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どうしようもないやつ

作者: 京本葉一

 授業にはほとんど参加せず、いくつものバイト先でトラブルを起こし、借りた金は返さず、女にもだらしないと噂の男がいた。ちょっと目についたのだろう。そいつは学生食堂で、おれの食事にケチをつけてきた。「糖質多すぎじゃね?」と。


「ごはんは、糖質だけではない。玄米はもちろん白米にも、食物繊維やミネラルなどが含まれている。お米とは穀物であり、植物であり、つまりは、ほぼ野菜だ。野菜を食べると健康になるのは小学生でも知っている。ごはんを食べて健康を害することなどあるはずがない」


「糖質が多いだけの野菜といえば、小麦粉製品である、うどんもその仲間といえる。白米とは異なるミネラル成分は、ごはんと共に食することで最高のバランスとなる。出汁の成分はもちろん、塩分をふくんだ発酵食品である、漬け物もついた『うどん定食』の栄養バランスは、もはや神。人間ごときに把握できるようなレベルではない」


 そいつは一言も反論できずにいたが、事実を受けとめるだけの器がないのか、うなずくこともなく顔をしかめていた。あるいは理解するだけの能力が欠けているのかとおもい、おれはいった。


「おれは毎朝、快便だ」


 論より証拠。ここまで完璧な健康証明を宣言されては己の過ちを認めるしかないだろう。そいつは黙って立ちさった。二度と関わることはないだろう。


 どうしようもないやつの後ろ姿をみながら、おれは考えていた。

 健康のために大切なのは、食事バランスだけではない。睡眠はもちろん、しっかり食べるなら、それだけ身体を動かす必要がある。

 脳裏に浮かぶのは、二つ年上の兄の姿だ。


 高級なチョコレートを食べると便秘になってしまう繊細なおれとは違い、兄は図太かった。首が脂肪で埋もれてしまいそうになっても平気だった。鏡をみて爆笑していた。どういうわけか自信に満ちあふれていた。

 それでも、命の心配をしはじめた、母の涙には心が動いた。

 スプーンを動かす手は止まらなかったが、運動することが死ぬほど嫌いと口にしていた兄が、おれに頼んだ。


「運動習慣をつくるために、鉄の掟をつくってくれ」


 おれは喜んで注文にこたえた。

 兄でも実践できる、楽々筋トレメニューをつくり、ルールを伝えた。


「たった一回でもいい。トイレで用を足したあと、ひとつ筋トレをすること」


 二日後、やる気を失った兄がとる行動を考えて、水分をひかえるのは危険だと伝えるために兄の部屋に向かうと、オムツを購入しようとする兄がいた。

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