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蒼翼のライ

「蒼翼のライ」~番外編2~ エクストラシーン アタシの属性って何ですか?

作者: 雪村4式

本編ストーリーの合間に入るはずが、物語と関係なさ過ぎてカットしたシーンです。

お気軽に読み流してください。

よろしくお願いします。

「蒼翼のライ」~番外編2~ エクストラシーン アタシの属性って何ですか?


 登場人物紹介


 〇ラライ・フィオロン

 本シリーズの主人公。青い髪が特徴の、もと美貌の女宇宙海賊。普通の生活に憧れて海賊をやめたが、紆余曲折あって、正体を隠し別の宇宙海賊の居候になっている。


 〇シャーリィ

 宇宙海賊デュラハンの頼れる姐さん。銀髪のグラマー美女。宇宙船操縦の腕はピカイチ。趣味は通販。


 〇バロン

 宇宙海賊デュラハンのプレーン(巨大ロボット)パイロット。見た目は赤いタコ人間。「やんす~」が口ぐせ。ラライが好き。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「それでですねー、今度は看護士なんかに挑戦してみたいなって、思ってるんですけどー。ほらー、アタシのイメージって、白衣の天使とかにぴったりじゃないですか」


 宇宙海賊デュラハンの船内を歩きながら、アタシは隣を並んで歩く、姐さんことシャーリィに話しかけた。

 彼女は洗いたての銀髪を軽く揺らして、どこかしら呆れたような目を、アタシに向けた。


「あんたのイメージねえ・・・。悪いこと言わないから辞めときな。あんたに看護なんかされたら、世の中の病人ケガ人は、助かる命まで無くしちまうよ」

「どーゆー意味ですか!?」


 思わずふくれっ面になる。

 彼女は面白そうに唇を吊り上げた。

 このシャーリィっていう女は、アタシの事をいつもこうやって馬鹿にする。

 だいたいは悪気が無いんだけど、時々ムカつくのよね。


「だいたいにして、資格ってもんが必要なんだよ。あんた、そもそも経験だってないんだろ。どうするつもりさ」

「看護士資格くらい、また、テキトーに情報屋を強請って偽造させますよー」


 そんな当たり前のことを今更。

 受験するにもアタシには正式な身分証すらないのだ。住所不定無職どころか、生きてこの世に生まれた証すら持たないアタシに、正式な免許などとれるものか。


「まったくあんたってきたら、まじめに勉強する気すら、ないんじゃない」

「アタシは無駄な努力はしない主義なんです~」

「まあ、学歴も無いんだしねえ」

「うぐ・・・」


 痛いところを突かれた。

 ったく、彼女ときたら、どうにも口が立つのよねー。


「それにあんたのイメージだってねえ・・・、天使ってのはどこから」

 彼女が何かしら言いかけた時だった。


「あーっ、もう、どうしてこうなるでやんすか~!!」

 通りがかったバロンの部屋から、彼の叫ぶ声が聞こえた。

 アタシ達は足を止めた。


 なんだろう、彼がこんなに興奮して大声をあげるなんて、結構珍しい。

 シャーリィも不思議そうに首を傾げた。

 アタシ達は顔を見合わせて、それから、おもむろに部屋のドアを開けた。


 この船では、部屋に鍵をかけるという風習はない。

 もちろん、ノックとか、先に声をかけるという事も、まずない。

 最初は戸惑ったが、いつの間にか慣れた。


「どうしたのバロンさん?」

 覗き込んだ先で、タコ型宇宙人類種のバロンは大の字になっていた。

 いや、タコだけに、触手が放射状にのびて、まさしく広がった干物のように見える。


 非実体式の大型モニターが壁面に浮かんで、そこに、人物の映像が映し出されたままになっていた。


 あれ? バロンさんだ。

 でも、何かが違う。


 よくよく見ると、それはバロンの姿を取り込んで再構築された立体アニメーションの彼の姿だとわかった。

 違和感の正体は、それだけではない。

 その服装がちょっと変わっていた。

 目の前の本物は、まるでコイノボリを縦にしたような特殊なスペーススーツを着ているのに対し、映像の中の彼は、まるでファンタジー世界の住人のような、ゆったりとしたローブを纏っていた。


