お金と肉りん
山を降りたスラりんたち。スラりんはシュアを抱えて心配している。傷一つ負ってないが蛇は叫び疲れていた。スラりんがどうしようと蛇に聞くと、傷薬で直そうと蛇が言い村の道具屋に行くと。
「すまない。売り切れなんだ」
道具屋の主人が言う。スラりんはどうしようとシュアを抱えて右往左往していると。
「仕方ない」
蛇は村の診療所の場所をスラりんに、道具屋の主人から聞くようにと指示して、スラりんは頷いて了解し場所を聞いたのである。
「待ってるりん」
シュアに声をかけながら急いで向かうスラりん。絶対に助ける。その思い一念で跳んでいる。診療所に入って
「助けて! 助けてりん」
中に居る白衣を着けた中年の医者に頼み込んだ。いっぱいペコペコ頭を下げる。
「分かった。ひとまずこのベットに寝かせろ」
スラりんの気迫に最初は戸惑っていたが、シュアを見て状況を理解して指示する。スラりんは言われた通りに窓側にあるベッドにゆっくり落とす。
「シュアりん」
スラりんはシュアの顔を見る。凄い汗だ。まだ生きているのか?と不安になる。周りは治療の準備でドタバタしている。
「ひとまず。治療をするから外に出て行ってほしい」
治療の準備をした医者が言う。手助けの白衣を着けた看護婦がシュアの汗を拭いている。
「スラりん外に出よう。邪魔だから」
「分かったりん。シュアをよろしくお願いしますりん」
スラりんの肩に乗っている蛇が言う。スラりんは深々と頭を下げてシュアを元気にしてほしいと頼む。
「分かった。何とかやってみる」
厳しい顔で言って、振り返ってシュアの治療を始めた。
「頑張るりんよ」
治療されているシュアの顔を見て、励まして振り返って外に出る。
「助かるよねりん」
外の窓の所で待つスラりん。肩の蛇に尋ねるが、
「う~ん。困ったな」
「どうしたりん?」
「お金が足りないかも」
「お金?」
蛇はそれどころじゃなかった。困った顔の蛇を見て聞くスラりん。蛇は困ってる事情を打ち明ける。スラりんは何?と分かってない顔だ。
「そう。お金がヤバイ。ギルドで貰わないと正直払えないかも」
「それって、簡単に手に入らないの?落ちているとか」
悩んでいる蛇を見てスラりんは尋ねる。
「ハァー。そんなに簡単に手に入れるなら危険な目に合わないよ」
「そうなのかりん」
蛇は気楽に言うよなと言う顔をする。ため息を吐いて困った顔の蛇を見てスラりんは言う。
「だから傷薬がよかったんだ。ああー。それなら足りたのに」
「ママりん! それはないよ。母親なんだからシュアが助かるならどんなことをしたってやるんでしょ!」
「お金じゃないでしょー! りん。シュアとお金を天秤にするなー!りん」
計画通りにいかなくて苛つく蛇。蛇の言葉に怒りをぶつけるスラりん。怒りが収まらないスラりんが山に叫ぶのである。
「あのなそうゆうけどな。お金が足りないと言うことは、お前にも影響するんだぞ」
「なぜ? りん」
怒りをぶつけたスラりんを睨む蛇。なぜ?と言う顔のスラりん。
「本当だったら、ギルドのある街でお金を貰って宿と食事をするはずだったんたぞ」
「ああー。今ごろ美味しいお肉を一杯食べて、フワフワなベッドで寝ているはずなのに」
「傷薬一個分のお金それもシャルが持っている。今私たちは無一文で今夜の宿と食事もないんだ。空が夕焼けが出ていてもうすぐ日が暮れるぞ」
蛇は続けざまに言い、言い終わると夕焼けの空を見た。ヤバイ状況だと分かってほしいのである。
グアー。ぎゃるるる。
「あれ? 食べられないと思うと急にお腹が」
まるで魔物の断末魔が聞こえた。その後スラりんはいきなりお腹を押さえて回りだしたのである。
「おい! どうした!」
スラりんの異常に気づいて声をかける蛇。いつも変だけど今回は見たことのない動きなので心配して声をかけた。
「肉。肉をボクの口にりん」
「お前。スライムだろう。そこは草でもいいんじゃないか?」
「肉。肉! りん」
スラりんは止まってうずくまる。全く動かなくって蛇は様子を見ると、肉をほしいと言ってきたのである。蛇は違うと言うが、スラりんはいきなり起き上がってゾンビのような動きで蛇を見る。
「スラりん。起きたのはいいけど。私を見る目が怖いんだけど」
「ママりんって蛇よりん。焼いたら美味しいよりん」
蛇は怖がっている。蛇を見るスラりんの目が獲物を狙うハンターである。ゆらゆらと動いて物騒な言葉を言いながら蛇に近づいていく。
