契りを邪魔をする者には! りん
きゅー!きゅー!
「スラぽんさん。どこまで逃げるりん」
スライムとスライム?の追いかけっこが続いている。スラりんも速いが、スラぽんもスライム特性の逃げ足なのか凄まじい速さで逃げていく。
「ハァー。ハァー。あいつら速すぎだろ」
スラりんとスラぽんを追って走っている蛇が言う。へばった顔で走る姿もふらふらである。とうとうスラりんとスラぽんの姿が見えなくなった。
きゅー!きゅー!
「待てー!りん」
両手に焼き鳥を持って上げながら追いかけるスラりん。必死に叫びながら逃げるスラぽん。村の中を走っていたが、
きゅー!きゅー!
「スラぽんさん。そっちは村の外りん」
スラぽんが村の外へ出てしまった。スラりんは指摘するがスラぽんは速度を下げずに行った。スラりんももちろん追いかける。
きゅうー。きゅうー。
「やっと追いついたりん」
村の外に出ても追いかけっこは続いていたが終わりの時が近づいてきた。スラぽんは追いつめられていた。後ろはスラりんが山頂から飛び降りてきた崖である。スラりんは笑って、
「さあ食べるりん。この焼き鳥でボクたちの姉妹の契りを交わすりん」
きゅうー。きゅうー。
右手の焼き鳥を掲げながらジリジリスラぽんに近づくスラりん。スラぽんは恐怖を覚えて崖を登って逃れようとするが登れないのである。
「さあー。うん?りん」
スラりんが立ち止まる。考えている顔で、
「スラぽんさんてどっちりん?男。女?りん」
きゅうー。きゅうー。
「声からは女性だねりん。高い声だもんねりん」
「ボクが妹で、スラぽんさんがお姉さんりん」
勝手に自分で納得して。
「焼き鳥で契るスライム姉妹りん」
再びスラぽんに近づくのを再開したスラりん。
きゅうー。きゅうー。
スラぽんの叫ぶ声が一段と恐怖に満ちている。いよいよスラりんの影がスラぽんの体に映されていく。スラりんの鼻息が荒くて顔が興奮しすぎて怖い。
きゅうー。きゅうー。
「ふぅー。ふぅー。さあ。スラぽんさんりん」
スラぽんに鼻息がかかる。最早これまでとスラぽん覚悟を決めると。
ズッドーン!
きゅー!きゅー!
スラりんの後ろで突然大きな音がする。スラぽんは驚いて叫ぶ。
「大きい音がしたけど関係ないりん」
スラりんは音を気にせずにスラぽんの体に焼き鳥を入れようと突く。スラぽんの体に焼き鳥が!
「もぐっ」
「スラぽんさん美味しいか?りん。これでボクが残りの焼き鳥を食べれば姉妹りん」
何か音がした。スラりんはスラぽんが食べたと確信する。食べさせた感触がある。串を見て無くなっているのを見て串をスパッツのポケットに入れる。とても嬉しそうにして。
「さて、ボクも食べるりん」
スパッツに挟んでいた焼き鳥を右手に持つ。よくあんなに走って落ちなかったと感心する。右手に持っている焼き鳥を高く翳してスラぽんに見せつけるように
「スラぽんさん。これで姉妹りん」
笑顔でそう言うと、焼き鳥を口に運ぶが、
サッ。
「うん?りん」
スラりんは物音に気づく。焼き鳥を口に運ぶのが一瞬止まってしまった。その一瞬が命取りに。
パクッ。
「気のせいか?りん。では食べるりん」
再び焼き鳥を口に運ぶが、
カチン。
「うん。肉が••••。あれ?りん」
スラりんは気づく。口に入れて噛んで味わっている肉の味がないことに。
カチン。カチン。
「ない。ない。ないーりーん!」
何度噛んでも歯がぶつかる音しかしないのである。スラりんは右手に持っている焼き鳥を見る。
「あっ!りん」
肉のない串二本だけ持っていた。
「何で?何でりん」
(ボク。食べていないりん)
スラりんが戸惑う。肉を食べた覚えがないのに何でないの?と。
(どうして?りん。どうして?りん)
(肉が落ちた?りん。いや違うりん。食べる時はあったりん)
