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スラりんを立たせたい  作者: like
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スラぽんの体りん

「トホホ。俺のツマミが......」

 

「さあー。食べて!家族の誕生に感謝よ」

 

 テーブルに皿に乗せた焼き鳥を置いて肩を落としながら厨房に戻る店主。中年の親父で背中に悲哀が浮かんでいた。少女は嬉しそうな顔で両手を広げて焼き鳥を勧める。


 スラりんたちは少女に押されて酒場に連れられた。店主はもう出せる物はないと突っぱねていたが、


「よろしくね」


 少女が笑顔で言うだけであった。笑顔で動かない少女に


「分かったよ」


 店主が折れてつまみの分の焼き鳥を出したのである。


「ありがとう」


 テーブルに持ってきた店主に笑顔でお礼を言った。


(何を言ってるりん)

 

「さあー。遠慮しないで。スティーブ。私が食べさせてあげようか?」

 

 スラりんは体育座りで椅子に座って少女を冷めた目で見る。少女は嬉しそうに焼き鳥を勧める。特に蛇には満面の笑顔で尋ねる。


「いらんわ!」

 

(どうなのかりん)


 少女の膝に座る蛇が叫んで拒否する。スラりんは蛇の言葉と態度に疑問を覚える。


(尻尾を使えばいいのにりん)

 

「うん? スラりんどうした?」

 

「別にりん」

 

 蛇がスラりんに気づく。スラりんは思わず顔を背ける。


「スティーブ。このりんの痛い人は何?」

 

「何!だとりん。痛い人とは何! りん」


 少女が蛇にスラりんの事を尋ねる。スラりんは少女の言葉に激怒してテーブルをバーンと叩いて少女に体を乗り出して反論する。

 

「だってそうでしょ。椅子に普通に座らないんだもの。いい年した大人の女性がやるもんじゃないわ」


 少女はスラりんにつーんとした顔で言う。


「何! りん」


 スラりんは少女の言葉と態度に


グゥー。


 歯を食いしばって怒りに満ちた顔で少女を睨む。


「怖い。スティーブ」


 少女がスラりんの顔と目を見て怖がって、膝に座らされている蛇に助けを求める。


「確かにだな」


「マ•マ•り•ん」

 

 蛇は体を伸ばしてスラりんを見て少女の言葉を肯定する。スラりんはそれを聞いて少女から蛇へ視線を移す。


ゾクゾク。


「あれ? スティーブ。風邪? 震えちゃって」

 

「ちょっとな。冷たい風がなあ」


(娘を捨てた報いりん)


 蛇はスラりんの殺す睨みにゾクゾクと体を震わす。顔色と震えに気づいた少女が声をかける。蛇は誤魔化すが冷や汗が多く浮かんでいる。


(ボクより肩を持った報いりん)


 スラりんはニヤッと笑っていると

 

「りんりんと秋の鈴虫じゃあるまいし。痛い。痛い女よ」

 

「ムカーりん。りんを馬鹿にしたなー!りん」

 

「あなたいくつ? 見てて痛いのよ」


「お前こそ何なの? りん。小さいくせにりん」

 

「髪も何? りん。その馬の尻尾みたいなやつはりん」

 

「ポニーテールよ!ねえ。スティーブ。この人。いつもこんなの?」

 

 スラりんと少女の言い合いが続く。お互いに熱くなっていく。蛇はただ見ているだけだったが、いきなり少女が蛇を見て尋ねた。


「えっ?」


「ムカー! りん。ママりんに聞くな!りん。ボクのママりん!」

 

 自分に話しを振るの?と言う顔の蛇。スラりんは更に熱くなる。顔が真っ赤であり興奮MAXだ。


「落ち着け。子供相手に大人気ないぞ」

 

「ママりんは娘のボクよりりん。そのちびを守るの?りん」


ぼろぼろ。


 少女の肩を持った蛇。スラりんはそうとらえてショックを受けてぼろぼろと涙を流す。

 

「えっ!今度は泣くの? 分からない女ね」


「ともかく焼き鳥食え。腹が空いているからな」


 泣くスラりんに驚く少女。蛇は尻尾で焼き鳥を握ってスラりんの前へ差し出す。

 

きゅー。きゅー。


(この声は! りん)

 

 えーんえーんと泣くスラりんの心に声が響く。


「スラぽん。そんな痛い女近付かない方がいいわ。やけどするわよ」


 少女がスライムを名前で呼ぶ。


きゅー。きゅー。


(大きくなるりん)


 スラぽんは少女の言葉に声を出して応える。スラりんはその声を大きく感じたのである。ぶるぶると体を震わしている。

 

きゅー。きゅー。

 

「スラぽんさん!」


 スラりんがいきなり叫んだ。

 

きゅー!

 

スラポン。ピンク色のスライムが驚きの声を出す。


「ボクは我慢できないりん!」


大声をあげて、体を広げてムササビのようにスラポンにダイブしたのである。

 

ぽよーん。


 スラりんはスラぽんを覆い被って乗っている。スラりんの体は上下に揺れている。


きゅー! きゅー!


「ちょっと! スラぽんに何するの!」

 

「ぷよぷよりん。癒されるりん」

 

 スラぽんに覆い被さるスラりんに少女が怒る。スラりんは無視して体全体でスラポンのぷよぷよの感触を味わう。さっきまでの興奮した顔が収まっていく。


「うわ!」


 怒っても無視するスラりんに業を煮やして椅子を立つ。蛇は急で驚くが少女に抱えられてスラりんの所へ歩く。

 

きゅー! きゅー!


「苦しんでいるじゃない。大の大人がやることじゃない!」

 

「お前こそりん。ボクのママりんを抱えているりん。お互い様りん」


 スラぽんが少女が来ると叫ぶ。少女は直に文句を言いにきた。スラりんは顔を横にしてスラぽんの体に寝ながら言い返す。

 

きゅー! きゅー!


「スラぽんさんも嬉しくて叫んでいるりん」

 

「ぐっーー!」


 スラぽんまた叫ぶ。スラりんは嬉しくて叫んでいると思って堪能している。離れないスラりんに歯を食いしばって見る少女。

 

「スラりん離れてやれよ。子供を苛めるんじゃない」

 

(確かに泣きそうだりん)

 

「ほれ。スラりん」

 

 少女を見かねた蛇が頼む。頼まれたスラりんは気になって少女の方を見ると今にも泣きそうな顔だった。蛇はもうひと押しする。


(ぜっったいに離れないりん)

 

「ひっく。ひっく」


(ママりん。ボクよりチビが好きなのね)


 スラりんは向きを反対にする。蛇がチビを取ったことに怒ってふて寝をする。少女は泣きじゃくっている。


きゅうー。


 心配しているのかスラぽんの力ない声がした。


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