0067
今回はガチ戦闘回です。会話は普段よりは少なめになっています。
0067
冒険者ギルド内
「おい、あれ暗黒じゃねえか?」
「うわ、まじじゃねえか…。あいつ王都に行ったんじゃねえのかよ…」
「お前知らねえのか?商人が言ってたじゃねえか。王都の大会であのエリオットを抑えて誰も知らねえ黒い鎧を着たやつが優勝したんだとよ」
「じゃああいつが優勝したのかよ!?」
「あんだけ真っ黒な鎧着てる奴は早々いねえだろ。しかも王都ではデビルって二つ名がついたんだとよ」
「どんなことをしたらそんな二つ名がつくんだよ…」
また俺のイメージが人間から離れて行っているような気がする…。いや人間じゃないけどさ?
「さて、早速やろうか」
「えっと魔法を使えばいいんですよね?」
「そうだね。一応試合なわけだし審判もいるだろう」
ケイが横を見るとルイナと目が合う。
「………」
「……わかりましたよ。私がやります…」
「それはよかった。ではケイ君行こうか」
「わかりました…」
冒険者ギルド練習場
練習場は大会で使った舞台ほどではないがそれの三分の一程度の大きさだ。これでも相当に広いために、冒険者ギルドの財力が相当あることがわかる。
元々練習場にいた冒険者達は、練習場を囲むように設置されている椅子や机に座りながらケイ達を見ている。そして。
「ケイーー!模擬戦をすると聞いたから仕事を放り投げて見に来たぞ!!」
クリスが見に来た。片腕には福ギルマスであろう人が仕事に戻そうとしているがクリスは全く動かない。子供と大人のようだ。
「君は多くの人に好かれているようだね」
「そ、そうですね…」
「はぁ…。これからルールを言います。ルールは相手を殺しさえしなければ何でもありです。ただし、勝敗はこの私が決めますので危険な状態に陥りそうになった場合は即中断させていただきます。もちろん降参するのもありです。双方いいですか?」
「あぁ」
「問題ない」
「では…開始!!」
[ドヒュッッ!!]
[バキッッ!!]
ケイは無詠唱で身体強化と意識分裂を発動し、大太刀を斜め上から下に振り下ろす。身体強化を発動し踏み込んだために、地面にひびが入る。経過時間一秒未満。
[ガギンッッッ!!!]
しかしスカーロは何事もないように防御魔方陣を展開し、攻撃を防ぐ。暴風が練習場に巻き起こる。そして防御魔方陣を残したまま影移動を使い、ケイの影に現れ手に黒い短刀のようなものを出しケイの首を狙う。
ケイは闇の矢の魔法陣を五個、自分事突き抜けるような速度でスカーロのうしろで発動させる。
スカーロはその矢に気づくと、即時に矢が当たる場所から横に移動する。残ったのはケイだが、ケイは自分の魔力を、無理やり外に放出し、四本の矢の魔力を乱し崩壊させる。経過時間五秒。
一瞬魔力を放出するのに固まったケイに対して、両手に短刀を十本出し、投げつける。ケイは残った一本の矢を右手でつかみ取り魔力を流し込み刀のような形に変化させる。
その刀で短刀を全て弾き飛ばす。すると刀が形が崩れる直前に刀をスカーロに投げつける。スカーロはその刀に含まれている魔力を感じ取ると、短刀を刀の切っ先にあて破壊した。すると刀は爆発し、紫色の煙のようなものを
大量に出し、スカーロの視界を塞ぐ。スカーロはわざと魔力が暴走するような魔方陣で闇雷魔法を発動する。赤黒い雷は爆発し煙を吹き飛ばす。
すると目の前にはケイが左右に十個ほどの魔法陣を展開していた。ダークアローの魔法陣だ。そして矢が一気に放たれる。二十個ほどの魔法陣では避けるだけで問題はなかったが、スカーロはその後ろに重ね掛けされて発動準備をしている魔方陣も見ていた。そのためスカーロも防御魔方陣を重ね掛けで展開する。
二十本放たれるとその後ろにある魔方陣から矢が放たれる。一枚目の魔法陣の後ろには四個の魔法陣があり、一目見ると二十個だが展開されている魔方陣の数は百個だ。
さながら二十個のガトリングガンから撃たれているようなものだろう。弾き飛ばされた矢は地面をえぐり、消えていく。それを一秒で二百回ほどしているのだから防御魔方陣の周りは地面がぼこぼこで砂ぼこりが舞いに舞っている。
スカーロの防御魔方陣は一枚目は既に何回も割れているが、二枚目三枚目はまだ割れていない。しかし、魔力を注がなければすぐにすべて割られるだろう。そこでスカーロは一気に防御魔方陣を十個展開し、魔法を発動させる。
「【闇雷針】」
防御魔方陣が五枚のところで地面に魔方陣が展開される。
[バチバチバチバチバチッッッ!!]
