第3話
「燕 姉さん……遅いなぁ」と思いながら、神宮寺さんの家の前には俺一人が立っていた。
そうやって姉さんが来るのを待っていたら携帯電話が鳴り、伺う家の前で待ち合わせていた燕 姉さんは一緒に手伝う予定だったのに
「ごめん、創。予定が入っちゃった!一人でお願い!」
なんて連絡してくるし、「これは帰っても良いのでは?」と思った瞬間に
「鳴海 創さん、お待ちしてましたわ」
と神宮寺 紅花さんがあらわれた。どうやら逃げられそうにない……
「……燕 姉さんが来れないみたいなんですけど、別の日にしましょうか?」と恐る恐る聞いたのだが
「ふふ、創さん お一人がいてくださったら大丈夫ですよ」と言って……帰らせてくれなそうだ。
仕方ないと諦めてお宅にお邪魔する。
「倉庫は何処ですか?」と尋ねたら
「ふふ、そんなに急がなくても大丈夫ですよ?先ずは うちの娘を紹介しますから」
と、紅花さんが呼んで現れたのは俺より一つ年下の女の子だった。
「はじめまして、神宮寺 月香と申します」と挨拶してくれた彼女は紅花さんに似た、和装が似合いそうな美少女だった。でも、月香さんも紅花さんと同様に『強者』の人だと感覚でわかった。
俺も自己紹介をして挨拶もそこそこに倉庫の片付けを始める。
「……さすが、由緒あるお宅は色々なものがありますね」と言ったら月香さんは
「ふふ、ただ古いだけですよ」と答える。あとはお二方に指示された倉庫の中のものを出し入れして黙々と片付けた。
ある程度 片付けが終わったら月香さんが
「創さん、助かりました。やっぱり男の方がいらっしゃると違いますね」と言う、そして月香さんはこっそりと「母は父と離婚しているので、うちには男性がいないのです」と教えてくれた。
そんな風に話しながらもすべての片付けが終わったので「それじゃ失礼します」と帰ろうとしたら二人に留められた。
「創さん、まだ何のお礼もしてないのに帰らせませんよ?」
と、紅花さんは言うし
「そうです、お食事も注文してしまったのですから、どうか食べてから帰ってください」
と、月香さんも言う。
「さぁさぁ、先ずは お風呂で汗を流してください。その後、さっぱりしてからお食事にしましょう」と言われたが「そんな、結構ですから」と遠慮したにも関わらず、紅花さんに無理矢理 背中を押され洗面所に放り込まれる。
「……足を踏ん張ろうとした俺の背中を押して移動させるってどんな技だよ……」
あの技があれば横綱になれるのでは?と思いつつ浴室を覗く……立派なお風呂だ。
「……父さんが注意していた展開になるとは……神宮寺家の女、恐るべし」
仕方ないので浴室に入り、シャワーが出るようにする……しばらく経つと温かいお湯が出て……
「創さん、お背中をお流ししますわ!!」と嬉しそうな声を出して侵入してきた紅花さん達と俺の目があった。
「……創さん、お風呂に入るときは服を脱ぐものですよ?」
「……創さん、騙したんですね?酷い!」
そんなことを言う二人に
「……とりあえず、浴室を出てお話しましょうか」
と、俺はジト目で言った。