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界域と呼ばれる場所から帰ってくると、お互いに色々と疲れた俺たちは直ぐに自分の部屋に戻り寝た。風呂に入ろうかとも思ったが、何故かわからないがいつもより肌がきれいになっていたり髪からいい匂いがした。

そしてそれから二日がたち、今俺は帝国の帝城にいる。現在俺は執事服を着ており、国王様の後ろに控えている。他にも騎士などが数人いる。


「我がリベルタイン帝国皇帝。ファリーダ・リベルタインだ。此度の会談、帝国としても良きものにしたいと思っている」

「リハージ王国としても同じ思いです」

「それはよかった」


現在俺の目の前では双方の王による会談が行われている。会談というのも変かもしれないが、皇帝の中では黒雷のことを聞くために同盟を結ぶのは確定事項であり、内容を協議するために会談ということになっているのである。そして会談中に執事がいるというのも変な話ではあるが、武器を持っていないかなどだけ確認されると変な目で見られながらも入ることができた。きっと魔力の測定などもされただろうが、隠蔽魔法の【真実隠蔽(トゥルーハイディング)】によって魔力を隠しているため、一般人より少し多いぐらいの魔力しか見えないだろう。

話の内容を聞いているとどうやら賠償金については話が終わり、続いては同盟に関する話になっているようだ。


「してクリストファー王よ。こちらからも提案があるのだが、帝国と同盟を結んではもらえないだろうか?」


まさか帝国から同盟の話を切り出してくるとは思わず、クリストファーは少しだけ驚いたような表情を見せたが直ぐに何もなかったかのように真顔になる。帝国と言えば同盟を結んだ記録は歴史的にもあるが、非常に稀だ。同盟を結んだとしても直ぐに破棄される。帝国が発する同盟という言葉にいいイメージはないだろう。


「同盟というと?」

「その名の通りだ。同盟という名の属国化でもなければ一方的な搾取でもない。きちんと双方に利益のある同盟条約を結ばせていただきたい」

「……その答えは今すぐにでも出した方がいいのか?」

「そんなことはない。クリストファー王さえよければ再び会談を開けばよい」

「こちらとしても同盟には賛同しますが内容を聞かなけらば首を縦に振るわけにはいきませんな」

「で、あろうな。ではリハージ王国、いやこの大陸にいる誰もが驚くであろう情報を教えよう。同盟条約の具体的な内容も言おう」

「それほどの情報を帝国は持っていると…?」

「それをリハージ王国のクリストファー王を信頼して教えるのだ」

「それはありがたい」

「この程度同盟になればいくらでも共有しようではないか。そしてクリストファー王よ。完全に信頼のおける人間以外はこの部屋から退室願おう」

「その必要はない。このような重大な会議で信頼できない人間など入れるはずもない」


クリストファーの言葉にファリーダがチラリとこちらを見たような気がしたが、ファリーダは話を続ける。


「ならば言おう。貴国の隣国であるレイスタン聖王国で勇者の彫刻魔方陣が確認された」

「なに!?!?」

「既に魔法は発動されているようだが、貴国の勇者召喚と違い直ぐには召喚されていないようだ。しかしそれも時間の問題だろう。新たに勇者が召喚されることに変わりはない」

「申し訳ないがそれを直ぐに信じれはしない」

「そうであろうな。そして他にもあるのだがレイスタン聖王国は元来から人間至上主義、または反亜人主義だが近日更にその傾向が強まってきている」


ファリーダの言う通り、クリストファーもレイスタン聖王国が反亜人主義が更に強まってきているのを感じている。亜人を殺すことや捕らえることはしていないが、レイスタン聖王国内にいる全ての亜人を追い出し村を焼き払っている。レイスタン聖王国内に住んでいる亜人はほぼゼロに近いだろう。