そして防御魔方陣がなくなると地面の魔法陣から赤黒い雷が矢に向かっていく。
[バババババババババッッアン!!!」
そして雷はすべてにぶつかっていき、ぶつかった矢や雷は次々と空中で爆発していった。雷は寸分の狂いもなく次々と矢を爆発させていく。
スカーロは賢者ではあるが一秒で二百本以上放たれる矢すべてが見えているわけではない。闇雷針とは自動迎撃魔法なのである。そのためここにいる間は殲滅魔法でも撃たれない限り安全であろう。そして再び影移動でケイの後ろに移動する。経過時間十九秒。
もちろんケイは影移動を一度見たのでもう一度影にとんでくるだろうと予測していた。スカーロがとんだのは影の位置でケイの横にとんだ。そして目線だけを横にサッとむけてみると黒い木が七本ほど生えていた。そしてケイの視線がこちらに向く。
「【一閃】」
ケイがいま振るおうとしているのは魔剣。そしてその魔剣で技を使ったのだからその時点で防ぐという選択肢は無い。そのために上に跳んだ。暴風のような風が練習場から飛んでいく。そして横に振るわれた大太刀の上に乗り、バチバチと雷を纏った足でケイの頭を蹴ろうとする。
それをケイは竜人化させた手で受け止め、そのまま引きずり下ろそうと思ったが後ろから魔力が接近してきていた。ケイは黒い手を出しスカーロを捕まえようとするが、後ろに下がって逃げられる。そして魔力のほうを見ると黒い鳥十羽が急接近してきていた。
ケイは大太刀をまっすぐに振り下ろすが六羽しか倒せなかった。そして鳥の一羽がケイの肩に傷をつけた。一瞬頭がズキッとしたがそれだけしかなかった。そしてスカーロのほうを見ると両手に短刀を持って一気に距離を詰めてきていた。ケイは大太刀に含まれている魔力を半分ほど吸収し、大太刀をもとの刀に変える。経過時間二十六秒。
[キキキキキキキキンッッ!!!]
お互いの武器がとてつもない速度でぶつかり合い、常に二人の周りには風が吹き荒れ、打ち合っている下の地面はえぐれてきている。刀は本来打ち合うような武器ではない。確かに脆い武器ではあるが、残した魔力が刀を纏っているために一点に攻撃を集中しなければ壊れることはない。
といっても必要なのは一つの都市が瓦礫さえ残らないほどの攻撃を一点に集中させなければならないのだからほとんど無理ということだ。そして刀にしたことによって大太刀ほどの破壊力もなくなったために打ち合うことが可能になった。
八秒ほど打ち合うとスカーロが雷を纏った足で再び腹をけろうとしてきたが、黒い手で止める。が、破壊される。そしてケイも足を竜人化させ、スカーロの足を蹴る。
[バキッ!!!バチバチバチッッ!]
とてもじゃないが足がぶつかった音ではない。
そしてケイはスカーロの周りに十分に集まったブラックスノーを使い大量に黒柱を作り出し、とてつもない速度で飛ばす。先ほどの矢と違い四方八方から飛んでくるために防御魔方陣を発動することもできない。
そのため、スカーロは魔法使いとは思えない動きで次々と黒柱を破壊していく。短刀をぶつけることもあれば短刀が手からなくなるとバク転などの様々な動きをしながら蹴りで破壊し、再び短刀で破壊し始める。そしてケイが追い打ちをかけるように矢を何百と放ち始める。流石にこれに対応は無理になったようで腕に矢が突き刺さる。
そしてルイナが止めようとする
「そこまでで」
「まだ私は大丈夫ですよ。しかもまだケイ君は全力ではないようですからね」
ルイナが声のした方を見ると今戦っているはずのスカーロが隣に立っていた。
「え?え?ど、どういうことですか?」
「すまないが本体が危ないようなので手助けしてきます」
そう言って魔法が飛び交う練習場の中に入っていった。
腕に突き刺さった矢を始めに次々とスカーロに矢が刺さっていく。流石にまずいと思ったケイは矢と黒柱を止める。経過時間四十八秒。
しかし止めてみると最早平らだった地面はなく、とてつもない形に変わった地面しかなかった。
だが練習場の中で魔力が一気に七個ほど発生した。スカーロは魔力を完全ではないが隠していたために、この魔法を撃ちまくった練習場ではどこにいるのかわからなかったが、わざと魔力を出した様だ。砂ぼこりが邪魔なために、ケイは黒柱で煙を吹き飛ばす。すると全身を黒いフードで隠した人がケイを囲むように七人立っていた。全員発する魔力量は同じであり、顔も隠しているためにどれがスカーロかわからない。
「まぁ関係ないだろう。【黒槍雨】」
ブラックスノーや黒柱すべての形を崩し、煙のようになったものがケイの頭上に行くと、二メートルほどの槍を大量に生成した。そしてすべてが槍の形になると地上に向かって落下し始める。経過時間六十五秒。
