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王国騎士団精鋭部隊・二番隊

 

 十ある王国騎士団精鋭部隊のうち、研究部隊である五番隊、十番隊を除く八部隊の仕事は3つ。


 その一、王都の守護。

 王国最大の都である王都カムロスの防衛。基本的に二つの部隊があたる。魔王襲来事件があった時、二番隊と六番隊が当たっていた任務がこれだ。


 その二、他国との戦争。

 島国であるラウンズ王国だが、海を越えた東にある教国や、南方の帝国との戦が絶えない。基本的には精鋭部隊に入らない下位団員が駆り出されるが、戦乱の状況に応じて複数の部隊が投入されることも多い。魔王襲来直後、王都に帰還した一番隊に与えられていた任務だ。


 その三、王国各地の治安維持。

 上二つの任務に当たらない部隊が行う。賊や魔物の討伐がメイン。訓練を兼ねて行われることも多い。先日のゴブリン討伐がこれにあたる。冒険者┃協会(ギルド)依頼クエストを国が受注し、騎士団が遂行する、なんてこともある。


 我々二番隊の今回の仕事は三つ目。これから数週間をかけて王国全土を周り、各地の平和を荒らす輩を退治する。

 二番隊のメンバーは七人。

 最初の目的地へと向かい、山を越えているところである。



「ま、まずは港に向かうんですよね……?」



 (ども)りながら尋ねてきたのは、エイル・ガーデン。騎士の一人であり、魔法使いだ。気が弱くて、引っ込み思案。人と話すより自然と語り合うのが好きなタイプの女の子である。

 彼女の言うとおり。島の中央にある王都から南へ、この山を抜けて、王国最大の貿易港を目指す。

 頷くと、彼女は隣を歩く槍を担いだ青年に声をかけた。



「じ、じゃあ、イスルスは知り合いがいたりするの?」

「俺の知り合いかぁ。俺は北の港出身だからなぁ」

「あっ……そうだった……。ご、ごめん」

「謝ることねえよ。この国は港が多いからなぁ。間違えるのは仕方ねえや」



 彼はイスルス・マーフィー。北の港出身だ。二番隊のメンバーの中で最も背が高く、筋骨隆々とした偉丈夫である。率直にいえばわりと好みのタイプ。これで性格が粗暴ならストライクゾーンだったが、気遣いもできる良い奴なんだよなぁ。



「だからって、北と南を間違えるのはどうかと思うけど」



 そう呟いたのは弓使いの騎士、グレイ・トレス。常に冷静だが、どこかひねくれて、斜に構えたところもある少年だ。全体的に細い印象を与える、二番隊最年少。私にショタの好みはないが、その手の求道者達なら飛び付くのではないかと思う程には整った外見をしている。



「そういえばグレイの実家って南の港にあるんじゃなかったー?」

「そうだけど。別に寄るつもりはないよ。任務で来てるんだし」

「えー、寄ってこうよお邪魔しようよお邪魔するよー!」

「ヴェラちゃん、突然お邪魔するのは普通に迷惑ですし、そもそもグレイ君の言った通り私達は任務で向かうんです。遊びじゃないんですよ」

「えー!そんな堅いこと言わなくていいじゃんかー!シェラちゃんのばかー!」

「……まぁ、別に寄っても問題ないだろうけど。任務の休憩時間とか使えば行けるだろうし」

「やったー!」

「駄目です!」



 言い争っているのはシェラ・グリーンヒルと、ヴェラ・グリーンヒルの双子姉妹。

 どちらも細身で茶色の髪をしている。

 シェラが姉で、ヴェラが妹だ。外見はとても似ているが、規則重視で落ち着いた姉と、奔放で活動的な妹で対照的。ちなみに使う武器は、姉のシェラが銃、妹のヴェラが剣である。見分け方のコツは、何よりもしゃべり方。「~ですよ」と常に誰にも敬語なのがシェラで、「~だよー!」といった風に伸ばした喋りをするのが妹のヴェラ。とはいえ、私自身完璧に見分けられるようになるまで1ヶ月かかった。

