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「ではこれから優勝者の君たちにはそれぞれ勇者様たちを鍛えてもらう。国王様の権限で王都周辺の森や、ダンジョン。王城内の訓練場を使ってもよい。それと、これは前もって言っているだろうが君たちには王城でしばらくの間は暮らしてもらう。服などは前もって持ってきているだろうが食事や部屋などは提供させてもらう。それではこれから君たちのところに行った勇者様たちを鍛えてもらう。それぞれのところに勇者様たちが行く。前もって場所を教えておいてくれ。それでは暫く自由に動いてくれて構わない」
そういうと優勝者達が男に近づいていき、自分のいる場所を伝えると散っていった。
確か部屋が用意されてるんだよな?じゃあ部屋でいいか。
「すまない。王城の部屋はもう使えるのか?」
「すでに準備はできているがそこにいるのか?」
「そうしたいんだがいいのか?」
「ああ、いいだろう。執事に案内させる」
男は近くにいた執事を呼ぶ。
「ケイを用意していた部屋に連れて行ってくれ。少し早いが問題なかろう」
「了解いたしました。ではケイ様ご案内いたします」
「頼んだ」
前と同じように執事に案内され、しばらく歩いているとメイドたちの人数が少し増えた。こちらに気づくと最初はおびえたような顔をするが次には少し頬を赤くさせて綺麗にお辞儀をしてくる。そうしてついていってると、どうやら目的の部屋についたらしい。
「こちらでございます」
「ありがとう」
執事が部屋の扉を開けてくれたので中に入ると、シュレイム様が貨していてくれた部屋より大きい部屋だった。ベットもこんなに要らないだろという大きさ。なかなかこの世界では見られないガラスもふんだんに使っており、王都を見下ろせるようになっている。
「しばらくしますと勇者様が来られると思うのでお待ちください」
「わかった」
案内が終わった執事はお辞儀をして部屋を出て行った。
「さて、あいつらの誰かが来るまで魔力循環でも鍛えておくか」
そういい、ケイはベットの上で体の魔力を動かして、魔力循環力を鍛えていた。
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30分ほどだろうか。扉がコンコンとなる。
「誰だ?」
「勇者様を連れてまいりました」
「そうか。入っていいぞ」
「失礼いたします」
最初にメイドが入ってきた後に勇者が入ってくる。そしてその勇者は俺の目の前に来るとこういった。
「これからよろしくお願いします!ケイさん!」
俺は絶句した。何故君なんだ……如月さん……。
「ああ、よろしく」
「さっきの魔力の量すごかったですね。びっくりしましたよ」
「漏れていたのか?」
「はい。ものすごい量が」
なんでだ?前はそこまで漏れることはなかったと思うが…。存在進化の影響で一気に魔力量が増えたからか?」
「あのケイさん」
「どうした?キサラギさん」
キサラギさんがニコッと笑う。
「やっぱりケイ君だったんだね」
やってしまった……。正直に言うべきだろうか。いや、でもラヒネは完璧にばれてるって言ってたし。仕方がないか…。
「そうだよ…」
「だよねだよね!絶対そうだと思ったよー」
「なんでわかったんだ?」
「え~それはね。動きとか癖とかが似てたからかな」
「癖?」
「うん。そうだよ」
そんなスキルでもあるのだろうか?いや、何でもありのこの世界ならありそうだな…。
「あ、でもさすがに女性になったのは驚いたよ」
「あれか…。遊びで作ったんだがな」
「あんな姿にもなれるってことはその姿も偽物?」
「そうだな」
「本当の姿を見たいな!」
「なってもいいがその前に一つ聞いてもいいか?」
「なに?」
「魔族についてどう思う?」
「う~んまだよくわからないかな。まだ魔族とは戦ったことがないからね。嫌悪感も特にないし」
「なるほど。じゃあ魔法を解除するよ」
久しぶりに人化を解除する。体が霧のようなものに包まれ、魔法が解除される。
「どうだ?感想は」
今の俺の本来の姿はもはや人間ではない。頭には角が二本生えており、元の世界にいた時の俺の姿じゃない。
「……驚いた…」
「まぁだよなー」
「どうやったらそんな姿になれるの!」
「ん?」
「凄い!いいな~ケイ君だけそんなにかっこよくて。アマキ君とかはまるっきり転生系のテンプレって感じなんだもん!」
「ちょ、ちょっと待ってキサラギさん」
「しかも今思い出してもさっきの魔力量はすごいし、大会とかで見せてくれた腕が肥大化したり翼が生えたりかっこよすぎる~」
キサラギさんが腕や背中などを触りながらそう言ってくる。
あれ?キサラギさんてこんな人だったけ?