槍が次々と地面におちていくが全員が槍を掠りすらせずに避ける。さらに槍を次々と飛び移って距離を詰めてきている。
「【エンチャント】」
ケイは抜刀の構えをする。
……
「【稲妻ッ!】」
[ズバンッッッッ!!!」
「…!?」
「…!?」
「…!?」
赤黒い斬撃が空から落ちてきている槍や地面に刺さっている槍を纏めて吹き飛ばしながら、三人のスカーロが切られた。ケイは三人が重なる瞬間を予測してライトニングを放ったのだ。そしてこれがもし本物であれば防御魔法を張っていただろう。そしてケイの予測通り三人は霧のように空中に消えて行った。
そして後ろから残った四人が槍をよけながら短剣を投げていた。
「【闇の反射】」
だが、そのすべてを吸収し、四人のスカーロに対して返す。経過時間七十六秒。
そして投げ返した次の瞬間四人全員が影移動を使いケイを取り囲むように現れた。どうやら槍の影を使ったようだ。しかし、槍の影を使ったために少しばかり距離がある。
「【浸食】」
ケイは自分の周りの地面を浸食し、自分を囲むように壁を立てる。もちろんスカーロはこの壁を突き破って攻撃をして来ようとするだろうが、頭上の槍がケイの周りに標準を合わせた。そしてそのことが分かったのであろうスカーロ達は影移動で後ろに下がる。
ケイはスカーロが下がったのにもかかわらず自分に槍を撃つ。三秒ほど大量の槍を食らうとケイの周りにあった壁を解除し、周りにあった槍もすべて浸食すると、スカーロ達に先っぽが全く尖っていない物を幾つも伸ばした。
浸食は魔力を吸収することもできるため、スカーロが増えたのが魔法によるものだとしたら浸食が触れた瞬間に吸収される。槍の雨は既に止んでいるためにスカーロ達は地面に突き刺さっている槍を利用しながらよける。
そして、スカーロ達は再びその数を増やし、一気に攻撃に回る。今度は四体が空中に黒い板のようなもの作り出し、ピンポンボールが跳ねるかのように距離を詰めに来る。経過時間九十二秒。
だが、ケイが接近を許すはずもなく、浸食で一気にスカーロ達を飲み込もうとする。
「「「「「「「【魔法破壊】」」」」」」」
全員が同じタイミングでそういうと、浸食にポッカリと七つの穴ができる。そしてそこから一気に攻撃を仕掛けてくる。
「【呪刀】」
[スッ……]
何かの切れた音がすると六人が霧となって消えていた。そして残ったスカーロは、既にフードのようなものをとっており、攻撃は頭を下げることで避け、今目の前で赤い剣を地面に突き刺し、ケイの上を飛び越えた。そして空中で…
「【血の剣】」
魔法を詠唱し、影移動を使った。ケイが突き刺された剣を見ると、赤い剣からケイに向けて地面から赤い剣が次々と迫ってくる。バックステップで一番端っこまで行くが、これ以上は練習場から出てしまう。
「チッ」
翼を召喚し、空に逃げる。経過時間百四秒。
「【黒柱の雨】」
ケイは空から大きな黒柱を落とす。
「では【大型防御魔方陣】【魔法破壊】」
[ドゴオオォォォン!!!]
[バチッ!バチバチバチバチッ!!]
複数の魔法陣が合わさったかのような魔法陣が展開されると、その上に黒柱が落ちてき、ケイとスカーロの魔力がぶつかりあい、魔力が放電するかのように外に放出されている。そして特に大きな音を立てることもなく黒柱が霧のようになり消える。そしてその霧の奥からケイが刀を構えて急降下してきていた。
「複数展開」
スカーロはさらに大型防御魔方陣の数を十個にする。
「【抜刀】」
練習場に音にできないほどの大音量の爆破音にも似た音が響く。二人には衝撃波で近づくことさえ不可能であり、近づこうものなら紙のように吹きとばされるだろう。経過時間百十四秒。
[バキン!バキン!バキン!]
大型防御魔方陣が次々とケイによって破壊され、そして最後の一個が割られる。
「…降参だ……」
約二分の非常に濃い激闘の末、ケイが勝利をつかんだ。
スキル説明
防御魔方陣 魔方陣自体で防御できる
大型防御魔方陣 防御魔方陣の大型バージョン
ダークダガー 短剣のようなものを作り出す
変質 一度はなった魔法を別の魔法に変えることができる
ダークバード 洗脳魔法をかけるときなどに使う
洗脳魔法 洗脳魔法でも上位の者では、何の命令をしても大丈夫であり、洗脳機関も長くなる。失敗した場合は対象者の頭に痛みが走る
闇雷針 ケイの魔法を見てスカーロが作ったものであり、自動迎撃ができる
影分身 影魔法であり、スカーロの場合は魔法を三個まで持たせることができ、分体から言葉を伝えることもできる
黒槍雨 空から何百の槍を雨のように降らすことができる
魔法破壊 敵の魔法を消すことができる
血の剣 地面から無数の赤い剣を剣山のように地面から出現させる