「その目が怖い。近づくな。ただ焼いても蛇は美味しくない。血生臭いぞ」
「ご謙遜をりん。娘のためにりん」
「ボクの栄養になってりん!」
蛇は後ずさりをする。スラりんはゆらゆら蛇に近づいていく。蛇の顔に冷や汗が浮かぶ。スラりんが捕まえられる間合いに着くと
ぴょん。
「うわー!」
「ちっ! かわしたかりん」
「かわすわー! あの俊敏とした動き。私を見る目。スライムじゃない狼だ」
スラりんは跳んでかかってきたのである。蛇は何とかかわした。焦りの顔で間一髪である。
「言うのはそれだけか? りん。生でもいいりん! 腹に含まればりん!」
「ぬおー!」
「食べられてたまるか!逃げるぞー」
スタスタ。
「あっ!逃げたりん。待てー!りん」
目をキラーンと光らすスラりん。両手を上げて気合いを入れ蛇をロックオンする。蛇をともかく逃げる。本気で食べられるとスラりんから逃げる。今出せる最高速度で。一方のスラりんもうさぎ跳びで後を追う。
「ハァー。ハァー。あいつヤバイぞスライムを捨てているぞ。可愛いさを捨てたスラりんは狼だ」
「待てーりん。ボクに肉をー! りん」
「声までゾンビの低い声だ。このままじゃ追いつかれてしまう何とかしないと」
息が上がる蛇。全力で逃げているが気になって後ろを見ると、土煙を上げて追いかけてくるスラりんが見える。徐々に距離は詰まってきている。蛇は焦る。
「見えてきたりん。ママりんの背中が」
「うん?」
スラりんの目に蛇の背中が見えてきた。いよいよと思っていると。蛇の先に、
「この焼き鳥二本しか買えなかった。ごめんね」
きゅー! きゅー!
「大丈夫だって。ありがとう。優しくて」
酒場から出てくる少女と丸い物体。少女はポニーテールで少女と丸い物体と同じぐらいの大きさである。少女が丸い物体に申し訳なさそうに喋っていると
丸い物体は叫ぶ。
「ヤバイ。後ろを見るとすぐそばに......もっと速度を」
「ママりん速度を上げたりん。無駄なことをりん」
後ろを見て何とか速度を上げようとする蛇。スラりんは蛇が速度を上げたことに気づいて、
「無駄りんスライムは力はないけどりん。逃げ足で鍛えた脚があるりん。ママりん娘のために生け贄になってりん!」
「土煙がさっきより多くなっている。もう駄目だ。うん?」
更に速度を上げるスラりん。後ろを見て土煙の舞う量が多くなったのを覚えて諦める蛇。
「追いついたりん」
ドーン。
スラりんがいよいよ手を出せば捕まえられる距離に追いついた。手を伸ばしたが、蛇は何かにぶつかってスラりんの横を通り過ぎて後ろへ吹き飛ばされていき後ろざまの格好で地面に倒れた。
「痛! 誰! ぶつかったのは!」
少女が地面に手をついて倒れて文句を叫ぶ。
(人間の女性の声!)
スラりんは少女の声と後ろ姿を見て驚く。
(人間苦手りん。スライムの天敵りん)
スラりんが困っていると
きゅー! きゅー!
(この声は! りん)
スラりんが別の声に興味を持つ。
「う~ん。すまない。前をよく見てなかったから」
「あなたね!ちゃんと前を見て•••••」
蛇が体勢を元に戻してぶつかった少女に謝る。少女も後ろを向いて蛇に文句を言う。距離は少し離れて見つめ合う蛇と少女。蛇は普通だが、少女の顔がわなわなと震えている。
「キャー」
少女がいきなり悲鳴をあげる。いきなり蛇に向かって走ってきたのである。
「えっ? えっ!」
蛇は自分に向かってくる少女に驚いている。
ぎゅっ。
「何。この喋る蛇。可愛いんですけどー」
少女が蛇を持ち上げて自分の頬に蛇をすりすりしてきたのである。嬉しそうな顔でいる少女に対して
「こらー! 可愛いとは何だ! やめろー!」
蛇は怒った顔で抗議するが
「うふふ。可愛いわね」
少女は構わずに嬉しそうに頬すりを続けている。
(そういえばスラりんは?)
蛇は周りを見渡す。スラりんの姿を探していると、
きゅー。きゅー。
「これは!りん」
「うわー!ピンク色のスライムさんだ!」
少し先に行ったところでスラりんがピンク色のスライムに抱きついて頬すりをしている。ピンク色のスライムはぷるんぷるんとした体で大きさはスラりんが座っている大きさと同じである
スラりんは目をキラキラ輝かしてスライムを見る。一方の少女は未だに蛇を頬すりしている。少女とスライム。何者であろう••••。