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描ク者

作者: 羽宮悠夜

僕は幼い頃から絵を描くことが好きだった。

チューリップ、カービィ、ヒトカゲ。

クレヨンでよく手をカラフルにしたものだった。


小学校に上がってからは、色鉛筆という新しいペンで、ドラゴンボールばかり描いた。好きな女の子もドラゴンボールが好きで、よく完成したものをあげていた。

成人式の後回収したタイムカプセルには、小6の頃のイラストが数枚。20代の自分の中では下手くそでも、歳の割にはそこそこ上手かったのかもしれない。


中学ではポスターカラー。淡い色が好きで、筆を4本くらいいっぺんにもって、たくさんの水を移動させたものだった。夏休みに描いた風景画は、美術部員による査定会を経て、学年の代表ということで郡の展覧会がある美術館送りにされた。


高校でようやく美術部に所属した。シャーペンや絵描き御用達のペンででたくさん模写した。水彩色鉛筆をハサミで削って、指で塗るのが得意技だった。


大学になると創作サークルの部長にまでなった。その頃はちょっとだけペンタブが使えた。ただ、アナログをデジタル化して加工する方が出来はよかった。


簡単にするとそんなイラスト人生。これまでの足跡。

なにをいいいたいかといえば、イラストは孤独ということだ。独りで完結できる趣味。集団があっても、それは個の寄せ集めであって、混ざり合うことはない。


この先もそういうものだろうと、思っていた。


僕はふとした機会に、5000人のイラストサークルの指揮をとることになった。

ちょうど1年前、寂しいクリスマスの夜だ。

2000人の自分の写真部を管理するついでに、無断転載だらけの無法地帯サークルを開拓してやろうという企みだった。

権限を獲得し、ルールを作り、従わないものは容赦なく処罰する。月に30人ほど出禁にした。独裁だ、魔女狩りだ、厳しすぎる、いろいろいわれはしたが、さて。

それが1年続いてどうなったか。


ざっと30人のコミュニティができた。

中心にいるのは私ではないが、かといって特定の誰かがいるわけではない。

それまで個だったはずものが、ひとつに混ざり合ったのだ。

コラボをしよう、絵柄を真似しよう、線画をもらって色を塗ろう、同じキャンバスに一緒に落書きをしよう、イメージイラストを描こう、アドバイスをもらおう、プレゼントしよう。


あの頃の……僕にはそんな相手がいただろうか。

今時はこういう時代なのかと感心する。

ディスコードで通話をしながら、遠く離れた友人と同じ1枚に絵を描く。それくらいの当たり前の生活。楽しくないはずがない。

その出会いと、それを支える環境づくりに自分が関わっていることが嬉しく感じられる。

私無しではなしえなかった……とまではいわないが、ここまでの人間関係を組み立てられはしなかっただろう。


そんなふうにいつの間にか僕は、

1度は君にあげて手放したペンタブも買い直して、年に数枚しか描けなかってデジタルをそれなりの脳内再現度で定期的に描けるようになっていた。


今月は仲間内の女子中高生たちに、ブランドもののチョコレートを詰め込んでクリスマスプレゼントとして郵送した。

リア友はいなくとも、なんとか自分の居場所を確保することができた。

ただそれも今月まで。

SNSはじきにサービスを終了し、大型アップデートという形で新SNSをリリースする。サービス終了を聞きつけたパクりSNSがいくつも開発されている中、全員が再び集まるとは考え難い。

できればいつまでも続いて欲しかった。

そんな風に思わずにはいられない。


それでも来年、新しいSNSにも私は棲みついて、そこに現れた新しい学生の絵描きたち同士を、繋げて繋げて繋げられたらいいなぁと漠然と考えている。

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