0053
「中に入ってみると案外明るいもんだな」
「そりゃそうだろうよ。ダンジョン自体が魔物で生きてんだからよ」
「ダンジョンて魔物なのか!?」
「そうだぜ。人間たちの世界でもそうなってるはずだよなクリス?」
「ルカの言った通りだな。ダンジョンは魔物の名前であり、生きている。本来は王級などの魔物になるはずが魔物にもならずに魔素が溜りに溜まった場所にダンジョンができる」
「生きてるってことは殺すこともできるのか?」
「ダンジョンコアというものを破壊できればダンジョンは崩壊するが国によってそれは禁止されている」
「なんでだ?」
「ダンジョンというのは国の重要な収入源だからだ。もし崩壊させてしまった場合はダンジョンを攻略した英雄だが、同時にダンジョンからでできた際に捕縛。最悪の場合は即刻死刑の場合もある」
「絶対破壊しないようにしよう」
「それでルカ。今何階層くらいだ?」
「六階層くらいじゃねえか?」
「あれ?階層ボス倒した?」
「さっきのオークジェネラル5体じゃねえか?」
「ああ、あいつらだったのか」
「あいつら私の飛炎剣で一発だったではないか!あんなもの既に何体倒してきていると思っているんだ!」
「ク、クリス落ち着け。多分これからもっと強いの出てくるから…」
「ケイさん多分無駄ですよ。だってほら」
キサラギさんが指さした方向には本来味方であるはずのオークジェネラルをまとめてふき飛ばしているルカの姿が目に入る。
「ああ…確かにあれはしばらくクリスの出番がなさそうだな…」
「羨ましい!私も戦いたい!!」
「ははははは!俺が全部狩ってやるぜ!」
「くそ!ルカ!私の分も残しておくのだぞ!!」
こっちを見て高笑いをあげていたルカが目をそらす。
「目をそらすなーーー!!」
「なんでこいつら連れてきちゃったんだろう…」
「この人たち大丈夫かなー…」
「こんなダンジョンの攻略速度は見たことがないぞ…」
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「やっと十階層のボスだぜー。いやー弱いくせに数だけはいるんだからよー」
スッキリした顔で両手を上に突き上げているルカとは裏腹に、ケイの隣ではクリスがバキバキと音を立てながら拳で地面に罅を入れていた。
「結局!ルカに!全部!とられた!」
「クリス?全力で地面殴るのやめような?罅入ってきてるだろ?」
「ここまでくるのに俺たち何もしていないんだが…」
「私もですよエルデンさん。ここに来るまでの記憶で私は雑談していた記憶しかありません」
「俺も一緒だ」
「ケイ!さっさと行こうぜー!」
「待て!私が先に行く!」
「あ!てめぇ待て!」
クリスが勢いよく扉を開ける。
扉を開けると3メートルほどの大きさがある人型の全身を青色の鱗で包まれた爬虫類のようなものがいた。大きな斧のようなものを持っており、強いことは明らかだ。
「おい!馬鹿!」
「【飛炎剣】ッ!!」
「【斬域】ッ!!」
ルカとクリスの魔法が同時に発動され、肉の切れる音や焼ける音が部屋に響き、強かったのであろう魔物は口からうめき声を上げる。
「ガアァァ……」
その魔物は何もすることなく、体を切り刻まれて死んでいった。
「いや、お前ら慈悲はないのか」
「うわー終わっちゃいましたねー」
「俺がついてきた意味って…。いや、俺には報告という重大な任務が!」
「うむ!スッキリしたぞ!」
「大物だったのに…」
「お前は今まで狩りつくしてたからよかろう」
「あいつらよぇーじゃねえか!!」
「普通は二日以上かかるはずなのに一日で終わらせるなんて…」
「もう今日はいいや。俺は疲れたし寝る」
ルカはボス部屋の端っこで座り、寝始めた。
「今日はもう寝るか?」
「私何もしてないんですけど…」
「俺はどちらでもいいが」
「私はもう寝る。明日は私が狩りたいからな」
「じゃあ今日はテント張って寝るか」
「うむ。それでいいだろう」
「じゃあお休み」
「お休み」
馬車はいけたのにテントは無理だった。俺も現代人ってことか…。
この世界の情報
ダンジョン 莫大な量の魔素が集まった場所にできる。または生まれる魔物。中は複雑な構造になっており、奥に進めば進むほど強力な魔物が多数いる。