!と書かれた綺麗な紙がかけてあり、これまた綺麗な紙で作られた花が飾ってある。
「ど……ゆう事なの?」
ぽかぁっとした顔をして、教室中を見回すといこの質問には鈴之が答えてくれた。
つまりは愛莉に自分は熱があると信じ込ませて今日は休ませる。そして放課後、教室を誕生日会場へと変化させて愛莉を呼んだ、らしい。
……あれ?ちょっと待てよ?
「私……熱無いの?」
「「無い」」
久しぶりに由利と結城がはもって愛莉をへこませる。
そしてこれに対する説明を求めると、今度は結城が説明してくれた。
「……お前、熱計った時、自分で体温見たか?」
「ううん、見てない」
あの時は鈴之姉ちゃんが体温を見てた。
「でも、体はだるいし……」
「愛莉ちゃん、それは本当かな?」
へ……?
「あ……あれ?」
「だるくないでしょ。つまりはそうゆう事」
え、ええぇ?
「ええええぇぇぇ?!何が?!」
「ごめんね愛莉ちゃん。実は鈴之さんに協力してもらって、飲んだらだるくなる睡眠薬を食べ物に入れてもらったんだよ」
「鈴之姉えぇぇぇ!!!!」
「をほほ。良いじゃないの。あなたの為なんだもの」
「をほほじゃ無いでしょーっ!!」
はぁ……。
予想もしなかった話にため息が止まらない。とりあえず近くにあるイスに座り込む。
「そもそも頑丈なお前が風邪なんかひくか。ひいたらオレが困るだろうが」
「そうだっつーの。こっちの身にもなりあがれ」
「……頼むから連係プレーはやめてくりょ……」
この二人は本当に仲が悪いのだろうかと考えたが、結論はすぐに出た。
仲が悪いのでは無く、凄く仲が良いのだ。なら何故ケンカばかりなのかと言うと、まぁ、あれだね。ケンカするほど仲が良いってね。
「お前に風邪なんかひかせたくなくて…小さい頃からずっと外に連れ出す様にしてたのに」
ざわめきがどんどん大きくなる会場では、この呟きは愛莉にしか聞こえなかった。当の本人はと言うと聞かれた事に気付いていない。
「オレの努力を水の泡にするなよ……」
何故だろうか。
身体が妙に熱くなってしまうのは。普段酷い事ばかり言われているからこそなのか。
そう言ってもらえるのが嬉しいのは――――。
って、やだ。私何考えてるの?もしかして隠れドMだったの?
あまりにも的外れな事を考えながら膝を抱えて蹲る。
「おい。お前本当に体調悪いとかそんな事は無いよなオレの名誉にかけて」
普段なら言い返している所だ。
でも、言い返せなかった。本当に本当に、結城が私の事を心配してくれてるのが分かって。
「うん、大丈夫。大丈夫だよ」
だからたまには素直になろうと思えて。結城にとびきりの笑顔を向けた。
「――っ、おま」
「愛莉ちゃん、主役がそんな所にいちゃ駄目でしょ」
「あ、摩雪君。あはは、そうだね。折角皆が用意してくれたのにね」
愛莉は結城の近くにいるのが少し恥ずかしくて、摩雪の元へぱたぱたと走って向かった。
「このケーキなんかさ、由利ちゃんが作ったんだよ」
「えー、本当!!ありがとう由利」
「あー!余計な事言うな!!」
こんな他愛も無い会話も今の結城とは出来ない。
だって、恥ずかしいんだもん。
それは心地よい恥ずかしさだけれど、どうすれば良いのか分からないから。
きゃっきゃとはしゃぐ愛莉と由利を横目に、摩雪は結城に向き直り――――
皆が見てないのを良いことに、べーっと舌を出した。
それは結城に対する摩雪の宣戦布告だった。