(勘違い?りん。いやそれも違うりん。確かに四本の肉が付いた焼き鳥を持ってきたりん)
(じゃあ。何で!りん)
色々考えるが違うと言う結論になる。どうしても無くなっている理由が思いつかないのである。
「何で!何で!ボクとスラぽんさんの姉妹の契りを邪魔するりん!」
頭を抱えて叫んだのである。
きゅうー。きゅうー。
こんなにされても心配するスラぽん。
「あっー!あっー!りん」
髪をぐしゃぐしゃとかく。思い通りにならなくて苛つく。
トン。トン。
「邪魔りん」
トン。トン。
「何!りん」
そんなスラりんの背中を叩く音がする。一回目は邪魔と言って対応しなかったが、再び背中を叩かれた時は、ムカっとして怒鳴りながら後ろを向いた。
「すまない。あれだけじゃお腹が満たされない。まだ焼き鳥があるなら貰えないだろうか?」
「はっ?りん」
スラりんは何だ?と思う。いきなり焼き鳥をくれとは、
「何?言っているりん」
「焼き鳥がなければ、食べられる物があれば何でもいい。ともかく腹が満たされる物なら」
スラりんが呆れた顔で言うと、目の前で座っている女性がお腹を押されて苦しい顔でスラりんに頼む。
きゅー。きゅー。
「スラぽんさん」
スラぽんがスラりんの所へ来た。
「スラぽんさんどうする?」
きゅー。きゅー。
「助けようかりん。スラぽんさんがそう言うなら助けるけどりん」
スラりんがスラぽんに尋ねる。スラぽんは声を出して、スラりんが助けようと声から読み取る。
「食べ物がないりん。あの焼き鳥四本がボクたちの食糧だったりん」
きゅー。きゅー。
「一応。探すりん」
スラりんがあれだけとスラぽんに言う。でもスラぽんが声を出すと、もしかしたらがあるかもと自分の体を調べる。
(う~ん。無いりん)
スラりんは服の中など調べるがそれらしき物が無い。
「う~ん」
きゅー!きゅー!
女性が苦しみだした。スラぽんが叫んでスラりんに知らせる。
「大丈夫か?りん」
スラりんがスラぽんの叫びに気づいて女性の方を見て尋ねる。
「う~ん」
「困ったりん。村まで運ぶか?りん。うん?りん」
お腹を押さえてうずくまる女性。スラりんは困った顔をする。苦しむ女性を見ると気になる所が、
「そのエプロンの染みりん。気になるりん」
スラりんは女性をよく見る。左目を髪で隠しており短めで、エプロンを着けた女性である。スラりんはその中で一滴の染みを気に出していた。その染みは焼き鳥のたれに見えるのである。
「この染みは何なの?りん」
きゅー!きゅー!
スラりんは質問をする。スラぽんは怒りに近い叫び声を出す。こんな時にと言っているみたいに。
「スラぽんさん。これは大事なことりん」
スラりんがスラぽんに質問の意義を言う。
「う~ん。これは焼き鳥を食べた時に落ちたやつだろう」
「焼き鳥を食べた時に••••りん」
苦しむ顔で何とか声を出して答えた。その答えを聞いたスラりんの表情が一変する。
「そうか。そうか!りん。分かったりん!」
スラりんがいきなり叫び出したのである。
「お前が!ボクの焼き鳥を食べた!りん」
スラりんは女性を指す。顔は怒りに満ちている。
「う~ん。あの焼き鳥四本では三日間の空腹には到底及ばない」
「焼き鳥四本!お前。スラぽんさんの焼き鳥も食べたのか!りん」
スラりんが昂る。ブンブン手を上下に振って責める。
「う~ん」
「知らないりん。契りを邪魔した者は苦しんでいればいいりん」
きゅー!きゅー!
「スラぽんさん叫んでも駄目りん。これは天罰りん」
スラりんが顔を背ける。スラぽんが叫んでもスラりんは変える気持ちはない。そんな中、
「ふぅー。追いついた」
蛇がスラりんとスラぽんに追いついたのである。
きゅー!きゅー!
スラぽんが蛇に叫ぶ。
「う~ん」
依然として苦しむ女性。果たして助かるのだろうか?