第1幕 【愛美(つぐみ)と愛美(まなみ)】 / 第終節
(アイツは一体何なんだ? 急に俺の前に現れたと思ったら、馴れ馴れしくアプローチをかけてきて。その上、学級副委員長の肩書きなんて面倒くさいものまで押し付けてきやがって。前世に俺があいつに何か悪いことでもしたってのかよ…)
志乃咲の姿が見えなくなった後、俺は心の中で自問を繰り返していた。
――にしても、あいつからどこか懐かしさを感じるのはなぜだろう?
今朝あいつと公園で初めて会った時も、なぜかデジャヴに襲われたし…。
「なんだ、このモヤモヤする違和感は…。もしかして、前にあいつと会ったことがあるってのか?」
俺はゆっくり瞼を閉じて、頭の中に保管してある人名リストを検索し始めた。
自分で言うのもなんだが、俺は昔から記憶力には自信があり、一度でも関わったことのある人の名前ならだいたい覚えている。もし過去に志乃咲と一度でも会ったことがあるなら、きっと思い出せるはずだ。
――思考し始めてから一分、二分と時間が刻々と過ぎ去っていく。
中学生、小学生と年代を遡り、自分の記憶をできる限り紐解いてはいるが、今回はどんなにリストを探しても“志乃咲 愛美”という人物は該当しない。一応、両親が離婚・再婚して苗字が変わった可能性も考慮してみたが、そもそも俺自身が過去に“マナミ”という名前の異性と交流した心当たりが一切無い。
そうしてる間に、授業開始五分前を示すチャイムが校内に鳴り響き、我に返った俺はそこで思考するのを止めた。
「はぁ、ダメだ…、全く思い出せね~。あ~、もう!」
俺は両手で勢いよく頭を掻きむしる。そして、
「ってことは、きっと俺の気のせいだな。うん、そうに違いない!」
違和感を断ち切るように、声に出して自分に強く言い聞かせる。それから、俺は志乃咲を追うように屋上を後にした―――。




