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皇帝は名乗りを上げるとともに魔法を発動する。魔方陣が手に現れ、月のような色をした剣が手に握られる。


「これで死んでしまえば期待外れもいいところだ」


そして縦に振り下ろすと銀色の刃が地面を削り、豪速で飛んでくる。ケイは刀に魔力を纏わせ、大太刀に変える。


「【一閃】」


大太刀に変えたことによって攻撃力が増し、銀色の刃を横に切る。


「【月虎(げっこ)】」


次は皇帝の両隣に巨大な銀色の魔法陣が現れ、そこから銀色の虎が二匹飛びだしてくる。


「【千切り】」


二匹の虎が飛び掛かってくるところで、二匹同時に切る。


「【月兵(ムーンソルジャー)】【月弓兵(ムーンボーマン)】【月騎兵(ムーンキャヴァルリー)】」


虎を真っ二つに切ると、皇帝が更に魔法を詠唱する。すべて唱えると、皇帝の後ろに五百ほどの巨大な魔方陣が地面に現れ、そこから銀の鎧に銀の肌を持った兵たちが現れる。弓や、剣。馬までが銀色であり、銀ではないのは真っ黒な目くらいだろう。


「撃て」


皇帝が一言いうと、銀の軍から流れ星のように光りながら、曲線を描いてケイに矢が飛んでくる。ケイは渦を複数出して吸収しようとするが、矢が渦に触れた瞬間に派手な音を立てて爆発する。


「チッ」


矢が爆発するとわかると、上空に飛びあがる。


「《銀の兵を殺せ》」


空に飛んだため、攻撃できるのは弓兵だけになった。そしてそこに魔物で攻撃を仕掛ける。空を飛んでいるフライスネイクの方が有利なようだが、銀の兵士が剣を振ればそれだけで刃が飛ぶ。こちらの方が数が多く、復活が可能だからよかったが、それでも少し押されている。


「数の前ではこの程度の質では駄目だな。では我も数を増やすとしよう」


皇帝が銀の兵に守られながらそう言うと、ライアーとカルロが叫びだす。


「おいカルロ!!直ぐにジランに魔力を飛ばせ!!陛下が国を作る!!」

「わかってる!!もう魔力を飛ばした!!」


するとライアーの隣に男が現れる。


「いやーまさか陛下が国を作るとはなー」

「陛下が国を作る前に早く飛べ!!」

「了解了解。【転移付与】」


おそらくジランと思われる男の下に魔方陣が現れると、帝国軍人の足もとに魔方陣が現れ、次の瞬間には死体を一つも残さずに帝国軍全てが消えた。


「エリオット君これはまずい。すぐに下がった方がいい」

「え?え?」


スカーロは影移動を繰り返してそこから離れ、エリオットはスカーロに言われた通りに離脱する。王国軍はいまだ放心しており、動いていない。


「【月の国(ムーン・カントリー)】」


上空から見ていたケイは、帝国軍がすべて消え、皇帝が何かを唱えたところしか見えていなかった。



戦場だったそこには、白く輝き、汚れが一つもついていない巨大な城が現れる。城は約四キロほどの大きさがあり、魔法の城のはずがなぜかしっかりとした庭まであり、城壁には複数の兵士や大砲のようなものまで確認できる。


