17:覚悟?
「愛莉ちゃん、大丈夫?」
「うん…。ごめんね…迷惑かけちゃって」
廊下に出た愛莉と摩雪はぼそぼそと会話をしていた。
「全くだ」
そして明らかに疲れた顔をした結城。さっき犬猿の仲のはずの二人が抱き合っていた、という信じられない事実を突き付けられたクラスメートは未だにかつて無い程の団結力で、結城に寄って集り始めたのだ。
「ごめ…なさい…。私のせいで」
何故か罪悪感にかられる。
そのせいで普段は意地を張って結城に謝ろうともしないくせに、自然に謝罪の言葉があふれ出てきた。
「何で、お前が謝る?悪いのはあのストーカー野朗だろ。元を辿ればオレがお前を抱き寄せたせいだ」
だからその…ごめん。
「…え?」
結城が愛莉に対して謝ったのも、はじめてだった。
少し不思議な気分。結城に謝られてるなんて…。
「あのさ…それはやっぱ、揺ぎ無い事実だったりしちゃうんだよね?」
「うん」
「あぁ」
「……………そうなんだ」
そんな摩雪を見てくすくす笑い出す結城。不思議そうな愛莉。
「残念だったな、摩雪」
「え、何が?」
「愛莉…お前は知らない方が良いぞ」
こんな事言われたら普通はいらっとする。けれど今はそんな事無かった。苦笑する結城が愛おしく見えたりもしちゃうのだ。
…て、あれ?私ってば何考えてるの?
最近の結城がおかしいように、私もおかしい。
「うん…」
小さくうなずきながら、何故こんな気持ちになるのか考えてみた。…けど、分からない。
全然分からない。
自分の気持ちなのに…。いや、だからこそ、かな………。
「あーもう。もういい!とりあえず、今日はサボろう」
「…何でそうなる?」
「だから…覚悟、決めたんだよ」
「そうか…」
今が話し時かもしれない。摩雪だって、この事実を早く受け止められるようにならなければならない。
それに摩雪が記憶喪失だって事を、結城に伝えなければ始まらないではないか。
摩雪だけで無く、皆覚悟が必要かもしれない。
「分かった。全部話すよ」
やっとここまで来ました!