第2幕 【それぞれの想い、その先に…】 / 第1節
ミーンミンミンミーン――…。
夏の訪れを告げるように、蝉たちが外の至る所で力強く鳴き声を轟かせている。教室ではエアコンが忙しなく稼働し、少し肌寒いくらいの冷気を室内に絶え間なく送り続けていた。
――今日は七月七日。世間一般でいう七夕の日だ。一年に一度だけ、織姫と彦星が出会う特別な日。
しかし、だからと言って“短冊に願いごとを書いて笹の葉に飾る”なんていう風習はとっくの昔に卒業したし、高校生の俺にとってはいつもと何ら変わらぬ日であることに違いはないのだけれど。
英語の授業中、俺は机に頬肘をつきながら、慣れた手つきで英文を黒板に書き連ねていく黒崎の後ろ姿をぼんやりと眺めていた。黒板に刻みつけるカツカツッという音が、なんとも心地よいリズムを奏でている。
俺は不意に小さくあくびをし、頬肘をついていた手でゴシゴシと強く眼をこすった。
(相変わらず今日も平和だな、この世界は。それにしても、あれからもう三か月が過ぎたのか…)
教室の外に視線を移すと、空は雲一つない澄みきった青。何気なくも足早に過ぎていった三か月間の出来事が、断片的に俺の頭をよぎっていた。
――俺が志乃咲愛美と知り合ったあの日から、俺の学校生活は自分の思い描いていたシナリオとは百八十度逆転したものとなっていった。
とりあえず、この三か月で学んだことは、学級委員の仕事が想像以上に面倒くさい仕事だったってこと。
この学校では各学年各クラスの学級委員が集まり、生徒会にクラスの現状と課題を報告する学年ミーティング。また、学年ミーティングで持ち帰った情報をクラスの生徒みんなに共有し、クラスの課題改善について議論するクラス会議がある。そして、それらはだいたい二週に一度のペースで設けられている。
学級委員の主な役割はそれらのミーティングを通じて、クラスの雰囲気と規律の管理・向上のために日々尽力することにある。
しかし、この学校では生徒の自主性を尊重したスタイルをとっているため、教師は“生徒の自主性の尊重”をいいことに、そのような場には一切関与しない。
そのため、それらを各クラスの学級委員が主体で行わなければならず、学年ミーティングに向けて事前にクラスアンケートを作成、実施し、集計をしてクラスの現状について把握しておかなければならない。
おまけに、各ミーティングの内容を簡潔に報告書にまとめ、担任の教師に提出させられる始末…。
このシステムは日々何かと忙しい教師の負担を少しでも軽減させようと、現校長が直々に考案したものらしいが、こっちからしたら教師という肩書を利用した都合のいい言い訳にしか聞こえない。
(学級委員って、裏方でこんなとんでもない雑用を押し付けられてたのか。あ~ぁ、やっぱりあの時、無理にでも断っとくべきだったな…)
「歩夢、お願い! この通り!」
「え~っ、マジで?」
――再び時間を遡り、新学期が始まってしばらく経った、ある日の昼休み。俺はとある女子生徒と口論になっていた。
その女子生徒は艶のある黒髪のショートヘアー。前髪をヘアピンで右へ流しており、キリッとした眉毛に気の強そうな目をしている。肌が地黒で身長は見たところ百六十を超えているが、それに見合うだけのバランスの取れた綺麗なスタイルをしていた。
話を端的に整理すると、その後の役員決めで俺と愛美、書記の佐々木望海(俺が口論している女子生徒)の三人で学級委員の仕事をすることになった。
しかし、愛美と望海は同じ陸上部に所属しており、望海は自分の仕事であるアンケートや報告書の作成にあてる時間が取れないとのこと。
それで今、俺は望海からその件で交渉を持ちかけられているというわけ。
「――アンケートと報告書って、普通は書記である佐々木の仕事だよな? 何でわざわざ俺がやらなきゃいけないんだよ…」