「あれ、姐さんに、ラライさん、いつの間に来たでやんすか?」

 バロンはようやくアタシ達に気付いて顔をあげた。

 アタシはモニターを指さした。


「コレなあに? バロンさん、自分をアニメ化したの?」

「それはゲームのキャラクターでやんすよ」

「ゲーム? ああ、もしかして?」


 床の上に、小さなゲームのパッケージが落ちていた。

 あれは確か、その昔、ちょっと話題になったクローズドワールドのゲームだな。


 外見を取り込ませると、自分そっくりのキャラクターを自動作成して、リアリティのある冒険をするっていう触れ込みで。

 なんでも、その職業は1300種類とかいう。

 そういえば、先日ショッピングモール船に立ち寄った時、彼と一緒にリサイクルショップ巡りをした。

 なんだか珍しいゲームを見つけたって喜んでいたけど、そうか、これの事だったのか。


「じゃあ、これってバロンさんのキャラクターね」

「・・・で、やんす」

 力なく、彼は言った。

 その顔には、あからさまな失望感が浮かんでいる。

 ん、なかなかそっくりにできているのに、何が不満なんだろう。


「ステータスを見るでやんすよ、ちょっと、あっしには納得がいかないでやんす」

「どれどれ」


 アタシは画面の下に、彼のステータスが表示されているのを見つけた。

 では、遠慮なく。

 ほほう、色々な項目があって、職業やスキルまで自動作成されるのか。


 なまえ びすかんと


 あ、名前変えてる。

 ヴィスカントって、子爵って意味だよね。

 地味に階級を、一段階あげてるじゃない。

 で、肝心のステータスはっと。


 つよさ・・・・・42

 かしこさ・・・・49

 すばやさ・・・・25

 こううん・・・・18

 みりょく・・・・62

 たいりょく・・・50


 すきる1・・・・じこぎせい 2れべる

 すきる2・・・・こうしょう 1れべる


 しょくぎょう・・ しゃっきんとり

 れべる・・・・・ 12


 ぞくせい・・・・ ちつじょ・あく


「へー、これって・・・どうなの?」

 正直基準がわからないので。アタシは訊ねた。


 どうでもいいが。

 この超テクノロジー時代にあって、なんでステータスはひらがなで表示されるんだろう。


「スタート時のレベルはランダムになっていて、5から20の間になるでやんす」

「じゃあ、真ん中くらいだし。悪くはないんじゃないの」

「それだけじゃないでやんす、よく見るでやんすよ、職業、よりにもよって借金取りってなんでやんすか!」

「あー、確かにねー」


 借金取りか。

 まるで勇者とか戦士には程遠いし、どう考えても主人公向けのクラスには思えない。

 そりゃあ、あんまり気分のいいスタートじゃないかな。


「まあ、ゲームなんだし、こんな事もあるわよ」

 アタシは慰めるつもりで言った。


「こんな筈じゃなかったでやんす、ちゃんと事前に調べて、レベル100勇者スタートで始める裏技を試したでやんすが・・・おかしいでやんす?」


 おいおい。

 こういうゲームで裏技に頼っちゃダメでしょ、バロンさんや。

 ってーか、もしかして、裏技ってあれか?


