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夢を叶えるため

 

「私をお呼びかな、魔王とやら。とりあえずここでは邪魔だろうし、外でやり合おうか」

「━━━━━ッ!?」



 魔王の背後から接近し、その首を掴んで投げた。こう、ぽいっと。

 魔王の巨躯は城壁の外に消えた。



「……隊長」

「無事だな」


 ジークを一瞥する。

 見たところ大きな傷はない。



「ここまでよく持ちこたえてくれた。ここからは私がやろう。……安心して待っていてくれ。大丈夫。私は、負けない」



 城壁の外から、絶大な怒気と殺意が放たれた。

 そこに向かって走る。そして飛ぶ。

 壁を越えて着地し、魔王と向き合った。


 ……良い体をしているじゃないか。

 しかし、まあ……私の好みではない。

 あくまでも一見弱い存在に辱しめを受けることが私の性癖なのだから、三百六十度どこから見ても強そうな相手はストライクゾーンから外れている。

 ゴブリンから魔王になった存在とかだと許容範囲内だったんだけどなぁ。



「貴様が、王国最強の騎士とやらか」

「いかにも。王国騎士団二番隊隊長アリナ・セロコークだ」

「我は魔王ハザフ。手合わせを願おう」



 魔王ハザフは剣を構える。

 二刀流。使用者の体が巨大であるからか、握る剣も長大だ。凝った造りを見るに、さぞや名のある名剣なのだろう。



「貴様……剣を抜かぬのか?」

「もたないんだ。『無剣流』だよ」

「くだらん。慢心しているのなら、死をもって後悔するがいい!『断風(たちかぜ)』!!」



 火剣流の飛ぶ斬撃!しかも並のそれとはレベルが違う。もはや斬撃ではなく、ビームか何かだ。

 なるほど。魔王を名乗るだけはある。

 なら。



「ほい」

「!!!!!!??????」



 より強大な飛ぶ斬撃を、手刀で放つ。



「『うずまき』!!」



 受け流された斬撃が、ハザフの背後の大地を割る。



「……なんだ、今のは。魔法か?」

「私は魔法使いじゃない。ただの、『断風・無剣流バージョン』だ」



 剣で使うことを想定して作られた技の数々を、できる限り手刀で再現したのがこの『無剣流』。

 足りない分は、気合いと努力とその場のノリで押しきる。



「ぬぅ……ッ、ならば『辻斬舞(つじざんまい)』!!」



 遠距離では同じ結果に終わると考えたからか、ハザフは一気に距離を詰める。

 放ってきたのは火剣流の技、十字の斬撃。しかも二刀流だ。単純威力も二倍……いや、素のフィジカルが常人とは比べ物にならないから……まあ、計算しても意味はないか。



「我が連撃で切り刻む!!」



 いいや、無理だよ。何故ならこの勝負、ここで終わりだ。

 この剣速なら問題ない。

 連続斬撃を回避して、左右の剣の腹を両手で殴る。魔王の両腕が、弾かれた剣に持っていかれた。胴体が、無防備となる。



「とどめだ」


「がッ……はァァァァァッ!!??」



 両手で防ぐことはできず、攻撃体勢に移行してしまっている魔王ハザフに体勢や技の修正は不可能。よってこの蹴りは命中する。

 ゴブリンの長に間違えて放った時とは違う。ちゃんと力を込めた蹴りだ。

 狙いはみぞおち。

 結果、ハザフの肉体、その六割近くを吹き飛ばすのに成功した。

 とはいえ、相手は魔王だ。これぐらいじゃ死なないだろうし、そのうち再生するだろう。

 ただまあこれならしばらくはもう全力を出せまい。

 首から上だけになって転がったハザフが言った。



「……何故だ。それほどの力を持ちながら、何故貴様は、剣を持たない……!?」

「剣の方がもたないんだ。私のフィジカルに。だから手刀で闘うしかない」



 身体能力を極めたら、武器がついて来れなくなった。わざわざ剣に忖度して戦うよりは、体で戦う方が強い。忖度するのは人間関係だけで十分である。



「……なん……だと……。剣の方がついてこれない……とは。く……くははははっ。なんということだ。我は魔王と成り果ててなお、最強にはまったく届いていなかったのか。……聞かせてくれ、アリナ・セロコーク。貴様は何故そこまで強くなったのだ」

「夢を叶えるためだよ」



 王国最強の女騎士になって、肉体的に圧倒的に劣ってるゴブリンから辱しめを受けてダブルピースをキメるという夢。それを叶えるには、まず最強にならねばならなかった。


 なのでずっと努力し続けてきた。一日だって休むことなく。雨の日も、風邪の日も。


 いつか夢を叶えるその日まで、私は最強で居続ける。



「……夢、か」



 ハザフはそう呟くと、どこか懐かしそうに笑った。

 ふと、興味が湧いた。何故彼が突然この都にやって来たのか。何故私に挑んだのか。



「魔王ハザフ。お前の方はどうなんだ。夢はなんだい?どうして、最強に固執したんだ?」

「……それは━━」



 その先を、私は聞けなかった。

 次の瞬間、ハザフの顔が消失したからだ。

 いや、焼失した。

 空から降り注いだ閃光の熱によって。



「間に合った……わけじゃ無さそうだね」



 ザッザッザッ、と規則正しい足音をたてながら、一つの軍隊が行進していた。

 日光を浴びて、鎧がキラキラと光り眩しい。

 その最前列に、彼はいた。

 魔王が闇の極致なら、彼は光の極点だった。

 他の騎士達の輝きを全て集めても、彼に劣るとすら思わせる。

 黄金の髪、碧い瞳、輝く春の陽気のような、生気に満ち溢れた肌。煌めく白銀の鎧纏う英雄が、そこにいる。



「その気になれば、貴方は国土全てに攻撃を届かせることができる。単に、間に合わせなかっただけでしょう。


 ……パーシアス・イージス総代騎士長」



 王国騎士団一番隊隊長にして総代騎士長。

 ラウンズ王国最速の騎士。

 パーシアス・イージスが、教国との戦争から帰還した。


【ステータス】

魔王ハザフ

攻撃力AAA 耐久力AAA 敏捷性AAA

技能AAA 魔力EX 特殊戦闘力E

特記事項『二刀流』『火剣流免許皆伝』『水天流免許皆伝』『魔王化』

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