「確かにそのようなことがあることは感じている」

「そして反亜人主義が強まってきている理由だが、前教皇がどうやって死んだか覚えているだろう」

「前教皇は誰にも分け隔てなく等しく優しいまさに生きる聖者だったが、他国に赴いている途中に亜人に殺されたはずだ」

「その通りだ。そして現教皇はその娘だ。前教皇と同じ馬車に乗っていた母親も亜人に殺され、現教皇の暴走を抑える者はいない」

「しかしそれは自国だけでは?我が国としてはジ・アーを発動してまで亜人を殺しに来るとは到底思えない」

「ジ・アーも確かに問題ではあるが、貴国としては勇者召喚の彫刻魔方陣が他国に渡ったことを一番に問題視しなければ行けないのではないか?」

「現教皇が暴走しているとはいえ、流石にワールドメモリーは読んでいるだろう。もし他国に渡すようなことがあればもはやそれは魔王と変わらない。世界を破壊する者と同じだ」

「それは他国に彫刻魔方陣が渡る、またはもう一度勇者召喚をしたのならレイスタン聖王国を攻めると言っているのか?」

「それも致し方ない。勇者とは魔族に対しての戦力であり、決して亜人や敵国に向けるものではない」

「それは素晴らしい心がけではあるが、レイスタン聖王国の近隣国家で一番亜人を抱えているのは貴国だ。そしてレイスタン聖王国の隣国というだけあってセルレイ教の信者も国民の半数は信仰しているだろうな」

「……では同盟の内容は?」

「実に簡単。我が国は複数の国を従えている。属国だ。そしてもしもリハージ王国が傾くようなことがあれば直ぐにでも助けを出そう。食料はもちろん、他国に攻め込まれているのならば属国とともに精鋭の軍を送ろうではないか」

「では我が国もリベルタイン帝国と同じ様な内容にしよう。残念なことに我が国には属国というものが無いのでな。そこだけは許していただきたい」

「それはもちろんだ。再び詳細を決めたいために会談を我が属国の王も含めて開きたいと思っているのだがいいかね?」

「もちろんだ」

「では後日再び会談を開こうではないか」


皇帝がケイに向けていた笑みと違う笑みを浮かべていると、皇帝は何かを思い出したかのように口を開く。


「そういえばクリストファー王よ。此度の戦争で貴国の軍にいた黒雷と呼ばれる者だが、あの者は冒険者なのか?」


皇帝が自分のことを話題にしてきたために、少しだけケイは動揺してしまうが直ぐに動揺は消え、二人の王の会話に耳を傾ける。


「黒雷は冒険者であったはずだ。我が国の軍にあのような者がいればどれほど心強いか」

「そうか……何か黒雷について知っていることはないか」

「重要な情報を我が国にくれたのだ。喜んで答えよう。といっても我が国でもさほど情報はつかめていないのだが……」

「どこかの国に属しているというわけでもないのだな?」

「それすらわからない。黒雷は男であり、年齢が十七ということしかわからない」

「ではクリストファー王よ。ケイという名前に覚えはないか?」


クリストファーが考えるそぶりをし、再び皇帝の方を向き答える。


「申し訳ないがわからないな。夜阿ノ國の者か?」

「いや、知らないのならいいのだ」


皇帝が何か満足そうな顔をし、皇帝がこちらを見て前に見た獰猛な笑みが見えたような気がした。


この世界の情報

彫刻魔方陣 スキルではなく、地面や壁に魔方陣を彫る。または書き、魔方陣に合った魔法属性の魔力を流し込むことにとって魔法が発動する

レイスタン聖王国の情報

前教皇 生ける聖者と言われ、教皇でありながら反亜人主義者でもなければ人間至上主義者でも無かった。レイスタン聖王国で生まれ育ったはずだが、あの性格になったのは奇跡だと言われている

現教皇 父親と母親を亜人に殺されたため、前教皇とは真反対の反亜人主義者である

スキル説明

真実隠蔽 隠蔽魔法の唯一の魔法であり、唯一の魔法でありながらもいくらでも応用が利き、超万能な魔法


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