0042
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今日は少しの休憩をはさんで二回試合がある。といっても次は準決勝なので今まで戦った中でも一番の猛者だろうが。
舞台に上がるとどうやら今回は俺のほうが早かったようだ。少し遅れてもう一人舞台に上がってくる。
「おぉ…」
見た目は完全に鬼。額に二本の角が生えており、見かけも分かりやすいところでいうと坂本龍馬のような姿をしている。そして気になったのは武器だ。それは剣とは違い、刀の形をしている。そしてさらにそれよりも気になるのは目。目は両方とも傷がついており、目が見えていないようだ。
「次は準決勝一回戦目だあぁぁぁ!!一回戦目は盲目の剣鬼シュンスイ!鬼族の剣士であり、盲目でありながらもそこいらの冒険者では倒されたことを知覚されずに倒すほどの実力の持ち主!対するはこの大会で様々な道の魔法や、剣技を使い猛者たちを倒してきたケイ!!では準決勝一回戦目スタートだ!」
「本選準決勝第一回戦開始!」
「お前はカタナを使っているのか?」
試合が始まってすぐにシュンスイがそう聞いてきた。
「そうだが?」
「そうか。里から出て一度も刀を持っているものを見なかったのでな。お前の力量、試すとしよう。【縮地】」
シュンスイが視界から消えた。
「な!?」
「甘い」
突如として後ろにシュンスイが現れ、腕を狙って刀を振り下ろす。しかし、その刀は空を切る。
「体を小さくしたのか。なんと面妖な」
ケイは人化を解除し、体を小さくしよけた?のだ。攻撃が腕でなかったら今ので重傷を負っていただろう。そしてもう一度ケイは人化使う。
「次は胴を狙うとしよう」
今度はなんのモーションもなしにシュンスイの気配が消えるが、見えなくても問題ない。無詠唱で浸食を発動し、自分の周りに即座に壁を作る。
「【斬鉄刀】」
だがその努力もむなしく壁は真っ二つに切られる。ここまでは予想通り。いくら魔法で強化したといえ元はただの石。そんなもの切られるのは当然だ。しかしこれによりシュンスイの位置が分かったため対応も可能。
「【抜刀】!」
「【雷】」
お互いの刀が交差する。
「【千切り】」
「【千手】」
[キキキキキキキンッッ!!]
お互いの剣技が激しくぶつかり合う。二人とも剣技を使わなくとも力任せに刀を振りぬくだけで壁が綺麗に真っ二つになるほどだ。そしてその二人が力任せではなく剣技を使っているのだからぶつかり合っているのだからまわりはとてつもない風が吹き荒れている。そして同じタイミングで後ろに飛びのく。
「【黒い木】」
舞台が黒い木に覆われる。そして黒い雪が舞台の上を舞う。
「む。黒い雪か。これも魔法なのだろうな」
「もちろんだ【一閃】」
「【竜尾】」
[ガキンッ!」
「完全にとったと思ったが後ろからも無駄か」
「お前教えておいてやろう。私は目が見えていない。その代わり五感の触角と聴覚が優れている。角で空気の流れを読み、耳で音を選別し、敵の場所を感知する。だから空中に魔法が出現すれば空気の流れを読み、よける。そして私はお前の強さに敬意を表し、この大会で一度も使っていないものをお前に使おう」
「どんなものか実に気になるね」
「焦らなくても見せてやる」
「【一閃】」
「【流刀】」
一閃を放つが綺麗に受け流される。再びシュンスイが無詠唱で縮地を使い迫ってくる。
「【這蛇】」
「【縮地】!」
シュンスイの刀が再び空を切り、ケイが一瞬でシュンスイの背後に回る。
「【滝壺】!」
「縮地をこの短時間で自分のものにしたのは素晴らしいがまだまだだな…」
シュンスイがそういうとケイの後ろに何かの気配が現れる。
「【竜人化】ッ!」
[バキッ!!]
「折れてしまったか。力強く振り上げすぎたようだな」
意識をシュンスイに戻すとシュンスイの周りには六本ほどの刀が縦に宙に浮いていた。
「本領発揮と行こうか【風斬】」
すると刀が二本空に向かって攻撃し始めた。すると刃先の部分だけが消えた。するとケイの背後の雪の中に気配が生まれる。
「【呪刀】」
しかし雪の中に気配が生まれた瞬間に呪刀を作り出し、刀であろうものを止める。
「やはり見えているな」
「見えてはないけどな【黒柱の雨】」
上空から大きな柱が落ちてくる。
「ふむ。【雷鳴】」
[バチバチバチッッ!!!]
だがシュンスイの刀が凄まじい音を立て黒柱を真っ二つに切る。
「え?本当に人間か?」
「鬼族だ」
「……そうだったな」
気まずい空気になる。
「…【斬鉄刀】」
「あぶなッ!」
「【嵐斬】」
「【千切り】ッ!」
どちらかが剣技を放つと相手も剣技を放ち、技に対処してくる。このままではこの後もこれの繰り返しだろう。そう、このままだったら。
「お前は忘れてるかもしれないがこの雪はすべて俺の魔力でできてるんだぜ?」
「だからどうしたというのだ。さっきのような塊を飛ばしてくるだけならいくらでも対処できる」
「そうだよな~剣で切れるのであればな」
「私に切れぬものなど―」
そういっている途中にシュンスイの服がスッと切れた。
「どうだ?見えるか?」
「これは!?」
「お前の弱点を教えてやろう。お前は目が見えないから質量や形などを周りのものと全く同じにするとどれが攻撃してくるのかわからない」
「くッ!」
「そうだな。例えばこうしてみよう」
ケイの左右にケイのような形をした黒いものがいた。そのものは目もなく口もないがシュンスイにはわからない。目が見えないのだから。
「わからないだろう?」
「わからないからなんだというのだ。すべて切ればいいまで!【龍鬼刀】ッ!」
周りのすべての刀が動き出し、空間を超えて攻撃を仕掛けてくる。もちろん木偶にかわすすべなどなくすべて切られる。そして一体が残った。
「残ったお前が本体だ!【雷鳴】!!」
そしてケイは真っ二つになり舞台から消えていった。
「残念だったな」
上から声が聞こえる。
「なッ!?」
ケイは下にいたのをすべて木偶にし、すべて切ったと思わせ油断したところを狙うために翼を出し、空にいたのだ。
「俺の勝ちのようだな。【滝壺】」
「な、なぜ―」
シュンスイの声は途中で途切れ、退場となった。
――準決勝一回戦勝者ケイ――
とぎれとぎれだが司会者の声が聞こえる。
そして次は決勝戦――
スキル説明
縮地 相手との距離を一気に詰める
斬鉄刀 刀を一瞬だけ硬化させ、硬くなった瞬間に切る
雷 雷のように素早く抜刀する
千手 名前は違うが千切りと同じ。スマホっていうかスマートフォンていうかぐらいの違い
竜尾 横薙ぎに切る技
流刀 技を受け流す
這蛇 地面を這うように一直線ではなくフェイントを入れて攻撃する
滝壺 上から下に刀を振り下ろす
風斬 様々な角度で切る技
雷鳴 シュンスイのもつ技の中でほぼトップの威力を誇る
躁刀 自分の操る刀を操ることが可能
空間転移 小さなポータルを出し、刀程度の大きさなら移動させることも可能
龍鬼刀 シュンスイの本気であり、トップの威力。やろうと思えば舞台を切ることなどスイーツを切るように簡単にできる