0054
「よし!俺らがいるのは何階層だっけ!」
「この階層を下りたら十一階層だ」
「私は一応クラスメイトと十五階層までは行ったことがありますね。三日かかりましたけど」
「エルデンは下層の情報を何か持ってたりするか?」
「これは言っても問題ないだろう。簡単に言うならば水辺だな。浅いところもあれば深いところもあるし、沼もあったり、木が生えているために木の上からの攻撃もあるな」
「全部燃やすのはありだと思うか?クリス」
「ケイが魔力を分けてくれるのならばやろうと思えばできるがほかの冒険者を巻き込みかねないぞ」
「じゃあ却下だな」
「そんなどうでもいいこと考えてないで早くいこーぜー」
「そうするか」
階段を下りてみると、先ほどまでいたボス部屋とはまるで違い今いる場所から見ると階層すべてに薄く水が張っているようで、所々に木が生えているが、うっすとら奥の方に森のようにな場所が見える。
「とりあえずキサラギ」
「なに?」
「広範囲じゃなくてもいいから雷魔法使えるか?」
「一応使えるよ」
「一回この水の中に撃ってもらえないか?」
「え、いいけど大丈夫なの?」
「なにがだ?」
「電耐性があるまものがいたら一気に飛びだしてきそうだけど…」
「まあ、その場合は俺とルカで一掃すればいいだろう」
「ケイさんならそれもできそうだね。それじゃあ【落雷】!」
ここはダンジョンで地下のはずなのに上空から雷が落ちてきた。そしてその雷が水の中に落ちると、何個か魔物のような死体が浮いてきた。ワニの姿をしていながら、尻尾が魚のようになっていたり、魚のはずなのに大きさが三メートルあってあのワニらしきものでも一口で呑み込めそうだ。
そして、ケイの目の前には小さな魚の魔物が百匹以上いた。そのも魔物全てが電気をバチバチと纏っている。
「やっぱこうなっちまうか。【浸食】」
ケイは足元を浸食し、壁のように槍を次々と生み出し、勢いよく飛んできた魚を貫く。それも運よく避けた魚は、さらに悲惨なことになった。
「【斬】」
ルカの剣によりバラバラに切られた。そして水の中から雨のごとく矢が降ってきた。
「それは予想外だな!【闇の反射】」
ケイは矢の雨を防ぐために全員が隠れるほどの大きさの渦を出し、矢をすべて吸収する。
「あっぶねー今のはなんだったんだ?」
「多分トラップだな。私も初めて見たが初めて見たトラップがあんなに派手なものになるとはな」
「普通はどれくらいなんだ?」
「私もさっきまでは忘れていたが大体の冒険者は知っている。トラップというものはほとんどのものが魔力か重さの変化や宝箱だと開けた瞬間に発動するトラップが多い。即死系のトラップもあれば毒や魔物を大量に呼び出してしまうものもあるな」
クリスのトラップの説明を聞いていると、遠くからドドドドドと音が聞こえる。
「そうかそうか。所で矢が降ってきてから足音みたいなものが鳴りやまないんだが」
「きっとトラップで呼び出された魔物だろうな」
「やっぱりそうかよ!!」
「ちょうどいいじゃないか。たくさんの魔物が私達から行かずとも集まってきてくれるのだぞ?」
「お前はずいぶんとポジティブなんだな」
「そうか?この程度何の問題もないと思うが」
ケイは魔物たちが大量に来ている方を見る。
「…それもそうだな。じゃあ一掃で」
「まってましたー!!」
「うむ。トラップはさっきの魔法ですべて発動しただろうから問題ないだろう」
「わかった!」
「【闇の矢】」
「【嵐】」
「【飛炎剣】」
「【大地の槍】」
そして十一階層は地獄と化した。地面や水の中にいた魔物は大地からの槍で貫かれ、空を飛んでいた魔物は矢と剣によって地に落ち、水の中にいる魔物も地面にいる魔物も空にいる魔物もすべて巻き込みながら猛威を振るう嵐によって全滅した。だがそれ以外の被害も凄まじかった。木は吹き飛び切り刻まれ、地面は隆起し、魔物の死体がそこらかしこに散らばった。
「自分たちでやっといて言うのもあれだがグロいな…」
「こうなるのは仕方なかろう」
「殲滅魔法が得意な私でもなかなかこんな光景みませんよ」
「あきらかにやりすぎたな!」
「とんでもなく歩きにくくなったな」
「ケイが浸食使えばいいだろう」
「え!?この階層ずっとですか!?」
キサラギさんが勘違いして驚く。
「俺らが歩くところだけ吹き飛ばせばいいだろ」
「大きな魔法は別に使わなくてもいいな」
「え…あれを吹き飛ばすのか…」
目の前には地面から生えまくった三メートルほどの巨大な槍の壁ができていた。
「吹き飛ばすというか取り込む。あの程度問題ないだろ」
「そ、そうなのか…」
「じゃあさっさとこの階層も終わらせるか【浸食】。お前らも俺の後ろついて来いよー」
「了解ー」
ケイが槍に向かって進んでいくと足元にあった波が壁に吸い込まれるように浸透していき、槍を黒く染める。浸食された槍はキサラギの魔力も混じっているが、とくには問題ない。もちろん普通なら魔力が弾きあってこんな真似などできない。そして黒く染めた大きな槍を、溶かすように地面に浸透させて進行方向を平にする。
「なんかダンジョンって聞いてたから強いやつがいるのかと思ったがそうでもないな」
「普通に依頼を受けた方が王級とかいそうだな」
「そんなに簡単に都市の近くで王級に出てこられたら私が困るんだがな」
そのまま特にに何事も問題なく階段?にたどり着いた。
「これ階段というか滝じゃん」
「水がそのまま流れ落ちてるね」
「ケイが浸食すればいいじゃねえか」
「そうだな」
この程度は無詠唱でいいので無詠唱で浸食を発動し、水を飲み込むと、その水を使い橋を架ける。
「これでいいだろ」
「流石ケイ!」
「あんなにすごい魔法をこんなことに使うのか…」
「お前らも早くお…り…て……」
ルカが降りてこいといおうとした途中で奥の方に首を向けた瞬間にルカの声量が小さくなった。
「ルカどうかしたかー?」
「ケイ。静かに降りてこい」
「なんでだ?」
「降りてきたら分かる」
俺が十二階層に降りていくとすぐに理由がわかった。
「だから言ったろ?」
「なるほどな…」
クリス達も遅れて降りてくる。そして俺らの目の前には十階層のボスに似た姿をしているが、尻尾が三つに割れており、全身が光沢のかかった青色の鱗にびっしりと覆われている。その魔物の手には剣のようなものが両方の手の甲から一本出ていた。特に特徴的なのは背中に大きなサメの背びれのようなものがついているところだろう。だが、俺らが驚いたのはそこではない。
「グルルㇽㇽ…」
鋭い眼光でこちらを睨む。その顔からは血が滴っている。そしてその魔物の足もとには…。
――同種と思われる魔物の死体が大量にあった。
この世界の情報
広範囲魔法 威力はそこまで大きくないが広範囲に攻撃することが可能
殲滅魔法 広範囲魔法ほどではないが250メートルほどの範囲に高火力な攻撃をすることが可能
広範囲殲滅魔法 英雄の素質があるものしか使うことができないといわれている魔法。広範囲に高火力な攻撃をすることが可能
スキル説明
大地の槍 地面があればどこでも使うことが可能であり、広範囲に高火力な攻撃をすることができる。勇者であるために使うことが可能。広範囲殲滅魔法に分類される