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「で?俺は何でこんな豪邸の前にいるんだ?」

「え?赤星を捕まえるためだよ?」

「いや、俺は探すだけで良いって言ったよな?」

「でも何なら捕まえて依頼主の目の前に連れて行きたくないかい?九十九点より百点を狙っていこうじゃないか」

「本当に捕まえられるんならいいけどよ……」


スカーロから目を外し周りを見てみると、朝なのに夜のように辺りが暗く、星空まで見えている。森の中にある木造りの家や木から吊るされたブランコが居心地のいい空間を生み出している。


「あ、今ケイ君なんで朝なのに急に周りが暗くなったか疑問に思ったでしょ」

「そりゃあな。急に時間が早送りされたみたいに暗くなってくんだからよ」

「ま、それは中に入ればわかるさ」


スカーロが木造りの扉を開け、勝手に中に入っていく。


「勝手に中に入っていいのかよ!」

「ああいいとも。彼と私は親友と言っても過言ではないからね」


そう言いながら家の中にある扉を開けると、中にいた人から返事が返ってきた。


「誰がお前と親友だ眼鏡」

「君も眼鏡だろう?」


部屋の中に入ると、眼鏡をかけた男が椅子に座っていた。


「久しぶりだねー賢書」

「俺の世界に勝手に入ってくるな。面倒ごとを押し付けるな。帰れ」

「そうゆうわけにも行かなくてさー」

「…お前は……魔族?いや人間か?」

「ん?何を言っているんだい?」

「スカーロ。お前の隣にいる奴は魔族か?」

「え?俺?俺魔族じゃないけど」

「それは私も魔族じゃないと思うけどね。私の鑑定でもちゃんと人間だった」

「……悪いが信用できん。殺しはしないが試させてもらう。【利益の追求者(エゴイスト)】」

「うおっ!」

「いやーケイ君やらかしちゃったかもね」


先ほどまで木造りだった部屋が機械で囲まれた部屋になり、賢書は鉄製のメカメカしい椅子に座り青色の空中に浮かぶモニターを触っている。


「ほぉ。俺の鑑定の結果でも本当に人族じゃないか。レベル五十二なんだがな」

「当たり前だろ。俺は人族なんだから」

「そうだぞー酷いぞ賢書ー」

「黙れ黙れ。まだだ。【利益の追求者(エゴイスト)】【魔力眼・真眼発現】」


賢書の両目に魔方陣が浮かび上がり、その瞳でケイを視る。


「ほうほうほう。貴様、何か魔法を使ってるな?隠蔽系魔法か?何だ?」

「俺にはお前が何を言ってるか全くわからないんだが……」

「あくまでしらを切るか。スカーロ、お前はこいつに俺が梟の賢書だと教えたか?」

「もちろんさ」

「では俺を梟の賢書と知ってのその態度。蛮勇と誉めてやろう。その馬鹿な覚悟に免じて一瞬で殺してやる」

「おいスカーロ。俺が死んだら天国でお前を地獄に叩き落してやる」

「それは困るなーじゃあ私はケイ君を守ろうじゃないか」

「【利益の追求者(エゴイスト)】全権限発動、記録魔法全発動」


機会に囲まれた部屋から、とてつもない広さを誇るフィーリアが創った一面白色の部屋に非常に酷似した部屋に変わる。


「魔法強制複合化、発動許可」


賢書の目の前に目まぐるしく魔法式が変わっていく魔方陣が現れる。


「何、本気ではない。【第漆偉(だいしちい)】」


目まぐるしく変わっていた魔方陣がピタリと止まると、白い地面が沸騰するかのように蠢きだし、そこから見たことのないような巨大な百足のような生物が何十と出てくる。共に地面から出てきた武器や溶岩を吹き飛ばしながらケイ達を押しつぶそうと攻撃を仕掛けてくる。


「ではお見せしよう。我が深淵魔法。【深淵(アビス)】三階層召喚。【殲滅する城エクスターミネート・キャッスル】」


百足達の進行方向に毒々しい色をした城がケイ達を囲むように地面から現れ、百足たちの進行をせき止める。


「巨大な害獣にはやっぱり三階層だよね。よし、じゃあ撃てー」


城の各部がゴゴゴゴゴっと動き、そこから大砲のような物が出現する。そして大砲の先に魔方陣が現れ、そこから火魔法や水魔法を撃ちまくっている。


「はい。解決」

「…え?この世界ってこんな簡単に城を建てられる世界だったか?」

「そこまで大きくない城であれば錬金術師と土魔法使いが一定量いれば一週間くらいで立つんじゃない?」

「え?まじで?」

「おおまじ。それに直ぐ立てた小さい城であれば城壁も小さいから大きい魔物だと超えてくるんだよね」

「へーじゃああの城壁の上から見えるのは幻じゃなくて現実なのかー」

「ははは、そうだね。でも本物の賢書だったら三階層の城程度破壊できると思うけどなぁ」

「何を言い出すかと思えば。俺はこの通り賢書本人だが?」


スカーロが百足の上に乗っていた賢書に話しかけると、賢書が城の中に降りてくる。


「私はこれでもエゴイストの万能性を知っているつもりなんだけどね?もちろんオートマタを作る程度造作もないだろう?」

「……」

「おや、利益じゃないと判断されたかな?」


突如として賢書の姿が泥のようになって地面に染み込んでいくと、代わりに巨大な百足達が全て賢書の姿に変わる。


「百足が人になったんだが?!しかも全員同じ顔!」

「そういうこともあるさ」

「はぁ…だから俺はお前が嫌いだ」

「えぇー酷いなあ」

「お前の言った通りアイツは本体に利益じゃないと判断された。俺は本体から命令されて動いているから消えることはない」

「はいはいー」

「まずお前がここに来た理由を聞こう」

「このケイ君が赤星を…捕まえたいらしくてね!だから君に手伝ってほしいなって」

「じゃあ俺達三体を貸そう。俺達は第伍偉までは使えるが使ったら俺達は消える。ケイ。お前は赤星を捕まえたいんだな?」

「そうだな。できれば五体満足で」

「幻想魔法でも使えばいいだろう。特に問題はない」

「賢書は顔も変えないと。結構ベルミュナでは顔割れてるでしょ?」

「分かっている」


目の前にいた三人の賢書の顔と服装が変わり、ガタイの良い男性、幼い女性、幼い女性と顔の似た女性に変わった。


「これでいいだろう」

「完璧だね」

「それで?これからどこに行くんだ?」

「そうだな。ベルミュナの情報を一番集めているであろう響破の所に行ってみればいいだろう」

「響破かぁ……」

「何かあんのか?」

「いやー絶対響破は私達のことを殺しに来るだろうし、情報を渡してくれる確率は絶望的だろうね」

「アイツは情報は命だとか言う奴だからな」

「本当に大丈夫か……」


スキル説明

エゴイスト 発動者の利益になることであればほとんどのことはできる

第漆偉   様々な魔法が複合され、溶岩、武器、百足などを呼び出す魔法。地割れや自身も起こすことが可能

深淵魔法  召喚魔法に分類されており、発動者を守る建造物や敵を攻撃する魔物を呼び出すことも可能

殲滅する城 周囲にいる敵を殲滅、発動者を守ることに特化しており、城壁が破壊されたとしても数秒で修復可能

幻想魔法  敵に幻を見せることが主であるが、世界に幻を見せるなどで幻想を事実にできる魔法もある

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