 最初はとりあえず覚えるだけで良い。



「たーのしみだなー!」

「もう……ジーク副隊長、何か言ってください」

「え、俺?……ヴェラ、あまりお姉さんを困らせるものじゃないぞ」

「ふんふんふーん!たっのしーみたっのしーみ!」

「聞こえてない……」



 もっと自信を持って、声を張って欲しいんだがね、ジーク副隊長。

 昨日貧血を起こしはしたが、王国騎士団の医術部隊である七番隊のおかげですっかり治った様子だ。しかし徹夜で何か調べものをしていたようで、眠そうだ。しきりに目を擦っている。


 とまあこれに私を入れて七人が、王国騎士団精鋭部隊・二番隊のメインメンバーである。


 王国騎士団は大きく二つに分けられる。一から十の精鋭部隊と、それ以外の下位団員。下位団員として実績を積むか、精鋭部隊の隊長・副隊長からの指名を受けるか、或いは年に二度の試験に合格することで、精鋭部隊入りができる。


 各隊にはそれぞれ特色がある。分かりやすいところだと、五番隊と十番隊は魔法・銃の研究部隊。ザルバ隊長率いる六番隊は、血統を重視する貴族の師弟の集まりだ。九番隊は優秀な弓使いを集めていたりする。総代騎士長パーシアス率いる一番隊は、他の部隊を圧倒するほどの精鋭中の精鋭が集う。


 私の二番隊は、特色は意識せず、来るものは拒まず、去るものは追わずって感じである。先代が言うには、二番隊設立からずっとこういう方針らしい。だからまあ、これが特色とも言えるだろう。


 ……結果集まったのが



「たっのしーみだなー!うみー!さかなー!おっよぐぞー!」

「え、いつの間にか僕の実家の話じゃなくなってるんだけど」

「泳ぎ教えてやろうか、副隊長!」

「別にいいよ」

「そう言わずに。昨日溺れそうになったらしいじゃねえか」

「なんでそれを!?」

「し、シェラは、泳げる……?」

「私は泳げますよ。ヴェラちゃんとよく川遊びしてましたし」

「す、凄いね……!」

「コツさえ掴めば簡単です。教えてあげますよ」

「よ、よろしく……!」

「ほら、エイルも泳ごうとしてるじゃねえか。副隊長も遠慮せずに」

「ぐ……。……わかったよ」

「よっしゃ!じゃあさっさと任務終わらせちまおうぜ」

「おー!終わらせてー、遊ぶぞー!!」

「僕本読んでたいんだけど。終わったら休んでてもいいよね?」

「いいや、こうなったらお前も道連れだぞ……グレイ……!一緒にイスルスから泳ぎを習うのだ……!」

「……ごめん副隊長。僕泳げるんだけど」

「はぁ!?」

「ジーク副隊長に負けないよう、しっかり教えてあげますからね」

「……が、頑張る……!わ、私頑張って、シェラちゃんとヴェラちゃんと泳げるようになるよ……!」

「その意気です」

「がんばろー!」



 うん。実に個性的だ。

 賑やかでよろしい。

 まあそれはそれとして、だ。



「皆、最初の仕事だ」



 私がそう言うと、皆一斉にこちらを向く。



「どうやら、敵が来たようだ」



 王都から港へ向かう街道の一部。山の中を通り過ぎるここは、山賊達の狩り場でもある。

 もちろん、ここをルートに組み込んだのは、彼ら山賊を討伐するためでもある。

 気配を探れば無数の賊達がこちらへ向かってくるのが感じられた。遠くから雄叫びや武器を鳴らしながら走る音も聞こえる。



「各位、戦闘開始。存分に暴れてくれ」



「「「「「「了解!!」」」」」」


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