0069
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スカーロがギルドから出て行くと今まで動きを止めて眺めていた人たちが動きだし、入れ替わるように見たことのある顔の鎧を着た男がギルド内に入ってきた。
「ここでとてつもない空気中魔力が見られたが何があった!!」
警備隊長のショーンだった。
「この人ともう一人の人が魔法を連発したので空気中の魔力が一気に増えたんだと思いますよ」
ルイナがショーンに向かって投げやりに魔力が増えた理由を言う。
「いやしかしこれほどの魔力が模擬戦で…?」
「半ば殺し合いにまで発展していたがけが人はいない。しいて言うなら結界師と回復魔法師の魔力が切れかかっているということだな。あとは練習場の損害が甚大すぎるといったところか。まぁ仕方がないだろう!私も模擬戦で熱くなってしまうこともあるからな!」
「ギルマス練習場の修復はどうするんですか~…」
「そんなもの時間魔法を使えるものか職人を雇うしかないだろう」
「どっちも資金が大量にかかるじゃないですか~…」
「それは大丈夫だ。あの賢者の男が資金を持ってきてくれるだろう。それにだ!今はそんなことよりケイ!賢者に勝つなんてお前やっぱりすごいな!今度はいつできるんだ!!」
「待ってください!また私の仕事増えるじゃないですか!給料も確かに増えてますけど仕事のほうが倍々で増えていくじゃないですか!」
ほとんど副ギルマスが仕事してるのか…。確かに数週間クリスギルドにいなかったからなー。うん。これは副ギルマスが可哀そうだな。
「クリス。仕事が全部終わったらいくらでもやってやるから仕事を全部終わらせろ」
「なに!本当か!本当だな!」
「あぁ」
「お前はなんていいやつなんだー!」
笑顔だったクリスの顔はさらにいっそう笑顔になり、クリスがケイに向かって抱き着いてくる。
ま、前の世界なら喜んだかもしれないけど流石にこの力は…。
「うーお前は私の永遠の大親友だ~」
「あ、ああ。少し大げさすぎる気もするがありがとう」
「そうかそうか!」
「それでなんだがクリス」
「ん?」
「ここ周りにいっぱい人がいるんだが…」
するとクリスの顔が目に見えて真っ赤になっていき、バッとケイから手を放し距離をとる。
「…約束だからな……」
「わかってるわかってる」
クリスはそらしていた目をケイのほうに向けると再び恥ずかしくなったのか目をそらして早歩きで二階に上がっていった。
「……」
クリスが去った後のギルド内の場が凍り、当事者であるケイが実に気まずいがその静寂を破った男がいた。
「結局さっきの魔力はそこの男と今はいなくなったやつの魔力ということでいいんだな?」
「あ、そうですね」
「練習場も領主様に資金を出してもらわなくてもいいのであれば報告だけにしておこう。あと一応その二人の名前は?」
「それは俺が言おう。ケイと闇の賢者のスカーロだ」
「闇の賢者!?お前がか!?」
「いや、俺はケイだ」
「ケイ?ケイって確か…」
ショーンが暫く考えたそぶりをすると思い出したのか声を出す。
「あぁ!あの馬鹿三人組を倒した銅級のケイか!」
「そうだな」
「にしては声も体も色々と変わってないか?」
「色々とあったんだよ」
「ん?ということは銅級のお前が賢者と戦ったのか?」
「そういうことになるな」
「しかもあれほどの魔力を出しまくってたのか?」
「まぁ魔法を連発しまくってたからな」
「かぁー!!やっぱり俺の目に狂いはなかったな!」
「あと俺は今金級だからな」
「本当か!?まだ一か月くらいしかたってないだろ!」
「本当に決まってるだろ」
「お前飯は食ったか?」
「いきなりなんだ」
「飯を食いながらどうやったのか教えてくれよ。おごってやるから」
「よし行くか」
「即答か」
「安心してくれ。オークキングほど馬鹿みたいには食わない」
「比較する相手がおかしいだろ」
この世界の情報
回復魔法師 回復魔法を使い、味方の魔力や体力を復元することが可能
結界師 結界魔法を使い。結界は能力低下、強化などもあるが基本的に敵からの攻撃を防ぐために防御に特化しているものが多い。ほとんどの王城のある都市には都市を囲むように大きな結界が張られている
空気中魔力 魔法を発動しきった後に空気中に残る微量な魔力のこと。あまりにも膨大な魔力を体内に保有しており、完全に制御できていない場合は存在しているだけで魔力災害を起こすものもいる。
魔力災害 魔法の行使による影響ではなく魔力だけで起こるものであり、今のところ引き起こせる生物は▲冠◇といわれる〇体だけである。
▲冠◇ 生きている災害と呼ばれ、強さの分類は測定不可能となっている。理由としては人類の歴史で討伐されたという記録もなく、今となってはその場にとどまりほとんど動くことがないために各国のそれぞれの部隊に観測、報告されている。この情報は各国の王や、軍、国の財を担う人物しか知ることが許されていない。
スキル説明
回復魔法 傷を治すことが可能であり、魔力を復元することもできる。極めたものは蘇生魔法を使うこともできる。
蘇生魔法 蘇生魔法のなかにもランクがあり、最上級のものは聖女が使うことができるとされている