太陽の光の怖さを知りました。
橘さんの声で徐々に意識が浮上してくる。
カーテンを開けられたことにより射し込んでくる太陽の光。雀達の可愛らしい囀りも聞こえてくるが今はそれどころではない。
寝不足気味である私の目に太陽の光は毒でしかない。光で殺される。
「おはようございます、祈様」
「お、おはよう…ございます…」
「叶様も起きて下さいませ。広間で旦那様と奥様がお待ちです」
「うぅ…まだおねーちゃとねるぅ…」
何故、私のベッドで叶が一緒に寝ているのかをお答えしよう。
あの恥ずかしい場面を見られたあと、叶はずっとお姉ちゃんと一緒に寝たかったと言って部屋に入って来たのだ。
もうこの時点で天使過ぎて死ぬよねて。
もう秒で承諾。
加えて、白いワンピースタイプのネグリジェを着て大きな枕を抱えながら言われてみなさい。
鼻血を出さなかった私、マジで偉い。
今も寝惚けて私の手を掴んで離さない姿とかさ…本気で天から落ちてきた天使じゃないこの子?
「橘さん…叶の白い翼とか見たことない?絶対に生えてるよ。だって叶だよ?」
「制服をお持ちしました」
「華麗なスルーありがとうございます」
橘さんが用意してくれた桶に入ったお湯で顔を洗えばさっきよりは目が回復した。
朝から隈ありブサ子な顔は見せられませんからね。しかも、叶の寝顔に見惚れて寝不足気味とか…変態かよ私。
邪念が有り余っててごめんなさい。
「んぅ…お姉ちゃん、おはょ…」
「おはよう、叶。良く眠れた?ふふっ、叶ったら寝癖が凄いことになってるよ」
「叶様、お髪を整えますのでこちらにお願い致します」
「はぁ~い…」
叶の髪は天パ気味で、朝はそのくるくるがいつもの10倍はある。だから、叶の朝はお手伝いさん達に髪を整えて貰うところから始まるのだ。
私の場合は寝癖知らずなストレートヘアーな為、櫛で少しとかすだけでいつも通りになる。
髪を整え終わったら、学校指定の制服である黒シャツに白色のブレザーとスカート、最後に白い小さめのリボンを胸元に付ければ身支度は完成だ。
叶と手を繋いで広間へ行けば優雅に珈琲を飲みながら新聞を読む両親の姿があった。
その光景は一枚の絵画のようで、二人の美しさにまた目がやられそうになる。
「おはよう二人とも。昨日は一緒に寝たんだって?パパは是非とも写真を撮りたかったよ…くっ」
「祈ったら夕食のあと、すぐに自分の部屋に行っちゃったでしょう?だから、余計に祈と一緒にいたかったのね。…今度はママも一緒に寝ようかしら?」
「何?!じゃあパパも一緒だ!」
…話した瞬間にさっきまでの美しかった光景がガラガラと崩れていくという驚きね。
だがしかし、こんなユルい会話をしている親バカ全開両親だが実際は凄い人達なのだ。
ホテル企業からファッション企業まで、様々なジャンルに携わっている日本屈指の財閥、それが「小鳥遊財閥」だったりする。
そんな世界でも一目置かれている財閥の現当主であるお父さんの名前は聖。
お母さん曰く、誰も寄せ付けないような険しい表情が痺れるくらい格好良いらしい。
つまりはイケメンである。
お母さんは私を産む以前は世界でも活躍していた元有名モデルで、名前は陽。
名前の通り、太陽のように明るい人で、その美しさは今でも健在だ。
だが、そんな私達家族に対して超デレデレな二人もいざ仕事モードに切り替わればまるっきり別人になる。
普段とのギャップが実に激しい。
「祈様、優人様がお迎えに来られました。こちら鞄になります」
「もうそんな時間か!ありがとうございます、橘さん!それじゃあ、行ってきます!夜また遊ぼうね叶!」
「うん!行ってらっしゃいお姉ちゃん!」
「?!」
「えへへっ!ママとパパのマネ~!」
朝食を食べ終わって雑談していれば、優人が来る時間になっていたらしい。
てか、叶からいってらっしゃいの頬チューされたよ?え、これ私の願望が見せた夢?
今の頬チューで空を飛べる気さえしてきた。
お返しに私も叶に頬チューをして家を出れば、門の前には黒く輝くリムジンが一台。
(わぁお。中学校にリムジンで登校とか…現実で体験出来るとは思わなかったぜ。)
車の窓から挨拶をしてきたのは白馬の王子様ならぬ黒リムジンの王子様。
さて、今日も一日頑張りましょうかね。
昨日は寝落ちして投稿出来ませんでしたm(_ _)m