「何でってそんなの、高総体に向けての練習で忙しいからに決まってるじゃない?」
「――…。まぁ、ここの陸上部は練習がハードなことで有名だから、忙しいのはわかるんだけど…さ。でも、そこは佐々木が時間をやりくりすればいいだけの話だろ? 家に帰ってから時間を見つけて計画的にやるとかさ」
すると、望海は俺の机の端を両手で力強くつかみ、
「それができそうにないから、こうして頼んでるんだけど? ウチ、部活で家に帰ってくるのがいつも遅いし、帰って来てからも家の手伝いやら授業の課題やらに追われて、そこまで手が回らないのよ。とまぁ、理由はこれで十分に説明したはずなのだけど、納得してくれたかしら?」
依然として強気な態度のまま、ぐいっと俺の顔を覗き込んだ。
「そんな偉そうにお前の御託を並べられても…。俺はただでさえ書記のお前よりも仕事量が多いってのに、これ以上仕事を増やされたら俺のキャパがもたねーっつーの」
そう言って、俺は露骨に溜息をつく。すると、
「むぅ…。いいじゃない、仕事の一つや二つくらい頼まれてくれたって。第一、歩夢は部活に参加してないんだから、どうせ放課後は暇なんでしょ?」
「――っ…」
望海のさりげなく言い放った最後の一言に、俺は何も言い返せなかった。
――確かに幽霊部員である俺にとって、放課後は家に帰ってネトゲするくらいしかやることがないから、暇であるのは事実なのだが…。
(それにしてもこいつ、知り合ってまだ日も浅いってのに、どこからそんな情報を―――)
「あと、実を言うとウチさ、文書作成って苦手なんだよね~。話し合いの内容をメモするくらいはできるけど、アンケートとか報告書とか、そういうことはさっぱり」
そう言って、望海は悪びれる様子もなく両手を軽く横に広げ、“お手上げ”と言わんばかりのポーズをとった。
(んじゃあ、何でわざわざ書記に立候補したんだよ!)
と、俺はとっさにツッコミを入れたかったが、さらに話が面倒くさい方向に発展しそうだったので、喉元まで出かかっていた言葉を無理やり飲み込んだ。
「そういうわけで歩夢さん、この通り! 別にウチの仕事を全部肩代わりしてって言ってるわけじゃないんだし、ウチもできることはちゃんとするからさ」
望海は両手を合わせてウィンクを飛ばしてきた。こいつに“これ以上何を言っても無駄だな”とやむなく悟った俺は、
「はぁ…。やれやれ、わかったよ。でも、アンケートと報告書の作成以外の仕事はしっかりやれよな?」
「えっ、ホントに! いや~、歩夢様は物分かりが良くて助かりますよ。はいはい、分かってますって~」
結局、俺は夫婦漫才のような口論の末に、望海のペースに飲まれて渋々承諾してしまった。
――そんなわけで、俺は日常的な仕事全般と学級委員長である愛美のサポート、そしてアンケートと報告書の作成の仕事を兼任してやっている。
初めはアンケートや報告書の作成の仕方がわからず、去年に学級委員を経験していたという同じクラスの生徒に頼み込んでアドバイスをもらいながら、不慣れな作業に悪戦苦闘していた。
しかし、回数を重ねるごとに少しずつ要領をつかみ、最近ではその仕事を一人でも難なくこなせるようになってきた。
何気ないキッカケから愛美に振り回され、嫌々始めることになった学級委員。だけど、そのおかげで俺は三か月前の消極的でダメな自分から、少しずつ良い方へと変われているような気がする。
まぁそういう意味では、あの時に俺を指名してくれたあいつに感謝しなきゃな―――。
「――って!」
俺は急に固い何かで頭を軽く叩かれ、不意に声を出してしまった。
何事かと思い、叩かれた方をゆっくり振り返ると、そこには黒崎が閉じた教科書を片手に、にこやかな表情で俺を見ていた。
しかし、その表情とは裏腹に、彼女からは言葉では言い表せない覇気がじりじりと滲み出ている。