 アタシはさっきのパッケージの下に重ねられていたゲーム専門雑誌を手に取った。

 なるほど、これを鵜呑みにした訳ね。


「バロンさん、信じちゃだめだよー。これ、ガセネタだよ」

「え・・・!?」

「知らないの、この雑誌、毎回一個はわざと嘘の裏技を載せてるので有名なんだよ」

「ま、まさかー、でやんす!!」

「ヒロインが水着に着替える裏技とかさー、よく、騙されたーってあるじゃない」

「そ、そんな―、許せないでやんす、純情男子の心を弄ぶような事、詐欺でやんす、訴えるでやんすよ~!!」


 じたじたと暴れるバロンを見て、シャーリィがプッと笑った。


「ったく、何を喚いてると思えば、ガキじゃないんだし」

「そうは言うでやんすけどね、姐さん~」


 シャーリィは画面と彼を見比べて、珍しく興味を持った顔になった。

 彼女はあんまりゲームをするイメージはないけど、自分の姿がキャラクター化されるっていうのは、確かにちょっと面白い。


「でもさ、キャラクターにしちゃよく似てるじゃない、どうやったの?」

「これでやんすか?」


 彼は一度画面をリセットした。

「まずは、この機械で全身をスキャンするでやんす。そうしたら、表示されるランダムの質問に答えて、名前を入力すれば・・・っと」


 今度は「バロン」で作り直した。

 すると、少しだけ表示が変わった。


 まなえ ばろん 


 つよさ・・・・・40

 かしこさ・・・・49

 すばやさ・・・・22

 こううん・・・・15

 みりょく・・・・65

 たいりょく・・・55


 すきる1・・・・けはいかくし 3れべる

 すきる2・・・・せくはら 1れべる


 しょくぎょう・・ すとーかー

 れべる・・・・・ 15


 ぞくせい・・・・ ちつじょ・あく


「なるほど」

 シャーリィが納得したように頷いた。

「なるほどじゃないでやんすー」

「しかも、名前がまなえになってるね」

「それは単なるバグでやんす」


 バロンがリセットしようとすると、シャーリィはさっとコントローラーを奪い取った。


「こういうのは、そのまんまの方が面白いって」

「よりにもよってストーカーでやんすよ、感情移入できないでやんす!! せめてさっきの借金取りの方が、まだ良かったでやんす」

「いいって、いいって」


 シャーリィは楽しそうに決定ボタンを押してしまった。

 とうろく1に、キャラクターがセーブされた。

 バロンがガーンって顔になった。


「これ、面白いねえ。あたしもやってみていい?」

「もう、どうにでもしてでやんす」


 ぶーっと膨れるバロンを横目に、シャーリィはスキャナーの前に立った。

 光が一瞬彼女を包んで、処理が始まった。

 それから、質問がはじまる。


「お、質問も変わるんだねえ」

「みたいでやんすね」

「なんだい、スリーサイズまで聞いてくるよ、これって・・・」

「女性キャラクター専用ステータスでやんす」


 なんだかなー。

 まあ、シャーリィは良いわよね、スタイルいいから。

 少しだけためらった後、彼女はその羨ましすぎる答えを入力した。


 それからも10問ほど質問は続いた。

 どっちの色が好きですか、とか、目の前に倒れているオッサンに恵んでやるか?とか。

 まあ、よくある性格診断かな。

 一通り終わると、ゲーム機は不思議なBGMを流し始めた。


 こういうの。

 なんだかワクワクするよねー。


 もったいぶって、キャラクターが出来上がった。

 まばゆいばかりの光が放たれ、天から稲妻が走るような演出の後、画面に映し出されたのは・・・!?


 魔女のような帽子をかぶり、不必要に露出の高いシャーリィだった。


「こっ、これは!?」

 アタシ達は、固唾をのんで、そのステータス&プロフィールを読んだ。


 なまえ しゃーりい


 つよさ・・・・・2

 かしこさ・・・・85

 すばやさ・・・・96

 こううん・・・・3

 みりょく・・・・88

 たいりょく・・・5


 すきる1・・・・くちぐるま 20れべる

 すきる2・・・・ごうもん 5れべる


 とくしゅすきる・・・たからばこ かくりつあっぷ20ぱーせんと


 しょくぎょう・・ こうりがし

 れべる・・・・・ 18


 ぞくせい・・・・ じゆう・あく


「職業・・・こうり・・・高利貸し!?」

 思わず、声に出た。


 すごい、見た目は魔女なのに。高利貸しときたか。

 なるほど、彼女にぴったりだけど、これまた主人公向けの職業とは思えないぞ。


「それにしても、なんとまあ、偏ったステータスでやんすね」

「本当だ、良いんだか悪いんだかサッパリわからないよね」

 この、つよさ2とたいりょく5って。

 もしかしてゲーム的には致命的なんじゃない?


