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帝国での用事が終わり、王国に帰ってくる頃には同盟に関する情報が各国に渡っており、ほとんどの都市での噂話はそれで持ちきりだった。クリス達に帰ると言おうと学園に行ったときは何故かエリオットしかいなかった。結局エリオットは自分が女子であることに関する話はあれから一度もしていない。クリスはどうやら体がとても熱くなり、心臓が痛いためにこれないとのことだった。会いたいと言ったが写ると危ないとのことで会わせてもらえなかった。大丈夫だろうか……?

そしてそんな別れがあり、現在は王城のメイドに案内された一室にいる。


「してケイよ。此度の指名依頼見事にやり遂げてくれた」


先に部屋の中にいた宰相からそのように言われる。


「いえ、この程度お安い御用です」

「それは重畳。では再び国王様からの指名依頼だ。いいかね?」

「内容をお伺いします」

「貴殿は知らないだろうが、レイスタン聖王国で勇者が召喚された。この情報は実際に事実だとわかっている。レイスタン聖王国でももうすぐ公表されるだろう」


ラヒネ達が言ってた通りか……。


「レイスタン聖王国は古くから反亜人主義者が多い。元来セルレイ教とはそのような物ではないはずなのだが、現教皇になってから更にその傾向が強くなった。そして本当に残念なことにリハージ王国の勇者様達と魔王討伐を賭けた演習を行いたいと言う」

「それは随分と……」

「リベルタイン帝国もそうであるが何事においても順序という物をすっ飛ばしてくる。これは受けないこともできるが、使者がジ・アーを切り札に出してきた」

「ジ・アーですか?」

「そうだ。神の決定で下されるはずのジ・アーが政治的に使われ始めたと言うことだ。そのためこの勝負は受けなければならなくなった」

「しかし帝国との同盟もあるのになぜ……」

「国王様は小国郡のように泥沼化する戦争をお望みではない。敵には守護者である聖女がいる。戦力でこちらが勝っていようとも敵兵が延々と特攻してくるのでは意味がない。そして演習だが、勇者様じゃなくてもいいとのことだ。分かってくれたかね?」

「私はその演習に参加すればいいのですね?」

「そうだ。もちろん勇者様も出るが戦士長、騎士団長も出る。レイスタン聖王国も守護者の誰かが出てくるだろう。演習は一か月後に行われる」

「分かりました」

「ではペンに魔力を込めながらこの契約書にサインしろ」

「はい」


机の上に置かれたペンを手に取り、自分の名前を書いていく。改めて自分の書いた文字を見ると不思議に思う。これは英語ではないのだろうか?しかし何故か手が動き、それが読める。転移してきてからも中々慣れない違和感だ。


「よろしい」


宰相様が契約書を手に取り、魔力を契約書に流し込む。


「今日はこれだけだ。演習について詳しくは勇者様を交えてとなる。退室を許可する」

「はっ失礼いたします」


~~~~~~~~~~


とまぁ昨日このようなことがあったわけだが、まだ俺には問題がある。当たり前だが、魔道具の効果が切れたのがバレた。しかし、既に魔法契約書を使って特別幹部の席に就いているため、皇帝からの命令には従うしかない。


「終焉都市ベルミュナ……」


ケイは皇帝に手渡された本を開く。


~~~~~~~~~~



現在は終焉都市と呼ばれている場所ベルミュナ。かつては栄えていた国の中央都市であったようだが、何とも愚かなことに城の地下深くに存在していた魔力炉が管理不足により熱を帯び、それはもう派手に爆発したそうだ。その都市は森に囲まれ、異常なまでの高さを誇る外壁を持っていた。

その外壁だけが崩れることはなかったが、中央で魔力炉が爆発したため、外壁内は火山のカルデラのようになってしまった。そしてそこからは異常を察知した森に潜んでいた大盗賊団が魔法を使って外壁を上り、外壁内を完全に占領する。

そして同じことを考えていた盗賊団たちと同盟、裏切りと争いを始める。


そして周辺国家はその国の中央都市が滅んだことを察知し、攻め込む。そして他国の軍とこの国の騎士が戦っている間に盗賊団が裏の世界のお友達をこれでもかと連れてくる。そして中央都市に攻め込もうとした周辺国家の軍は何のうま味もないその年の光景を見て引き上げる。