「あ、あのキサラギさん?」
「なに?」
「そろそろ何か動き出さないとほかのやつらに怪しまるんじゃないか?」
「そうだね。じゃあどこにいく?ケイ君」
「ちょっと待って」
ケイは再び人化を使う。
「よし。行くか」
「レッツゴー!」
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とりあえず王都周辺の森に来た。王都の人に聞いたらこの森が一番強い魔物が出やすいそうだ。キサラギさんもそう言ってたし。
「キサラギ」
「なに?ケイさん」
「まず前提として俺は他人に教えることができない。俺ができることといえば戦闘をサポートするくらいだ」
「じゃあずっと魔物狩りかな?」
「反復練習をして技を磨くのもいいが、一番早く強くなれるのはレベル上げだろ」
「確かにそうだね。じゃあケイさんのレベルはどれくらいなの?」
「2だ」
「流石にそれはうそでしょ」
「ノーコメントだ」
「限界突破的なものがあるのかな?じゃあその強さにもうなずけるし。よし!じゃあ私も頑張ろう!ケイさんサポートよろしくー」
「わかった。さて、俺も今のキサラギさんには危険そうなやつだけ狩っておくか【浸食】」
ケイの足もとから波が現れ、次々と木や地面を黒く染めていく。
ん?今ついてきてた気配が一瞬揺らめいたな。魔法に驚いたのか?
そう。ケイや優勝者達の周りには何人もの王国の情報部隊のものが外にいる限りは張り付いている。もちろんその気配には気づいていたが害がなさそうなので放っておいただけだ。
「お、地面にも魔物はいるのか。このまま握りつぶすか」
地面の中にいた魔物は今頃ケイの浸食された地面に押しつぶされて悲惨なことになっているだろう。
「このまま棒立ちってのも暇だし自分から倒しに行くか」
ケイは無詠唱で身体強化を使い、走り出す。ただそれだけでも常人から見ればとてつもないスピードだ。そして目の前にオークが見える。一番最初に殺されかけた相手だ。
「――しッ!」
ケイが刀を抜刀すら使わずに力任せに振りぬく。
「バキバキバキバキバキッッ!!!」
オークの骨の断つ音も聞こえるがそれよりも周りの木が倒れていく音のほうが大きかった。オークはきれいに腹が真っ二つに切れ、すでに死んでいた。
「これは…やりすぎたな」
「ケイさん大丈夫ですかー。こっちで爆発音みたいなのが聞こえたんです…け…ど……」
キサラギさんが絶句した。なぜならケイを中心に近くに真っ二つに切られたオークの死体があり、木が何本となぎ倒されているのだから。
「え~とこれはケイさんが?」
「そうだな」
「なにか魔法を使ったんですか?」
「いや、力任せに刀を振りぬいただけだ」
「どうやってこれほどの攻撃力を…」
「レベルアップだな」
「やっぱりそうだよねーもう一回行ってくる!」
「今度は俺もついていこう」
「え!?」
「近くにいた方がサポートしやすいからな」
「そ、そういうことなら別にいいですけど…」
「なら行くぞ」
「はい!」