「・・・・」

 シャーリィは無言になった。


 静かにリセットボタンに手を伸ばすのを、バロンが素早く制した。


「駄目でやんすよ姐さん、ここは受け入れるしかないでやんす」

「あんただって、一回やり直したじゃないのさ」

「そのまんまの方が面白いって言ったのは、姐さんでやんすよ~」


 二人は不毛な言い争いを始めた。


 アタシは画面に映った彼女を改めて見た。


 それにしても、借金取りに、ストーカー、高利貸しって・・・。

 1300も職業があって、何でそうなるのかしらね。

 それに、二人とも属性「悪」。


 考えてみたら二人とも海賊だし、なんとなく、合っているのかもしれない。


「いいでやんす、あっしはもう、このキャラクター達でやるでやんすよ」

 結局、バロンがとうろく2にセーブをかけてしまって、二人の醜い戦いは終わった。


「あーあ、こんなのすぐ死んじまうんじゃない、つよさ2って何よ」

 シャーリィは、ちらりと、アタシを見た。

 なんだかんだ言うけど、どうせシャーリィ、ゲームをする気はさらさらないんでしょ。

 ただ、キャラクターを作りたかっただけで。


「じゃあ、次行ってみるか」

「そうでやんすね、パーティは3人まで登録できるし、一人ぐらいちゃんとした冒険系のクラスが欲しいでやんす」


 あ、この流れって・・・。

 まさか。


「期待はできないと思うよ~。元がアレだしね」

「そんな事ないでやんす、きっとラライさんなら大丈夫でやんす。普段はどうあれ、肝心な時にはやってくれるでやんすよ」


 二人の視線が、じっとアタシに注がれた。

 やっぱり・・・。

 そう、なるわよね。


 にしても。

 普段はどうあれ、って、どういう意味だー。


「ラライ、勿論あんたも作るよな」

 シャーリィは有無を言わさぬ調子で言った。

 まったくもう、勝手なんだから。

 でも、実際のところ、自分も興味が湧いたのは事実だ。


「それじゃあ、アタシもやってみますか」


 アタシはしぶしぶ、というフリをして、スキャナーの前に立った。

 コントローラーを持ってボタンを押すと、シャーリィの時と同様に光がアタシを包んだ。


 これがスキャニングか。

 もしかして、性別とか体形だけじゃなく、もっといろいろな肉体状況をスキャニングしているのかもしれない。


 そこからも、さっきと同じ流れだった。

 さっそく、スリーサイズを聞かれた。


 本当に、こういうのは余計な機能よね。

 きっと、正直に言わなくてもいいんでしょ、多少グラマラスにしておくか。


 おや、聞き耳を立てていやがるな。

 バロンがなんだか嬉しそうな顔をしていた。


 で、個別の質問っと。

 なになに・・・。


「はつたいけんの、ねんれいは?」


 アタシは絶句して、もう一度質問を読み返した。

 なんだ、こりゃ。


「ほー、変わった質問だな」

 シャーリィが興味深げに身を乗り出してきた。


 こ・・・こら。

 何を聞いとるんじゃ、この機械は!?


「なにこれ、単なるセクハラマシーンじゃないの!?」

「質問内容はまったくのランダムでやんす、機械に他意はないでやんすよ!」

「本当に!?」

「本当でやんすよ!」


 バロンがなんだかやけに強気に出た。


「ほら、早く答えないと」

 シャーリィが急かした。


「あー、でも、何の初体験のコトなのよ」

「何でもいいから早く」

「だって・・・」


 この一文だけ見たら、そういう事しか、頭に浮かばないじゃない。

 それに、それだとしたら、アタシまだ経験してないし。


 答えあぐねてもたもたしていたら、ブーッという音が嫌味臭く流れた。


「あー、時間切れだ、質問一つ減っちゃったじゃないか」

「いいんです、ああいうのは」

 アタシは次の質問にとりかかった。


「みにつけるならどちら?」


 今度は選択式か。


「せくしーなしたぎ やぶけたしたぎ」


 てめえ、ふざけてんのか。


「なんなのよこれ!?」

「だからランダムでやんす」

「機械のやることなんだから、早く答えなよ」

「あーもう、じゃ、じゃあ、セクシーなほうで」


 これじゃあ、何かの罰ゲームじゃない。

 アタシは顔を真っ赤にしながら答えた。


 それから10問。

 機械は一般家庭向けゲーム機とは思えない質問を次々と投げかけた。


 アタシに対する、誰かの嫌がらせ?

