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スラりんを立たせたい  作者: like
7/14

母娘喧嘩りん

「スラりん。離れないのか?」


「ぷーん。離れないりん」


「どうしてもか!」


「ぜっっったいに。離れないりーーん」


 スラぽんに乗って寝ているスラりんに蛇が尋ねるとスラりんは顔を背ける。スラりんは言葉を伸ばして強く否定する。


「えーん。えーん」


きゅうー。きゅうー。


 相変わらず泣き続ける少女。心配する声を出すスラぽん。


「ほーーーんとうに離れないのか」


「はーーーーなれないりん」


 お互いに言葉を伸ばして言う。睨み合って、


「強情だな」


「これはそっちの言葉りん」


 唾を飛ばして言い合うスラりんと蛇。


「分かった。そんなにスライムが好きなら、スライムの子供になっていなさい」


「私はこの少女とシュアで旅するから、どこへでも大好きなスライムと一緒に行けばいいだろう」


 蛇はスラりんから顔を背けて見限ったのである。


「えっ! りん」


「母親の言うことを聞かない娘はいらない。娘じゃない」


 スラりんは驚く。蛇を見ると


(ママりん本気りん)


 スラりんは顔から本気と感じた。


「お前の名前は?」


「えっぐ。えっぐ」


 一方の蛇は見上げて少女に名前を尋ねる。少女は蛇の尋ねに気づいていなくて泣き続ける。


「泣いたって仕方ないだろ! 私がそのスライムの代わりをやるから、名前を教えろ!」


「シャル。シャル•クロイット」


 泣き続ける少女に業を煮やして怒る蛇。少女はびくんと驚いて名前を告げる。


「シャル! 行くぞ!」


「ああーん。待ってよスティーブ」


 蛇が荒々しく言って、酒場の入り口に向かって歩いて行く。はっ!としていたシャルも慌てて蛇の後を追って走って行った。


きゅうー。きゅうー。


「行っちゃたりん」


 スラぽんの寂しい声がする。スラりんも蛇とシャルが出ていったのをただ見ているだけである。


「ママりん」


 スラりんは俯く。


(ママりん。本当にボクを捨てたの? りん)


 スラりんは蛇に問いかける。蛇を思うと悲しくなっていく。


きゅー。きゅー。


「スラぽんさん」


 スラぽんが声をかける。スラりんは悲しい目でスラぽんを見る。


「置いてかれちゃったりん。ボク。ママりんに捨てられたりん」


きゅうー。きゅうー。


 スラりんが天井を見つめながら自嘲気味に言う。スラぽんは心配する声をかけている。


「ボクはねえー。あのちびに味方するママりんをりん。うっうっう」


 スラりんは言い切ると俯いて泣き出したのである。


(ママりん。なぜボクの気持ち分からないの。ちびばっかり守って、娘のボクの味方をなぜしないの。してくれれば離れたのに......)


きゅうー。きゅうー。


 スラりんは蛇に問いかける。スラぽんは泣き出したスラりんを見て心配そうな声を出す。


「あのー」


 スラりんたちに店主の男性が声をかける。


「申し訳ないんだけど。閉店の時間だから出ていってくれないか。泣いている所悪いんだけど」


きゅうー。きゅうー。


 申し訳なさそうな顔でスラりんに頼む店主。スラぽんがスラりんを見て心配する声を出すと。


「分かったりん。スラぽんさん出ようりん」


きゅうー。


 スラりんが顔を左右に振って涙を振り払って了解する。スラぽんはスラりんの顔を見て心配する声を出す。スラりんはスラぽんから降りて、うさぎ跳びで外に出る。スラぽんも後を追って来る。


「空が真っ暗りん。一日が終わるりん」


 スラりんが空を見上げると星空が出ていた。外は夜になっていた。夜空を見ていると。


「スラりん。なぜあんなに冷静でいられるんだ?」


「ちょっと。スティーブ何で私たちがこんな所に入っているの!」


「うるさい! 黙っていろ」


 先に怒って出た蛇とシャル。実はスラりんが泣いて追いついて来ると思って外にある樽の中に入って隠れていた。少し苛めてやろうと思ったのである。シャルは酒臭さに嫌な顔をしていた。蛇は顔を外に出して出てくるスラりんたちを待っていた。


 しかし、蛇が見たスラりんの顔は予想外であった。泣きじゃくって「ママりん!」と叫んでいる姿じゃなくて冷静な姿であった。


「スラぽんさん。今夜どうする?」


きゅー。きゅー。


 スラりんが横にいるスラぽんに尋ねる。その顔は寂しげである。声も元気がないのである。


「ママりん言ってたりん。お金と言う物がないと宿屋に泊まれないりん」


きゅー。きゅー。


「お金は簡単に手に入らないみたいりん。泊まる所もそうだけど」


「これだけじゃお腹がもたないりん」


 スラりんは手に持っている焼き鳥をスラぽんの前に出す。


「スラぽんさん二本で、ボク二本りん」


 隣にいるスラぽんに焼き鳥二本を差し出す。


「あのスラりんが! 私を食べようとしたのに。分けるとは」


「何それ? やっぱりおかしいわよ。あの女」


 スラりんを体を立てて見る蛇。意外な行動に驚いている。シャルは蛇の言葉を聞いて更に変な女性と認識する。


きゅー。きゅー。


「スラぽんさん食べなきゃ駄目りん。ボクたちの最後の食事になるかもしれないりん」


 スラぽんは食べる様子がない。スラりんは困った顔で焼き鳥を近づける。


「馬鹿者め。意地を張らずに言うこと聞いていればよかったのに」


「スラぽんどうなっているの?あの痛女に何をされているの」


 シャルは外が見えないので分からずにいる。スラりんに何かされていないのか心配する。蛇は意地を張るからと怒ってスラりんを睨む


きゅー!きゅー!


「さあ食べるりん。スライム同士仲良く二つに分けて食べるりん」


 スラぽんは嫌がる。スラりんは関係なしに強制的に食べさせようとスラぽんの体に入れようと突く。


きゅー!きゅー!


「あっ!待って」


 スラぽんはスラりんの突きを何とかかわして逃げる。スラりんは待ってと追いかける。


「あいつら!どこに行くんだ!」


 蛇が叫んで樽から飛び出た。そしてスラりんとスラぽんを追いかけて走る。


「ちょっと! スティーブ。私を置いてどこに行くの! ひっく」


 シャルは怒る。自分一人じゃ出られないでしょと。そして樽の酒の臭いに酔ってしまって。


「グゥー」


 樽の中で寝てしまったのである。



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