「ふ~ん、担任である私の授業中に居眠りをするとはいい度胸ですね? 東雲君、覚悟はよろしいですか?」
黒崎の言葉から察するに、俺はいつの間にか意識が飛んでしまっていたらしい…。
一気に現実に引き戻されたと同時に、自分の身体から血の気が引いていくのがはっきりと分かった。
「は、はい、すみません…でした…」
普段、黒崎は優しくてとても良い先生なのだが、自分の授業に人一倍のプライドを持っているらしく、授業中だけは人が変わったように厳しくなる。
ここ三か月の間で、授業中に居眠りをした生徒が教室から何人廊下に叩き出されたことか…。
「それでは既にお分かりのこととは思いますが、この授業が終わるまで、廊下でゆ~っくりと頭を冷やしてきてくださいね? 頭を冷やす時間は十分にありますので、脳の奥までキンキンに冷やしていただいて結構ですから」
黒崎は手に持っていた教科書を丸め、反対の手のひらにポンポンと軽く打ちつける。
黒崎から“授業の邪魔だから早く出ていけ”という無言の威圧を感じ、
「―――…。分かりました…」
と、弱々しく返事をして渋々席を外し、そっと教室を後にした。
――あれからどのくらい経っただろうか。俺はときどき廊下ですれ違う教師たちの気の毒そうな視線を浴び、その度にその視線にじっと耐えていた。
普段なら居眠りをしていても、授業中に誰かが近づいてくればすぐに気配を察せるはずなのに…。
なぜか今日に限っては、俺の気配察知センサーがピクリとも反応しなかった。
(はぁ、今回は完全にやっちまったな…。次からは同じ轍を踏まないように気をつけねーと。にしても、そろそろ突っ立ってんのも飽きてきたな…)
俺は小さくあくびをし、頭の後ろをポリポリと掻いた。
それから間もなくして、校内に授業終了を告げるチャイムが響き渡った。その後、教室から出てきた黒崎から軽く説教を受け、ようやく自分の机に帰還することができた。
普段であれば四百字詰めの原稿用紙を複数枚渡され、みっちりと反省文を書かされるのだが、今回が一回目ということと俺の日頃の成績のこともあって、珍しく大目に見てくれたようだ。
「あら、歩夢が授業中に居眠りとは珍しいわね。何かあった?」
俺が席に座ると、望海が不思議そうな顔を浮かべて歩み寄ってきた。
「まぁ、最近は俺もいろいろと忙しくてな。あんまり睡眠時間がとれてねーんだよ」
「ふ~ん、いろいろと忙しい、ね…。お金に困って新しくバイトか何か始めたの?」
望海は目を細め、疑いの眼差しで俺をじっと見つめる。
「いや、別にそういうのじゃないけど…。そろそろ報告書の提出期限が迫ってるからさ。ここ数日は夜遅くまで報告書と睨めっこしてるんだよ」
――と口では言ったものの、実はネトゲの期間限定イベント云々でPCから手が離せず、連日にわたって日を跨いでネトゲをしていたのが原因なのだが、それはあえて口を噤んでおこう…。
「へぇ、そうなんだ。それは関心関心。それじゃ、その調子でこれからもウチの分まで仕事を頑張ってくださいな~」
そう言って、望海は清々しいくらいの笑顔で俺の肩に手をそっと置き、ポンポンと軽く叩いた。
「くださいなって、お前…。お前が時間を取れないっていうから、今は俺が仕方なく引き受けてるけど、元はと言えばこれはお前の仕事だからな? そのうち部活が落ち着いたら自分でちゃんとやれよ?」
「はいはい、分かってますって~。そのうちね、そ・の・う・ち」
望海は両手を後ろに組んで、わざとおどけた表情を見せた。
(ったく…。こいつ、絶対にやる気ないだろ…)
――望海とそんなやりとりをしていると、先ほどまで席を外していた愛美がゆっくりと教室に戻ってきた。
部活で相当疲れているのか、普段に比べて足取りが重くなっているのは一目瞭然だった。
