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わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。  作者: バナナマヨネーズ
本編

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第十六話

 翌日、朝食を食べた後にウェインが名残惜しそうに出かけてしまった後、華火は庭園にいた。

 昨日見た紫色の花が気になっていたからだ。

 軽い足取りで、庭園を進む華火は、ウェインを思い起こさせる紫の花の前で足を止めていた。

 昨日見た時よりも、花々が生き生きとしているように華火の瞳には映ったのだ。

 それが嬉しくて、華火は紫色の花に向かってにっこりと笑みを浮かべる。

 元々花を見るのも世話をするのも好きだった華火は、庭園を管理していると思われる男が庭園に水を撒いているのを見て瞳を輝かせる。

 麦わら帽子をかぶり、首にタオルをかけた背の高い男の元にトコトコと近寄り、その手元のホースを見つめる。

 背の高い男を見上げて、華火は目を丸くする。

 良く日に焼けた肌と眩しいほどの金髪、新緑を思わせるような緑の瞳。

 

(イケメンさんだぁ~。ウェインさんとは違ったイケメンさん……。それにしてもおっきい……)


 男の顔面に見とれていたのは一瞬で、華火はすぐに男に近づいた目的を思い出していた。

 

「えっと……。こんにちは。あの……、その、水撒き、わたしがしてもいいですか?」


 そう言いながら、男の持っていたホースを指さしてから、自分にその指を向けて、男に自分が水撒きをしたいのだと懸命に伝えようとする。

 男は、数度瞬いた後に、小さく頷いてから手に持っていたホースを華火に渡してくれたのだ。

 手渡されたホースを握った華火は、にっこりと笑みを浮かべる。

 

「お兄さん、ありがとうございます!!」


 そう言った華火は、すぐにそのホースを使って庭園の花に水を撒き始める。

 キラキラとした笑顔で花に水を撒くその姿を近くで見守っていたマリアは、うっとりとした表情で華火を見つめていた。

 明るい日差しの中、煌めく笑顔を振りまき、色とりどりの花に水を撒くその姿は、とても美しいものだった。

 光を反射した水が弾けるたびに、楽しそうに笑う華火は、近くで見守ってくれるマリアに手を振る。

 手を振られたマリアは、小さく手を振り返しながら、とあることに気が付きとっさに目を鋭いものに変えていた。

 先ほどまでいた男はすでに消えており、その場には幸いなことに華火とマリアしかいなかったのだ。

 そのことに安堵の息をついたマリアは、内心鼻の下を伸ばしながらもそれを表情には出さず、コロコロと可愛らしく笑う華火をその目にしっかりと焼きつけていた。

 真っ白な肌と華奢な体、庇護欲をそそる榛色の瞳。

 そして、濡れてワンピースが張り付く薄い胸。

 それらを、しっかりと脳内に焼き付けたマリアは、何食わぬ顔でどこからか取り出したタオルで華火を包み込んで言ったのだ。

 

「アヘッタミセテルニナンノス、オユサミアミセチーホウェザク。エチシニアルコノサヒラユジム、エヌオユサミリアヒノルホ」


 そう言ったマリアは、小さく首を傾げる華火を軽々と横抱きにして歩き出していた。

 

「えっ? ま…まりあ? どこに行くの? それよりも、恥ずかしいから降ろして~」


 華火が顔を赤らめてそう言うと、マリアは表情の読めない笑顔で首を横に傾げて言うのだ。

 

「エヌセダワキケゴママスオジョウルシヌオシサクザフ。アアーー、エドニアナラカワコヌリエッチオウィナン、アグセドニアネカウィスオム、エヌサミカダチエテサムスセダムチスコヤマモノク~」


 マリアの言葉が分からない華火は、彼女が向かった場所についてから、その目的を知ることとなったのだ。

 

「やーーーん! だから、お風呂は一人で大丈夫だからーー。きゃう~~」


 マリアの目的は、濡れてしまった華火を温めることだったのだ。

 浴室には、華火の悲鳴がこだましていた。

 それに引き換えマリアは、にこやかな表情で華火を軽々と裸に剥いて、ふわふわの泡を付けたスポンジで体の隅々まで洗った後に、湯船に華火を浸からせたのだ。

 

 全身マリアによって、ピカピカに磨かれた華火は湯船で膝を抱えてしまう。

 そんな華火がのぼせる前に湯船から上がらせたマリアは、ふわふわとしたタオルで華火を拭いた後に、服を着せていく。

 浴室での抵抗ですでに疲れてしまっていた華火は、大人しくマリアにされるがまま服を着せられていた。

 先ほどまで着ていたものとは違う、淡いブルーのワンピースに着替えた華火は、小さく溜息を吐く。

 

「はぁ……。もう一人でお風呂に入れるのに……。言葉が通じないって大変……」


 ぐったりした調子でそんなことを呟いていると、心配そうな表情のマリアに顔を下から覗き込まれてしまって、華火は目を丸くさせた。

 

「エチサキソム、アカチサミグソユタガラキトニサタウ? ンエサミアゾゲカウィスオム。アヘディマウヨヌロヨヌオユク、ウキササヨットム、エチソス、エナラクサメシメッタラウカナムコウンイスンエゼディッタトツホス」


 最初は、弱々しかったマリアだったが、最後は両手を握って力強く何かを華火に言うのだが、その内容が分からない華火は小さく首を傾げつつ、両手をひらひらと振って力なく笑みを浮かべた。

 

「えっと、わたしのこと心配してくれているのかな? えっと、その……わたしは大丈夫だから」


「ウセドゥブオジアヅ。イアサドゥケチスンースンアオグ。アヒグツ、アラクサメシメッタラウキササヨワダハワヨナマスオジョハナビ!」


「えっと、本当に、わたしはだいじょうぶだから……ね?」


「イアフ! イアサドゥケサカモ!!」


 何か思いが通じたような通じていないような、そんな気がしながらも華火は、何かに燃えるような意思の籠った瞳をするマリアに微笑みを向けることしかできなかったのだった。



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