0098
0098
あれから更に四日が立ち、この四日間に他国の王を交えての会談が二回あった。既に会談に参加していた国との軍事同盟が締結し、現在の大陸での最大規模の軍事同盟となった。そして私は現在女性だとわかったエリオットの部屋にいる。ルカやネラは宿に泊まっているらしいので一度もあっていない。
「それで?ほかに解決法見つかった?」
「空いている時間に図書館に行っていたのだがやはりエリオットが言った以上のものは無かったな」
「だろうねー」
「あれから一度もクリスと会っていないからな。嫌われてしまったのだろうか?」
「でも今日呼んだら来るって言ってたからそんなことないと思うよ?」
「ならいいのだが……」
そんな話をエリオットとしていると、扉が開かれクリスが中に入ってきた。
「お、クリス来たんだね」
そんなエリオットの言葉も聞かずに、ケイの目の前に立つ。
「クリス?」
そして私の意識はここで途切れる。
「え!?クリスなにしてんの!」
クリスがケイの腹を殴り、ケイを気絶させた。今はこけそうになったケイを肩に背負っている。
「その…だな……キスをするのは……いいの…だが…」
「?」
「ケイに見ていられるとどうしてもできない…だから……」
「気絶させたと?」
クリスが顔を赤くしながらコクリと頷く。
「で、では私は自分の部屋に戻る……」
そしてクリスはケイを肩に担ぎながらエリオットの部屋から出て行った。
「強引?あれは強引に分類されるのかな……」
~~~~~~~~~~~
肩に担いでいたケイを、ベッドの上に寝かせる。
「少し…強引だったか……」
しかし起きている相手にキ、キスをするというのはいくらなんでも……いや!世の中のファーストキスもこのような物のはずだ!
「むぅ…心の準部はしたはずなのだがやはり本人を目の前にすると緊張するな……」
抵抗は無いのだがやはり恥ずかしい。何故抵抗がないのか?と聞かれれば答えられる気がしない。ダークエルフとしては赤ん坊にも等しい程度しか生きていないがこのような気持ちになるのは初めてだ。
「くぅーー!!やはり恥ずかしい!」
だが、早くしなければ起きてしまう。それに魔力をケイの魔力に合わせるのに時間も必要だ。
「や、やるか……」
そしてクリスは気絶し、完全に意識を手放しているケイの顔に自分の顔を近づけ、口を―――
「ん、んん……?」
何故かわからないが長く寝ていた気がする。
「え!?クリス!!」
目を開けると、目の前にクリスの顔がある。
「ケ、ケイ!!」
「おはよう、でいいのか?」
「い、いや今は夜だからな」
「じゃあ違うか」
「あ、すまない」
ネラがケイの上からどくと、ケイは体を起こす。何故かわからないがすこし腹が痛い。エリオットの部屋に入ってからの記憶が消えているようだ。
「ここは…エリオットの部屋じゃないな」
「そうだな。ここは私の部屋だ」
「なんで俺はクリスの部屋にいるんだ?」
「それはだな。ケイが魔法の影響下にあったためにそれを解くために私の部屋に連れてきたのだ」
「それは覚えているんだが……」
意識魔法を発動中に何らかの魔法の影響で意識分裂のもう片方の意識に完全に感情が芽生えたこともケイは理解している。
「しかし元のケイに戻ってくれて本当に安心した。もし戻らなければどうしようかと思っていたぞ」
「それはクリスのおかげだ。図書館で調べもしたが魔法を発動した魔道具か発動者を破壊するとかがほとんどだったからな」
「確かに図書館ではその程度のことしか書いていないない本がほとんどだろうな」
「そうなんだよ。だからクリスは一体どうやって解いたんだ?」
「ん?それはだな。ケイの体に少し傷をつけてそこから私の魔力を流し込んで魔法を発動している魔力を弾き飛ばしたんだ」
「傷?傷なんてないが…」
「ほら、少し腹が痛いだろ?今は回復魔法で治したのだが少しだけ傷をつけたからな」
「あーなるほどな。そうゆうことか」
「そ、そうだそうだ」
「じゃあ何かお礼をしないといけないな」
「お、お礼!?」
「そうそう。そうだな……クリス何か俺にしてほしいことはあるか?」
「してほしいこと!?」
「そんなに驚くことか?」
「そうでもないか……」
「そうだ!クリスが何かしてほしいことを思いついたら俺に言ってくれ。結構子供っぽい発想だがこれでいいか?」
「逆にそれ以上の物があるのか!?」
「いや、特に俺は思いつかなかったが……駄目だったか?」
「私はそれが一番いいと思うぞ。うむ」
「じゃあこれでいいか」
「ではもう帰るのか?」
「そうだな。エリオットに一声かけて帰る」
「では私もついていこう」
が、クリスが膝からガクッと崩れ落ちる。
「クリス!?」
ケイがベットから飛び起き、クリスの肩を持つ。
「だ、大丈夫だ。魔力を相当使ったようで少しめまいがしただけだ」
「立てるか?」
「いや、無理そうだ。急に魔力が減少した影響が出てきたな」
「じゃあちょっと我慢しろよ。よっと」
「へ?きゃう!?」
「あ、すまん。急すぎたか」
「い、いや大丈夫だ」
ケイが立てないクリスを俗に言うお姫様抱っこをし、クリスをベットに移動させる。
「ふぁ……」
「クリスさっきから顔が真っ赤だが大丈夫か?変な声も出てるし少しおかしいぞ?」
「そ、そんなことはない!!」
「そ、そうか。じゃあクリス助かった。ありがとな」
「うむ。この程度お礼を言われるほどじゃない」
「まぁまたな」
「うむ」