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わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。  作者: バナナマヨネーズ
本編

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第二十八話

 ウェインは、華火の華奢な手を握りしめてから口を開いていた。

 

アヘロ(俺は)ウェイン(ウェイン)シグルド(シグルド)アッタニノグ(今年二十五)ージニソトク(になった)アヘコドゥルギサガウ(我がシグルド家は)ウリエチスーヨウ(公爵位を有)ィアルクカユスオク(している)アヒアズンエグ(現在は)ウリエチウチンニノヌ(王立騎士団の)オユツンアドゥクホ(副団長の任)ンナディシクチルオ(についている)


 ウェインから、改めて自己紹介をされた華火は、姿勢を正してから口を開いていた。

 

「わたしは、山田華火です。歳は、十七歳です」


アナヌージ(十七)……」


 華火の歳を呟いて何かを考えこむ様子のウェイン。

 そんなウェインの行動に華火が小さく首を傾げると、慌てたようにウェインは言うのだ。

 

アィ(いや)オィアノメヅンアン(何でもないよ)


 そう言ったウェインは、小さく咳払いをした後に華火が知りたいだろう情報を口にしていく。

 

アホコク(ここは)アディキサヨネロウ(イスカニア王)ライノツオーヌコ(国の王都にあ)クオアイナクシ(る俺の屋敷だ)アッタニノトクルキニ(ハナビがこの世界)アケソノカグハナビ(に来ることになった)イーソヘテサシエ(その原因か)ムテシンヌジャラ(ら順に説明)クンインエゴノス(させてほしい)


 そう言ったウェインは、今から二年ほど前の出来事を華火に聞かせたのだ。

 

 ウェインの暮らすイスカニア王国の隣にある小国、オニラノツ王国は、魔道具開発や旧世界と呼ばれる古い時代の、現代では使用方法が分からない魔道具の研究を盛んに行っていた。

 旧世界の魔道具は、オーバーテクノロジーと呼ばれており、何人もその使い方を知ることがなかったのだ。

 それでも、オニラノツ王国はオーバーテクノロジーを解き明かそうと研究を重ねていたのだ。

 そんなある日、そのオニラノツ王国が一夜にして砂塵と化したのだ。

 轟音と暴風、落雷、閃光、そして天を飲み込まんとする爆発。

 それらが治まった時、オニラノツ王国があった場所は、焦土と化していた。

 何があって、そうなったのかは正確には分からないが、オーバーテクノロジーの研究の際に何かがあってそうなったのだろうと、想像できたのだ。

 だからこそ、未知の遺物においそれと触れてはいけなかったのだと、そう、周辺の国々に思わせた事件だった。

 

 しかし、一国が滅ぶだけでは済まなかったのだ。

 爆心地と思われる場所から、瘴気が立ち込め始めたのだ。

 瘴気、それは生ける全てのものに死を振りまく、恐ろしい災厄。

 

 そんな物が、大陸を覆っては、この世界は滅びてしまうだろう。

 しかし、瘴気は目に見えない災いだった。

 触れて初めて、そこに瘴気があったことを知る。しかし、触れてからでは遅いのだ。

 一度瘴気に犯されれば、それを取り除く術はなかったのだ。

 ただ、瘴気対策をすれば、多少は身を守ることは出来るのだ。

 例えば、結界魔法だったり、聖水だったりで、瘴気が入り込まないように防いだり、瘴気の濃度を薄めたりといった方法だ。

 しかし、それは防ぐだけで、瘴気自体を消すものではなかったのだ。

 結界魔法であれば、張り続ければいいと言うものではなかった。

 瘴気が濃くなっていけば、結界が耐えられなくなるのだ。そうなれば、より強い結界を張らなければならないが、高濃度になった瘴気を防ぎ続けられるかは、正直分からなかった。

 そして、聖水も同じだった。

 濃度が濃ければ、それだけ純度の高い聖水が必要となるのだが、その聖水の精製もいずれ追いつかなくなるだろう。

 オニラノツ王国と隣接する国は、結界魔法や聖水で何とか国境を守ってはいたが、徐々にその境界線は後退していっていたのだ。

 

 事件から二年、オニラノツ王国と接する国々は、瘴気対策に奔走していた。

 しかし、濃度の薄い瘴気が結界の隙間を通って、木々を枯らせ、動物たちを凶暴化させたりといった事態が頻繁に起こるようになっていた。

 目に見えない災厄のため、結界を超えて、何らかの事態が起こってからでないと、人々は対応することが出来なかったのだ。

 そんなある日、王太子であるロイドが古い文献を発見したのだ。

 それは、異世界の人間をこの世界に召喚すると言うものだった。

 ロイドが注目したのは、異世界から召喚された人間は、何らかの加護を授かるという点だった。

 ロイドは思ったのだ。

 この危機的な状況に召喚を行えば、この状況を好転させるような加護を持った人間が召喚されるかもしれないと。

 ロイドは、すぐに異世界召喚について学者たちに研究させたのだ。

 しかし、国王のフェデルをはじめ、宰相のセルジオやウェインは、それに猛反対をしたのだ。

 他の世界の人間に、この世界の問題を押し付けるために誘拐するなどあってはならないと。

 良く分からない、加護という力に頼るよりも、瘴気をどうにか出来る方法を考えるべきだと。

 

 ロイドは、周囲の反対に頷いた……ように見えたが、極秘裏に研究を進めていたのだ。

 

 それは、ウェインが騎士団を率いて、凶暴化した獣の討伐に向かった時に事件は起こったのだ。

 国境沿いの森を住処にしている獣が、結界を超えてきた瘴気の影響で凶暴化したのだ。それを討伐するため、ウェインが王都を離れたことを知るや、ロイドは動いたのだ。

 勘のいいウェインさえいなければ、召喚魔法を実行できると考えたロイドは、研究を一気に完成させたのだ。

 そして、ウェインが戻る前に完成させたばかりの召喚魔法を施行してしまったのだ。

 こうして、異世界から華火と恭子が呼ばれたのだ。

 しかし、研究が未完成だったのか、理由は不明だが、華火だけが加護も、この世界で生きるために必要な器官も与えられない状態でこの世界に呼ばれてしまったのだ。

 


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