そこからは火を見るより明らかだ。強者は自分に有用な者を集めて徒党を組み、弱者は一人で野垂れ死ぬ。


そこから何百年も立ち、そこは終焉都市ベルミュナと呼ばれるようになる。


曰く、そこにはこの世界の悪と言われる物全てがある。

曰く、ベルミュナに立ち入り、何かを失わずに帰ってきたのであればその者は神だ。

曰く、あの場所は戦場と同等の過酷さだ。


この世界の住人は戦場の過酷さを知っている。軍人と言うのは誇らしい職業であり、尊敬に値する職業なのだ。その住人達がこう言うのだ。




…そうだねぇ俺はあの場所に一回入ったことがあるんだが、最初に感じたのは悪臭だな。肉が腐った匂いだ。鉄の匂いもした…それに人の死体が……


インタビューを受けていたこの男性は、そこで一回口を押える。記者が大丈夫ですか?と声をかける。


あ、あぁ、大丈夫だ。じゃあ続けようか。……あの場所は必ず何かを失うと言われているが、俺が失ったものは四肢だ。今は腕のいい魔道具師に頼んで特注品を頼んでもらったから問題ないが、あれは恐ろしい体験だった。

俺は死体を見て直ぐに逃げ出したんだ。全力でな。無我夢中だったから覚えていないが、何かの視線におびえていた気がする。そしてそのまま家に帰って一息ついた。まぁその日はそれで終いだった。が、朝起きてみるとなんと驚き。四肢が無く、血濡れたベットの上で寝ていたよ。


え?あぁなんで俺が生きてるかって?それは隣に住んでた友人が回復魔法を使えるんだ。その友人が眠っている俺の状況を見て慌てて止血してくれたんだと。


確かにこれだけじゃ戦場と同等の場所とは言えねえな。この記事を読んだ軍人様に殺されちまう。それから数年後だな。ベルミュナに入りたいという騎士様が居た。

案内してほしいなんて言うから案内してやったら、中に入っていっちまった。それから一種間程度か。気になってベルミュナの入り口にまでに行ってみようと森に入ると騎士様六人の死体が木に吊るされてたよ。で、その騎士様を国に返してやろうとしたらポケットに手帳が入ってた。

あれは読んだことを後悔する内容だった。簡単に言えば、人が転がっていない日は無く、薬、売女、殺人、絵の贋作なんかまで日常的に行われてるそうだ。


はは…最後にはこう書いてあったよ。騎士様があの場所は地獄だとよ。


このように証言する住民もおり、こんなことを言う住人もいる。


何でできているかはわからないが、鉄でできた長い何かが落ちてるのを見たことがある。騎士様の体の傷にも鎧事背中まで貫通した傷のようなものもあったな。


鉄でできた何かはおそらく魔遠砲だと思われており、一時ではあるが戦場に混乱をもたらした武器と言える。魔遠砲とは魔法の弾を飛ばす道具であるが、ある程度の能力が付与された鎧を着ていれば弾く。鉄の弾を飛ばすことも考えたそうだが、それでは連射できたとしても結界に阻まれ、狙撃に使おうともある程度の実力者であれば手で掴める。

だが、ベルミュナにはそれ以上の魔遠砲があり、十個ほどの能力が付与された騎士の鎧でも貫通するとわかっている。これに追随して相当な技術者がいることも分かっている。


この本もそろそろ役目を終えるが、最後にこれだけは言わせてもらいたい。


終焉都市ベルミュナは、超国家である三国に挟まれながらもどの国もベルミュナには手を出さない。おそらくそれほどの何かがあり、手を出さないのだろう。




今回この本を書きながら分かったことだが、噂は全て事実である。


もちろん。




終焉都市ベルミュナに関する情報を調べようとすれば死ぬという噂も。


最後のページに新聞の切れ端が張り付けられていた。


一人暮らしの男性が体をバラバラにされ殺害されていた。終焉都市ベルミュナの著者であった男性だが、終焉都市ベルミュナの最後に自分の最後を――


~~~~~~~~~~


「完全に都市伝説みたいな扱いだな……」


しかしこの世界は殺人が平気で行われる世界。この本に書いてあるほとんどのことが嘘であることを願うばかりだ。こんな所に一人で行くべきではないのだろうが、今は四人とも全員がいまだ帝国にいるために一緒に行くような人がいない。


こんな都市伝説みたいなやつが好きそうである程度の実力があって俺の知り合いか……いるのかそんなやつ。

…いや、一人いたな。




「スカーロ誘ってみるか」


この世界の情報

魔遠砲       一時的に軍で採用されていたが、直ぐに通用が止められた武器

終焉都市ベルミュナ 昔の栄光など見る影もなく、今では全ての悪が集まる場所と言われる

魔力炉       膨大な魔素を魔力に変えて貯める物


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