0082
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とある森の中の廃教会
既に何十年も前に捨てられ、今では魔物の巣窟となっているその森の教会の屋根には一人の男が座っていた。
「あいつ遅すぎんだろ。情報くらい商人脅して吐かせりゃいいのによ」
「それは僕的に嫌なんだよねー」
白い翼をもった男が空から降りてくる。
「あ?別にいいじゃねぇか。殺すわけでもねぇし盗むわけでもねぇんだからよ」
「人間は一部を除いて弱い存在だからね。少し脅した程度で精神が壊れる者もいれば恐怖によって泣き叫ぶものもいる。レクス的にはいいのかもしれないけど僕的には微妙な心境になるわけだよ」
「もう何回それを聞いたかわかんねぇよ」
「はは。そうだね」
「で?あの戦争の結果は?」
「うーんどうやら戦争は一日で終わって帝国がひいたらしいよ」
「は!?一日で終わったのか!?」
「そうらしいね。で、この戦争は黒雷戦争って呼ばれてるらしいよ」
「なんだその名前」
「えっとリベルタイン帝国の皇帝が白銀の女帝って呼ばれてることは知ってるだろ?」
「それはもちろん」
「で、皇帝が城を呼び出したそうなんだけど、その城を破壊した者がリハージ王国にいるらしいんだ」
「破壊?あのバカでかいのをか?」
「らしいね。しかもリハージ王国の兵によると黒い雷が城に十も落ちて結界も破って城を破壊したらしい」
「だから黒雷か」
「そうそう。でね?その雷を落とした人が問題なんだけど。悪魔のような翼と尻尾を持っていたらしいんだ。兜にも角みたいなのがあったらしいけどそれは本物かわからないからね」
「悪魔。ねぇー。龍人じゃねぇのか?」
「可能性としてはあるね。空を飛んでいてよく見えなかったらしいし」
「そいつが別に悪魔だろうが龍人だろうが別に俺らの邪魔しなかったらどーでもいい」
「そうだけど少し興味があるだろ?」
「……」
「また何かあったら集めといてあげるよ」
ははっと笑う男に対して座っていた男の方は何とも言えぬ顔で頬をかいていた。
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リハージ王国王城
「まさかあれほどとは……」
帝国との戦争で負けたのではなく、勝ったわけでもない王国だが、帝国との戦争で一つの都市も落とされなかったことは大きく、更に軍が壊滅もしていないことは他国から見ても凄いことだろう。しかし、国王を含めた王国の幹部たちは皆一様にいい顔をしていない。
その部屋にある画面はとてつもない魔力が吹き荒れたことによって砂嵐になっている。しかし、出陣していた王国竜騎団長によって団長の知りえる情報が全て国王たちに横流しにされていた。もちろんその中にはケイが皇帝の城を一撃で破壊したという内容も含まれている。
「一つ聞くが騎士団長や戦士長は一撃で噂の城を破壊できると思うか?」
国王のその問いに、二人は苦い顔をして答える。
「正直に申し上げますと不可能です。精霊の力を借りたとしても城壁か結界を破壊できれば良い方かと」
「城の大きさもとてつもなく大きいようですし、物理的に戦士系統の者では一撃で破壊はできないでしょう」
「そうか……。王都の結界はあれで破壊できると思うか?」
ケイの魔法は皇帝の城の結界を破壊した。ということは王都の結界も破壊できてしまうのでは?という王なら必ず抱く疑問だ。
「それはわかりませんが不可能でしょう。あの結界を作られたのはバレン様なのですから」
「あぁそうであったな」
「空間魔法の神ともいわれるあのお方が作られた魔道具です。心配はいらないでしょう」
「そうです。今はそれよりどうやってケイを使うかです」
その言葉によって再び皆が黙る。
「会議中に申し訳ございません」
部屋の扉が執事長が入ってきたことによって開けられる。
「どうしたのだ」
「帝国の使者様が来ております」
「……なに?」
この世界の情報
黒雷戦争 一日で終わった戦争。帝国で黒雷と呼ばれる人物が初めて世界に認知された
黒雷 ケイが操る神雷魔法からつけられた二つ名
白銀の女帝 ファリーダが操る月魔法からつけられた二つ名
レクス (不明)
バレン (不明)