「撤退!!全軍撤退せよ!!」


放心していた王国軍は強制的に意識を戻され、指揮官たちは即座に撤退を命令する。空を飛んでいたケイの隣には、ネラが影転移で飛んでくる。


「ケイ。私達も撤退するべきよ」

「だろうな。城自体が魔力を発してる」

「魔物も魔力で吹き飛んじゃったしあれはどうしようもないわ」

「いえ、どうにかなるかもしれませんよ?」


聞き覚えのある声が聞こえ、後ろを振り向くと、執事服を着た男が飛んでいた。


「あんたは!?」

「お久しぶりです」


バッドがとても綺麗で、精錬されたお辞儀をする。


「バッド。どうしたんだ?」

「主が連れてこいとのことですので少し時間を頂戴したいと」

「今は無理だな。ネラがいる」

「それなら問題ございません。許可さえ頂ければ直ぐにご友人の元へ転移させていただきます」

「……それなら俺はいいがネラはどうだ?」

「私も別にいいわよ。あんたがいればケイが危なくなるなんてことないでしょうし」

「ありがとうございます。では転移を使わせていただきます」


バッドが指をパチンと鳴らすとネラの足もとに魔方陣が現れ、ネラの姿が消える。


「さて、私達も行きましょうか」

「そうだな」


そしてケイ達の姿も上空から消えた。


~~~~~~~~~~


「きたか」


転移すると前のように長い廊下があるのではなく、目の前にはヴァイスがいた。ケイは兜を外して消す。


「お連れしました」

「おう。結構早かったな」

「他の仲間は多分うまく逃げてるからな。でも早く帰らないとまずいかもしれない」

「それは気にすることはない。この空間に入った瞬間から時間魔法で進みをここだけ早くしてるからな」

「そうなのか」

「そうだ。魔法はラヒネ様に頼まれて俺とバッドで開発したやつだからな。効果に聞いて驚けよ?」

「お、おう」

「まず魔法の属性だが、神雷魔法(しんらいまほう)だ。お前の開発した闇雷魔法を基盤にしてる。あまり知られていないが雷魔法は光魔法と火魔法の複合魔法だからな。更にそこに天候魔法も複合させた。複合させるのに結構手間取ったがまぁできた」

「やっぱ魔法の開発って難しいんだな」

「当たり前だろ。でだ。魔法名称は【神の雷(ゴッド・ドナー)】」

「神の(いかづち)か。仰々しくないか?」

「神に作れと言われたんだからそんなこともないだろ」

「それもそう……なのか?」

「そんな名前を気にするな!問題は効果だ。ちっちゃいのを作ってやろう」


ヴァイスが手を前にかざすと、黒い雲が現れる。


「おぉ……」

「この魔法は魔方陣が黒い雲に隠れてるから見えない。雲を上空にもっていけば雨だって降らせる。この魔法の魔力を使うところは雲を作り出す時だけだ。自分の魔力で作ってんだから自由に動かすこともできるし、この魔法自体が雷を発生しやすくしているから少し魔力をためてやるだけで」


ヴァイスが指を下にスッと動かすと、黒い雷がピカッと光り落ちる。


「この雷はただ落とすだけじゃない」


更に指を使い、ピカピカと黒く光る日本の龍のようなものを作り出す。


「元々嵐があろうが豪雨が降っていようが魔法は発動できる。雲を攻撃されたとしても雲の中には数万の魔法陣があるから問題ない」

「それはわかったが俺が発動できるのか?」

「……無理だ。お前の魔力量じゃ戦場を埋め尽くすほどの雲は作れない。ギリギリまで魔力を使ったとしてもお前のいる国の王城の二倍程度の雲しか作れない」

「魔力回復水で回復しながらだったら発動できると思うか?」


ヴァイスが考えるように顎に手を当て、しばらくすると目線を戻す。


「ケイ。魔力回復水を何本持ってる」

「十七本だ」

「バッド。これを使って上位以上の回復水を作れるか?」

「可能です」

「ケイ。魔力回復水を全部出せ」

「わかった」


ケイは渦からすべての回復水を取り出す。そしてバッドが指揮をするように手を動かすと、蓋が全て空き、中から液体が出てきて空中で一つになる。そして薄く光り、光の大きさが小さくなる。そしてその光が一つの瓶に入ると、蓋が閉まる。その瓶をバッドが手に取る。


「これでできたはずです」


バッドの手にある魔力回復水は、完璧に透明であり、薄く光っている。暗闇の中でも分かるかわからないかほどの光だ。


「どうぞ」

「すげぇな」

「この程度誰でもできますよ」


バッドは真顔で言いながら瓶を渡してくるが、流石にこれが誰でもできる物とは思わない。


「よしケイ。手を出せ」

「こうか?」

「あぁ」


前に出した手にヴァイスが魔方陣を作ると、その魔法陣がケイの手の甲に焼き付けられるかのように入っていく。


「これで覚えられたはずだ。無理やり覚えさせたから神雷魔法を使ったらしばらくはまともに魔法が使えなくなるはずだ。それとだがこの魔法は俺でさえうまく操れない。あの戦場全てを覆いつくすほどの雲ともなれば暴走して雷を放出しまくる可能性もあるから気をつけろよ」

「気をつけようなくないか!?」

「大丈夫だ、何とかなる。バッド。送ってやれ」

「分かりました。それとケイさん」

「なんだ?」

「魔法を発動する前に必ずその魔力回復水を飲んでください。発動してからでは手遅れになりますので。それとですが飲んだ際に少々激痛と肌が破けたりなどがあると思いますが正常な反応なのでお気になさらず」

「え……?」

「よし!行ってこいケイ!!」

「ではお送りいたします」


今度はケイの足もとにだけ魔方陣が現れる。そしてヴァイスとバッドの目の前からケイの姿が消えた。


スキル説明

月魔法  光魔法と闇魔法の複合魔法。ファリーダのオリジナル魔法

月虎   月の虎を呼び出す魔法。虎は王級にぎりぎり届く程度の力を持っている

月兵   月の兵を呼び出す魔法。複数いれば問題なく王級を討伐可能

月弓   月の弓兵を呼び出す魔法。防御力はないが、一人一人が爆発する弓を持っている

月騎兵  月の騎兵を呼び出す魔法。ゴブリン程度なら馬でも何匹も殺せる

月の国  大きな城を作り出し、魔術師や魔物。複数の種類の兵を呼び出す

神雷魔法 ラヒネの頼みにより、ヴァイスとバッドが生み出した魔法。とてつもない威力を持っている

神の雷  天から雷を落とし、その雷を自由に操ることができる

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