二人のママりん
「ねえ、ママりん何でこの山に登るの? りん」
この物語の主人公スラりん。ぴょんぴょんと軽々に山を登って行く。服装はスパッツとTシャツだけである。見た目は大人の女性でうさぎ跳びで動いている。
「お前、バカだなステファニー様の言うことに間違いないんだよ」
スラりんに言葉を返したシュア。スラりんの先を歩いている。馬鹿にした笑顔で見るシュア。スラりんとは兄妹だ。
どっちが上かといつも喧嘩している。ちなみに見た目は少年であり、スラりんよりは年下に見える。
「ふん! りん。バカと言う方がバカりん」
「何だよ!弱っちいスライムのくせに」
「スライムをバカにする権利などお前にないりん」
スライムと思い込んでりんを付ける。理由は不明である。
「ねえ、ステファニー様娘はいらないでしょ。あんな痛い娘を置いて僕と楽しい親子旅しましょう」
シュアは肩に乗せている蛇に甘えて頼む。
「この天使めりん。羽をむしってやるりん」
「痛い。痛い。お前キャラを守れよ。スライムはやらねえよー」
スラりんは跳んでシュアの後ろに着地した。シュアの後ろに生えている白い羽をブチブチむしっていく。痛そうな顔で後ろのスラりんに言うシュア。この男は天使族と言う種族で天使の様な羽が生えている。
「全く。騒がしい子供たちだ」
二人の言い合いに入ってきた蛇二人から母親の様に慕われている。スラりんからはママりん。シュアからはステファニーと呼ばれている。
「ステファニー様。このスライム馬鹿を懲らしめてください。スライムのくせに天使様に歯向かうのです。痛」
「ハム買う? りん。何を分からないことをりん。ママりん天使と嘘つく男こそ天罰をりん。こんなの偽物りん。ブチブチ」
「やめんかー!」
「まずシュア。お兄ちゃんなんだからもっと妹を大事にしろ!」
横にいるシュアはしゅんとする。その姿を見ているスラりんが笑いを堪えている。
「後スラりん! お前もスライムなら可愛いくやれ。羽をむしるなんてスライムのやることじゃない」
後ろにいるスラりんは驚いている。蛇が言い終わるとしゅんとしてしまった。
「全く。何で蛇の私に二人の子供が出来るんだ?」
蛇がため息を吐く。苦労が多いのであるいつもこうである。蛇がシュアの肩から下りて二人から離れて黄昏ている。
(ママりん)
さっきまでしゅんとしていたスラりんがそっーと気付かれないように動くと
(あれ? 横にりん)
スラりんが影を感じて右を向くと。シュアが蛇に気付かれない様にそっーと足音を立てずに動いている。座り込みながら。
(あっ! 目が合ったりん)
シュアも気付く。
(負けないりん!)
負けてたまるかと速度を上げる。
(こっちも)
スラりんが先を進んでいる姿を見て、焦った顔でシュアも早歩きでスラりんに追い付く。足音を立てないのを心がけてお互い顔を睨みあいながら向かって行く。
「見えたりん」
「こっちが先だ!」
スラりんとシュアも見える。競争の結果は
バタン!
「何をするんだ!」
倒れ込んで地面に押し倒した二人。二人も地面に顔から倒れている蛇の背中に二人の手が伸ばして置いている。
「これはシュアがりん」
「何を。これはスラりんが」
お互いに顔を起こして否定する。スラりんは両手を横に振って、シュアは左にいるスラりんを指して。
「いいから手を離せ!起き上がらないだろ!」
「先に離せよ」
「そっちこそ離せりん」
ガバッ!
仕方なく蛇が自力で起き上がると
ギロッ。
二人がいる後ろを振り返って二人を睨み付ける。相当怒った顔だ。
「どうやらお仕置きが必要だな」
尻尾をビシバシと地面を叩きながら言う蛇。
「ス。スラりん。お前が悪いからお前が受けろ」
蛇の剣幕におののくシュア。左肘でスラりんの脇を突く。
「お。お兄ちゃんこそ。妹のためにりん」
普段言わないお兄ちゃんを使って。シュアに責任転嫁をするスラりん。
「また喧嘩か。仕方ない兄妹だな」
蛇が上から見下ろして言う。二人には小さい体が大きく見える。
「あわわ」
二人はお互いに顔を合わせるマズイと。
ズシャーン!
蛇の尻尾がしなる。尻尾は二人の顔の前をすれすれを通って地面を叩く。蛇の尻尾は伸縮自由であり叩かれた地面の破片が飛び散る。
「本気りん」
「本気だ」
お互いに認識し合う。
ズシャーン!ズシャーン!ズシャーン!
蛇の尻尾が二人を囲む様に叩かれる。
「ごめんなさいりん」
スラりんが起き上がって蛇にごめんなさいと謝る。ここでも立たない。立たないのがスラりんである。
「申し訳ありません」
シュアは立ち上がって。頭を下げて謝る。
「ゆ•る•さ•な•い」
蛇の尻尾攻撃は続く。スラりんはうさぎ跳びでシュアは立ってかわしていく。蛇は笑いながら二人を狙って尻尾で叩こうとしている。そんな二人と一匹の家族の物語が今始まる。