「愛美、大丈夫? 部活でもそうだけど、最近あまり顔色が良くないよ?」
愛美が席に座ると同時に、望海が心配そうに声をかける。
「”大丈夫!”って言いたいところなんだけど、身体の疲れがなかなかとれなくてさ~…。最近は暑さと疲労でご飯もあまり喉を通らないし…」
そう言って、愛美は机の上に腕を組み、ぐったりした様子で顔を半分埋めた。
「えっ、それはヤバいね…。睡眠時間はちゃんと取れてる?」
「一応、十二時前には寝るように心掛けてるよ。だけど、暑さでなかなか寝つけなくて―――」
「そっか~。ちなみに寝る時、いつもエアコンはつけてないの? それで寝つきの悪さは解消されるんじゃない?」
「あはは…、ホントは家にエアコンがあれば良かったんだけど、私の住んでるとこが比較的古くてさ。恥ずかしながら、今は愛用の扇風機でなんとか暑さを凌いでるんだよね…」
「う~ん、それはそれは…。でも、日々の体調管理はアスリートの基本だから、それは怠っちゃダメだよ! 部活中にいきなり倒れられたりなんかしたら、面倒を見るのはウチらなんだからね?」
望海は人差し指を立てて、愛美に軽くお説教。
「は~い。以後気をつけます…」
愛美は相変わらず顔を埋めたまま、小さく片手を挙げて弱々しく返事を返した。
「お前は愛美のお母さんかよ…」
――にしても、片や愛美はダウン寸前だっていうのに、どうして同じ部活のこいつはこんなにも平然としていられるんだろう…
「あっ、そうだ。歩夢君、いつも学級委員の仕事を任せっきりでゴメンね…。お手伝いをしたいのはやまやまなんだけど、大会が近いってこともあって、最近は活動がさらに忙しくてさ…」
愛美は怠そうに上半身を持ち上げ、俺の方を振り返る。そして、申し訳なさそうに目を伏せた。
「いや、お前は忙しい中でよくやってくれてるよ。だから、お前が謝る必要はねーって」
現に愛美は部活動がハードであるにも関わらず、放課後の学年ミーティングやクラス会議には休むことなくちゃんと出席している。おまけに、アンケートや報告書についてまとめた詳細なメモまで渡してくれるのだ。
俺の仕事がスムーズに進んでいるのも、ほとんど愛美のおかげだといっても過言ではない。
「そう? だといいんだけど…」
「そうだって。第一、お前をサポートするのが副委員長である俺の役割なんだから、お前の穴を埋め合わせをするのは当然のことだよ。だから、お前はこれまでと変わらず自信を持って部活に専念すればいいさ」
その言葉を聞いた瞬間、愛美の表情に少し明るさが戻った。
「――わかった、ありがと。歩夢君がそういうなら、私、心置きなく部活頑張るね!」
「おう、頑張れ。あと、どこかの誰かさんも愛美を見習って、しっかり自分の仕事を全うしてくれればいいんだけど―――」
そう言って、俺は頬肘をつきながら横目で望海の方を見た。
「歩夢くん、それは誰のことを言っているのかな~?」
望海はぎこちない笑顔のまま、眉毛をピクピクと上下に動かしている。
「いや、別に~」
そんな望海を前に、俺はさも気づいていないような素振りで、わざとらしく望海から目線をそらす。
「ふ、ふん、歩夢に言われなくたって、ウチだって書記として必要最低限の仕事はしてるもん! まぁ、アンケートと報告書はあいかわらず歩夢に任せっきりだけどさ…」
「はいはい、最低限の仕事、ね…」
俺は視線を窓の外に移し、軽く溜息を洩らした。
一応、望海も書記として、学年ミーティングやクラス会議に出席し、その議題内容をメモするという仕事を担当している。
だけど、それらの内容を一から十までそのままメモするわ、ミーティング中にたびたび居眠りしてメモを取り忘れるわで、望海のメモしたノートを見ても要点がさっぱり分からない。
だから、俺は会議の際にいつもポケットに自前のボイスレコーダーを忍ばせ、結局は俺が議題の要点を自分で整理する羽目になっているという…。