 もしかして、アタシがあまりに美しくて、主人公として非の打ち所が無さすぎるから、妬んでいる人でも居るのかしら。

 そんな気がするほどだった。


 アタシは変な汗を流しながら、ようやく質問を全て答え終えた。

 おいバロン、そこ、メモとらない。


「よーし、これでキャラクターが出来るね」

「そーですね」


 楽しげなシャーリィとは裏腹に、なんだかワクワク感も薄れて、アタシはじとっと画面を見つめた。


「ラライさんでやんすからね、きっと天使みたいなキャラクターが出てくるでやんすよ」 

 バロンがうっとりした顔で言った。


 そうね。

 確かにそうに違いないわ。

 アタシのキャラクターだもん。

 きっと属性「善」で、職業は、きっと聖職者か何かよ。


 光が弾けた。

 おお、さっきとBGMが少し違う。

 なんだか、ドラマティックっていうか、とにかく、ちょっといい感じだ。


 すごい、演出まで、さっきより凝ってる感じがするぞ。

 これは・・・光に稲妻、それに煙と爆発?


 ぼわーんと音がして、アタシの姿が浮かび上がった。


 って。

 なんだこりゃ。


 それは、アタシ達の想像を超えていた。

 最初は、アタシの思った通り、聖職者が来た、誰もがそう思った。


 だけど。

 あれ、何か?

 何かが違うぞ。


 うん。

 一見すると、確かに聖職者ですよ。

 それっぽい、ローブみたいなの着てるし。

 光り輝く長い杖も持ってる。


 でも。

 なんだか、ローブの下、穿いてなくないですか?

 なんで太ももが丸出しで、やけに足もとにかけてセクシーなんですか?

