引き金は引ける時に引け
終の鐘
人は生きるために死ぬのである
誰かがそういった記憶が頭の隅から離れない
時折降る雨はとても冷たく、酷くもつれた髪を濡らした。
田舎の商店街の隅でダンボールに抱き抱えながら寝ているたかゆきは酷く熱っぽかった。
昨日知らぬ人から貰った餃子が腐っていたのだろう。酷く腹を下している。
(くそっ)
どんなに悪態をつこうと、その惨めさには適わず『ただ』底へと落ちていく感覚だけが研ぎ澄まされていく。
もう、夜が開けるというのに人っ子一人として居ない道路脇の道くれには1人の青年が死を待つだけ。
「おやおや、こんなところにクソガキが落ちてるとは、都合がいい……」
やけに野太いの男の声が微かに聞こえた。その男の手はきっと分厚くくちびるは半開きで目はつり目なのだろう。着ている服は皮で出来ていてきっと周りからは金持ちに見えるのだろう。
働かない頭に脂肪を溶かして糖分を流し込む。
血流が荒れ狂うように目まぐるしく動き眉をピクリと動かして見せた。
「こいつは驚きた……まだ生きてたのか。あははは、こいつはいいな。この雨の中ダンボールに包まれて死にかけてると言うのに俺が声をかけたら動き出すか、あははははは!! いいだろう……お前を生かしてやる。おれはお前の救いの神となるか、はたまた、悪魔となるか……それはお前の選択次第だ。小僧」
頬に冷たい金属が当てられる。酷く血の匂いがしたそれは、俺に向けられている。
「小僧……ここで犬畜生に食われて死ぬか、俺にこき使われて死ぬか、どちらか2択だ。『選べ』じゃないと俺が殺す」
「…………っ」
「ふふ、はは、あはははははははは」
冷たい金属が頬から離れ男は満足気に笑う。
「いいだろうクソガキ……生かしてやる。その言葉二度と忘れるな」