「――あっ、そういえばさ」
突然、何かを思い出したように望海がつぶやく。
「ん? どうかしたのか?」
俺が尋ねると、望海は人差し指で頬を軽く掻いた。
「いや…、ウチが前からちょっと考えていたことがあって。再来週から夏休みだし、“夏休み中にみんなで海水浴にでも行きたいな~”なんて思ったんだけど、どうかな?」
「えっ、海⁉ いいね~、行こう行こう!」
望海の提案に、先ほどまで屍のようにぐったりしていた愛美は途端に目を輝かせ、餌を見つけた魚のごとく、すごい勢いで話題に食いついてきた。
「よかった~、愛美はノリ気みたいね。んで、歩夢は?」
「う~ん…、俺は遠慮しとく。夏休みはいろいろと用事があるんでな。お前らで楽しんで来いよ。」
――とは言いつつ、夏休みにこれといった用事はなく、本当はただ単に行くのが面倒くさいだけなのだが…。
「え~っ、歩夢君行かないの? せっかくの機会なんだから一緒に行こうよ~」
「そうだよ、歩夢。用事とかいいつつ、どうせ夏休みも何もすることが無くて暇なんでしょ? 家にばかり籠ってばかりいると身体に毒だよ?」
「――っ…」
望海の的確な答えに、俺は動揺を隠せなかった。
(――ぐっ、コイツは相変わらず余計なことを…。いっつも俺の心を読みやがって、お前の前世はエスパーかっての)
「いっ、いや、だから、夏休みにいろいろと用事が―――」
「それじゃあ、その用事って何よ? ぜひこの場で聞かせてもらいましょうか?」
望海は腰に手を当て、俺の目の奥を覗き込むようにグイッと顔を近づけてきた。
「―――…」
「ほ~ら、やっぱり図星じゃない? そういうことで、歩夢も参加決定ね?」
望海はふふんと勝ち誇ったような表情をして、やれやれと両手左右に軽く広げた。
「――ちっ、わ、わかったよ…。本当は家でゆっくりしてたかったんだが、仕方ねーな」
俺はいつものごとく望海に完全に丸め込まれてしまった。追い詰められると素直に白状してしまう自分の癖に心底嫌気がさした。
「ちなみに聞くけど、望海の予定してるメンバーって俺らだけ?」
「まぁ、今のところはね。ただ、あとは各自で誘いたい友達を呼ぶってかんじかな~。今回の旅行を機に、お互いの友達と親睦を深めるっていうのもそれはそれで楽しそうだし」
望海は人差し指を下顎に軽く押し当てる。
「はいはい、りょーかい。ってか、俺はともかくとして、お前らは夏休みも部活で忙しいんだろ? そもそもそんな暇あんのかよ?」
「ん~、さすがに二、三日くらいは休みをくれると思うけど…。でも、もし休みが取れなくても、ウチは無理にでもいいわけを作って休むから問題な~しっ! 」
そう言って、望海は無邪気な笑顔でVサイン。
「いやいや、それはむしろ問題しかねーだろ! まぁ、お前はそれでいいかもしれないけど、愛美は―――」
「私も望海ちゃんと同じ方法でお休みをもらうから、全然ダイジョ~ブ!」
愛美は俺の言葉を遮ってあっさりと即答。俺はそんな二人を交互に見比べ、
「はぁ…、お前らな~。コーチにバレて、あとで何か言われても知らねーかんな?」
あきれ顔のまま、額に軽く手を当てた。
「気にしない、気にしな~い! ウチらはいつも休まずに部活を頑張ってるんだから、たまには息抜きもしないと。ね、愛美?」
「そうそう、望海ちゃんの言う通り!」
「―――…。まぁ、お前らがそう言うんならいいか…」
キーンコーンカーンコ―ン
そんな話をしている間に、休み時間のチャイムが鳴り響いた。
「あっ、もう休み時間終わっちゃった…。それじゃあ、この続きはまた後日話し合うってことで。もし誰か誘いたい友達がいたら、事前にちゃんと声をかけておくようにね!」
望海はそう言い残し、そそくさと自分の席に戻っていった。




