0075
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ティーラに会ってから四日後。あの後ネラにいろいろと聞かれたなんとが重要な部分はばれないように説明をした。少しだけ納得できないような部分もあったようだが今はこれでいいだろう。そして王都から国軍がヘリサスに到着した。商人の噂によると帝国軍が既に平野におり、夜になると土でできた壁ができ、壁の外は堀のようになっていたそうだ。
宿から出て外に出てみるとほとんど軍の関係者や冒険者しかおらず元々住んでいたものは一時的国軍と入れ替わるように王都に向かっていった。シュレイムによると扉を破られるのは確定なのだそうだ。酷ければ城壁が崩壊させられる可能性すらあるとまで言っていた。
もちろん今の時代大きな町や重要な街には大規模な結界が張られているがそれすらも破る可能性を秘めているのが帝国幹部のようだ。それとこれはついでに聞いた話なのだが、結界が張られていなければ殲滅魔法か広範囲魔法さえ使えれば一発で城壁は意味をなさなくなるそうだ。
そして今。目の前ではいつもどうりとてつもない量の飯を食らっている。ネラも俺の隣で俺の隣にいる人物を見ていた。
「ん?なんで黙っているんだい?」
「逆に聞かせてもらうが何でここにいるんだエリオット」
そう。その人物はエリオット。ネラからしたら初めて会う人物である。
ケイに負けたとはいえその強さは王国内では上位の者であり、それに比例して体内保有魔力量も一般人の保有魔力量を余裕も余裕で超えている。
「えーそれはもちろん戦争に参加するために決まってるじゃないか」
「それはそうなんだが……」
「君はどうしたんだい?そんなに僕のことを見て」
「いえ、なんでもないわ」
キサラギの持っている魔力に似ているところがあったけれど気のせいかしら?でも親族でもないんだからそんなことないわよね。
「じゃあ僕もここの宿に泊まるからよろしくねー」
「お前ほどのやつだったらもっと高いところ泊まれるだろ?」
「ふふ君が言ったら皮肉にしか聞こえないけどね」
「そんなつもりじゃなかったんだが……」
ケイは大会で優勝した時に莫大な賞金を得ているためにエリオットよりも金を持っている。
「わかってるよ。まぁ僕はここの宿を前も使っててね。ここはそこまで高くもないわりにご飯もおいしいし清潔感もある」
「そうなのか」
「君は他の宿にも泊ったことがあるだろ?」
「いや…ない……」
「え?」
「俺王城と領主様の館とここ以外に泊まったことない」
「半分以上が最上級の宿じゃないか。いや、宿じゃないけど」
「だからどれくらいが普通なのかわからないんだ」
「私も知らないわね」
「俺もだなー」
ここにいるのは異世界転移者、元王級魔物、上位精霊なのだからそれも普通なのかもしれない。
「君たち今までどうやって暮らしてきたんだい?家を持ってるわけでもだろ?」
「冒険者で家を持ってる奴いるのか?」
「いや、そんなことはないよ。家庭を持っているものもいればクランの拠点を持っているものもいるからね。ただの家ならば普通の大きさを買うだけでいいけどクランの拠点ともなれば相当大きなものが必要だからね」
「ねぇクランって何なの?」
「クランも知らないのか…。えっとだねクランっていうのはパーティーよりも記簿が大きいもので、人数で言えばもう少しで五千人にいくとこもあるくらいだよ」
「クランって作って意味あんのか?」
「んークランて言っても五千人にもなってくると大隊五つあるようなものだからねー。主な仕事は情報収集、大規模討伐、商団の護衛とかじゃないかな?まぁだから強ければ領主や大商人にも好かれるし国お抱えのクランもあるからね」
「国お抱えもあるのかよ!?」
「そうだよ。知らないだろうけど砂漠の蠍。雪の騎士血の猟兵団この三つは公式で国のクランよ。他にも国がクランを抱えているのはあるけれど十天団に属するのはこの三つだね」
「そのヘブン?に属するその三つはどこの国の物なんだ?」
「えーっと確かデザースコーピオンは帝王自ら率いる砂漠の帝国アシスア大帝国。スノーナイトは零番隊隊長率いる雪の王国リザリア。でブラッドハンティングコースが血狂いの王女率いる血花の王国ラティードかな」
「き、聞いたことがない……」
「まぁまた今度教えてあげるよ。僕はここに泊まってるからね」
エリオットはガタっと椅子から立ち上がり、手を振って自分の部屋に戻っていった。
「あ、それと明日には帝国軍攻めてくるらしいから準備しといてねー」
今度こそ本当に戻っていった。
「へーもうすぐで帝国攻めてくるのね」
「お、ついにか!」
「じゃあウォーミングアップでもしとくか」
「あんたらが戦ったらその場所吹き飛ぶでしょ」
「ネラも準備しとけよ?」
「私はもう万全よ」
「準備万端だな」
「私これでもレベル上げてたのよ?」
「だから昼どこにもいなかったのか」
「そうよ」
「じゃあ戦場で俺についてこれるか?」
「えぇ精霊の状態になるから大丈夫よ」
「ルカは冒険者として依頼に参加させといた」
「あう!あまうらたのひみらな!」
「食べながらしゃべるな」
「あう、しゅみゃう」
「んーネラ」
「なに?」
「元オークってだけで学習能力とてつもなく低くなるのか?」
「いえ、そんなことはないはずだけど頭の良さだけで言ったらこの間召喚したサファイアリザードマンはのほうがいいかもしれないわね」
ちなみに現在では王級の魔物は他の魔物よりも知能が高い個体が多いことが確認されており、指揮を執る固体やトラップなどを使う個体も発見されている。
この世界の情報
体内保有魔力量 対象の体内に持っている魔力量のこと
ブラッドローズ 非常に希少な花であり、絞ると血のような液体が出てくる。保有している魔力が多いために回復水作りに重宝される
クラン パーティーが10人を超えると創設ができ、クランマスターを主体に動く
クランマスター クラン内で最も地位があり、クランの重要な選択などの決定権はクランマスターにある
十天団 もっとも有名な十のクランの呼び名であり、名付けたのは聖王国の教皇
砂漠の蠍 アシスア大帝国の帝王自らがクランマスターを務めており、約五千人の精鋭がいる
雪の騎士 リザリア王国の零番隊隊長がクランマスターを務めており、零番隊の新参を一時的にクラン加えることもあるらしい
血の猟兵団 ラティード王国の王女自らがクランマスターを務めており、中には王城の料理人やメイド。果てには騎士団団員などもいる
アシスア大帝国 リベルタイン帝国よりも広大な土地と人口を誇っており、人口は約十八億人に達しており、元々住めるところが少なかったのだが天候魔法によって拡大しつつある
リザリア王国 場所によっては常に雪が降っているような国であり、人口はそこまで多くはないが軍の練度は大陸のトップを行く
ラティード王国 ドラキュラが持ってきたといわれるブラッドローズが大量に生産されている。この国では回復水が安く売っているため回復水を擦り傷に使うことすらある