 それに、気のせいかちょっと腰をくねってして、なにやら微妙にエロティック感が漂っているんですけど。


 いや、それよりもだ。

 もっと気になる部分がある。


 頭の両脇に黒くねじれたひつじみたいな角が生えてるし、あれ、羽根もある。

 天使の羽根って、あんなに黒い色をしていたっけか・・・。


 アタシはステータス欄に目を向けた。


 なまえ ららい


 つよさ・・・・・7

 かしこさ・・・・12

 すばやさ・・・・9

 こううん・・・・6

 みりょく・・・・99

 たいりょく・・・4


 すきる1・・・・みりょう 18れべる

 すきる2・・・・のろい  16れべる


 とくしゅすきる1・・・ぞくせい「ぜん」にたいし こうげきぼーなす3ばい

 とくしゅすきる2・・・せんとうふのうのとき、みかたをぎせいにしてふっかつ


 しょくぎょう・・ あそびにん

 れべる・・・・・ 20


 ぞくせい・・・・ こんとん・あく



 いや。

 ぜったい見た目、遊び人じゃないし。


 ってーか、スキルと外見と職業がリンクしていないんだけど。

 それに。


「なんでアタシが混沌・悪なのよ、このゲーム、絶対間違ってるわっ!!」

「まあまあ、ゲームでやんすから」


 バロンがアタシを諫めようとしたが、向こうではシャーリィがニタニタと笑うのが見えた。


「すごいじゃない、レベル20スタートよ」

「それに特殊スキルが二つもあるでやんす、レアリティ高いでやんすよ」

「それでも、なんだか納得いかないです」

「そうかなー。すごいぴったりな感じするんだけど、ほら、あんたってどう考えたって属性〈悪〉だし」

「アタシのどこが(悪)なんですか!?」

「だってさー」


 彼女はアタシの前に指を突き出して、ちっちっ、というポーズをとった。

「じゃあ、今からあたしの質問に答えてみてよ」

「えー、シャ-リィさんの質問ですか、どうせ誘導質問ですよね~」

「違うって、あんたの属性確かめるからさ」


 ったく。

 アンタの質問で、アタシの属性がそうかんたんにわかるとでも思ってるのか。

 アタシはちらっとバロンを見た。

 彼も、興味津々という顔でアタシを見つめていた。


 もう、仕方ないなあ。

 一応はシャーリィの方が上の立場だし、答えといてやるか。

 アタシが頷くと、シャーリィはまたまた楽しそうな顔になった。


「じゃあ最初の質問から行くよ、あんた、もし多額の借金したらどうする?」


 なんだ、そんな質問か。

 そんなの簡単じゃない。

 悩むまでもないし、既に経験済みだわ。


「もちろん、踏み倒します」

 アタシは毅然として応えた。

 彼女は、そうだよね~って顔になった。


「次いくよ、もし人の物を壊したらどうする?」


 またまた簡単な質問だ。

 これまた、考える事でもない。

 そういう時は、決まってるじゃないか。


「バレないうちに隠します、もしくは逃げます!」

 面倒からは逃げるのが一番。


 逃げるのは、時に人が生きる上では必要な事なのだ。

 逃げる事を知って、人はより大きく、強くなれる。

 つまり、これって正義じゃない。


「ハイ次、じゃあ急に警察が踏み込んできたとする、彼らは敵・味方?」


 あーもう、本当に簡単な質問ばっかり。

 こんなんで、人の属性なんてわからないよね。


「警察に良い人が居るわけないでしょ、敵ですよ」

「うんうん、良い答えだ」

 シャーリィは腕組みをして納得した。


「あと二つだよ。ここに、旨いお菓子が二つある、でもいまから2人の友達が来ると連絡があった。あんたなら、どうする?」


 なるほど、諍いを避ける方法ってコトね。

 でもね、そんなのすぐに解決できる。


「もちろん、二つとも先に食べて、無かったことにします」

 アタシは得意げに胸を張った。

 喧嘩の元になるくらいなら、無くした方がいいもんね。

 お菓子も無駄にならないし、一石二鳥、我ながら見事な答えだ。


「あんたらしいね。じゃあ、最後」

「どんとこいです」


「他人の不幸は?」


「蜜の味!!!」

 アタシはガッツポーズを作って答えた。


 完璧な答えに、シャーリィが思わず拍手をするのが見えた。

 バロンもまた、つられたように拍手した。


「決まったな」

「決まったでやんすね」

 二人がうんうんと頷いた。

 シャーリィは、我が意を得たり、というように。

 バロンは・・・、おや、気のせいか少し肩を落としてない?


「悪だなー」

「悪でやんすねー」


 呟く声が聞こえた。


 ・・・・・。


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・・・。


 あれ。


 何か間違ったか、アタシ。


 とりあえず、シャーリィはなんだかものすごく優しい顔になった。


 え、ちょっと待って、今の質問で、何? アタシ属性「悪」に決まっちゃったの?

 アタシってば、一応、正義の味方で、主人公なんですけど。

 全年齢向けの模範的ヒロインに属性「悪」ってのは無いんじゃない?


 ここは空気を読んで「善」って言っときなさいよ。


「まあ、そういう事だ」

 シャーリィは、アタシの肩をポンと叩いてから、静かに部屋を後にした。


 くおらシャーリィ、なんでアンタ、ちょっと勝った目線で去っていくのよ。

 この話のオチ、どうつけろって言うの!?


 よくわからないままに、アタシはバロンと二人でその部屋に取り残された。

 振り向くと、バロンは彼女以上に優しい目をしていた。


「大丈夫でやんす、例え属性が〈悪〉であったとしても、あっしは、そんなそのままのラライさんが、好きでやんすよ」

 彼はそう言って、アタシの手にそっと自分の手を重ねた。


「バロンさん・・・」

 あたしは、彼がアタシを慰めてくれようとしているのだと思った。

 やっぱり、アタシの事をわかってくれるのは、彼だけだ。


 と、思ったら。


 彼がアタシの手に触れたのは。

 アタシが握ったままにしていたコントローラーを、取り戻したいだけだった。


 彼はコントローラーを手にすると、何事も無かったように画面に向かって、アタシのキャラクターを容赦なく、とうろく3にセーブした。


「んもう、バロンさんったら~」


 アタシが膨れ面になる先で、バロンは悪戯っぽい笑みを浮かべて、ゲームのスタートキーを押した。


 それにしても。

 彼の好きなアタシって・・・どんな、アタシなんだろう。

 疑問が渦巻く先で、アタシ達のキャラクターが動き始めた。


「アタシって悪じゃないからね。どっちかって言えば、正義の味方なんだから」

 アタシは彼の隣に並んで座った。


「分かってるでやんすよ~、ジュース飲むでやんすか」

「あ、飲む飲む~」

「煎餅も買ってあるでやんすよ~」

「やったあ、さすがバロンさん~!!」

「ジュースの方は冷蔵庫に補充してあるでやんす」


 アタシは自分の好きなフルーツジュースと、彼の為のシイタケ茶を用意した。

 クッションを敷き直して座って、もう一度、画面を見つめた。


 小悪魔にしか見えないキャラクターだが、見慣れてくると、なかなか可愛いく思えてきた。


 そして。

 アタシ達はゲームを始めた。


 それは。

 近年まれにみるほどの、クソゲーだった。




 おわり


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