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神宮寺家の女たち  作者: もんじゃ
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第2話


 「神宮寺先生の家の倉庫の片付けに男手が必要だから手伝いなさい」と燕 姉さんが俺に言ってきた。すべての発端は姉さんのこの台詞からだった。


 神宮寺家というのは姉さんが武術を習いに通っているという家だ、父さんの友人の実家でもあるらしい。


 「……なんで俺が?」と一応は姉さんに反論した。俺がなんでそんなことをしなくてはならないのだと言ったのだが


 「……創、本当に私のお願いを断るの?」と姉にジロリと睨まれたら強くは言えなくなる。姉さんには頭が上がらないからだ……クラスの男子の中には「綺麗なお姉さんがいて羨ましい」なんて言うやつがいるが姉がいないからそんなことを言うのだと思う。


 「……創が手伝う理由もあるわよ。この前、神宮寺先生に助けて貰ったでしょう?」と姉が言う。それを言われたらこちらも困る、実際その通りだからだ。

 幼馴染みの玲楓がクラスのカラオケの集いに行き、男達に乱暴されそうになった事件があった。玲楓だけを助けるだけなら俺一人でもなんとかなったかもしれない、でも他のクラスメートの女の子を助けたり、店から無傷で脱出するためには俺一人では難しかっただろう。


 「……姉さん。俺はあの紅花さんって人、なんか怖いのだけど……」と言ったら


 「……え?優しい人よ?」って姉さんは不思議そうに言う。どうして同じ人物なのにこんなに認識が異なるのだろう?

 まぁ、燕 姉さんについても父さんは「うちの天使だ」って言うけど俺は「魔王」だって思ってるから認識なんてそんなものなのかもしれない。


 「……わかったよ、手伝いに行くよ」って姉さんに言ったら


 「ふふ、ありがとう。良い子ね」と姉さんは笑顔で俺の頭を撫でる。……姉さんは時々「天使」になるのは少しだけ認めよう、本当に時々だけど。


 俺が神宮寺の家に手伝いに行くと言ったときの両親の表情は少し複雑そうだった。もの静かな母さんは眉間に少し皺を寄せて


 「……創ちゃん、浮気は駄目よ」


 なんてよく分からないことを言うし、父さんは


 「……創、あの家では風呂を借りちゃ駄目だ」


 なんて更に訳わからないことを言い出す。よく知らない人の家で風呂を借りるわけないだろうに。


 父さんに「神宮寺さんの家ってどんな家なの?」って聞いたら


 「……昔からの武術を伝える家系らしい、屋敷の中に道場もあったぞ。創が会ったという神宮寺 紅花さんには兄がいて、その兄が父さんの大学時代の友人なんだ。俺はてっきりその兄が当主を継ぐものだと思っていたんだけど……どうやら当主を決定する兄妹の立合いで負けて妹の紅花さんが継いだらしいんだ……あの神宮寺が負けるなんて信じられないけどな」


 「詳しくはわからないが……神宮寺家は昔から女性が強い家だって友人も言っていたよ」と父さんが教えてくれた。「そんな家に手伝いに行ったら、こき使われそうだなぁ」と密かにため息を吐いた。


 

 

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