〈轟 優人〉不可思議な感情。
お待たせしました!第5話です!!
常々、俺はこの自由過ぎる母親には一生敵わないのだろうと思う。
今だって理解が追い付けない話をさらっと夕食後に暴露され、絶賛脳内パニック中だ。
「………それ、マジ?」
「大マジですよ。誰が冗談で祈ちゃんと優人が婚約者同士だってことを言うんですか」
いや目の前にいるよ。
そういう冗談大好きだろ母さん。
俺がまだ小さくて純粋無垢だった時、ガチで「ペンギンは空を飛べる」と教え続けたのは誰だ。母さんだ。
本気で信じてたから、字がある程度読めるようになってから図鑑を見た時は本当に衝撃を受けた。
皇帝ペンギンとかの空を飛ぶ速さは一体どれくらい凄いのだろうとまで考えていた俺の気持ちとは。
「祈ちゃんは少なくとも貴方を好意的に思っていますし、貴方も祈ちゃんは嫌いではないでしょう?」
「そうだぞ優人。あんなにたくさんの素晴らしい能力を持ったお嬢さんはなかなかいない。何より、とても美人さんだしな」
「父さん…」
そんな自信満々に言わないで欲しい。
頭を抱えながら深いため息を吐き出し、どうしたもんかと悩む。
適当に言っているように思えるが実際はかなり重要な話なのだろう。
あの小鳥遊財閥の跡取りである一人娘を婚約者に出来たのなら、それは轟家にとって強い繋がりになる。
そして、小鳥遊財閥だけでなく、「小鳥遊 祈」という人間個人もチート級に凄い。
(あいつの苦手なもんとか見たことないし…つか出来ないことなんてあるのか?)
俺と祈は生まれた時から一緒だった。
今回の婚約者の件だって、俺と祈の両親達が幼馴染みっていうのも少なからず関係しているのだろう。
俺の親も相当だけど祈の親もマイペースな人達だからな。あり得そうだ。
「それにしても…祈ちゃん、少し雰囲気が変わったか?さっき会った時なんか別人かと思ったよ」
「確かに大人っぽくなった気がしますね。叶君とも前より随分と仲が良くなっているみたいですし。嬉しいことです」
相変わらず、怖いくらい鋭い人達だ。
俺を迎えに来た時、玄関口で少し話しただけでこの気付き様。
(まぁ…確かに凄い変化だしな。)
昨日の誕生日パーティーまではいつも通りの祈だったが今日会った祈はまるで別人だった。
子どものわりには落ち着いてるところとか言葉使いは一緒なのに、仕草や持っている空気感が全く違う。
以前のあいつは自分と他人との間に壁を作って接していた。
特にその壁は弟である叶にあった。
頭の良い叶はそれを察し、祈に対して容易に話し掛けたり甘えたり出来なかったのだ。
「叶君が祈ちゃんに抱き付いてるところなんて初めて見たよ」
「俺がいる間もずっと祈にくっついてたぞ叶のやつ。マジで最初は驚いた」
「ふふっ、それに優人ったら大人っぽくなった祈ちゃんに緊張してましたしね」
「?!」
「母にはバレバレですよ」
マジで母さんって何者。
俺が祈に対して緊張してるなんて絶対に分からないと思っていたのに…怖。
父さんもニヤニヤ笑ってるし、そんなにあからさまだったのか俺。
(心配して抱き付いた時とかも凄ぇ優しい笑い方するし…叶がいなきゃ調子狂ってたな。)
何であの時、あんなに心臓がバクバクうるさかったのだろうか?病気か俺?
前までは考えられなかった叶と3人でのごっこ遊びの時も何だかソワソワしたし…あとでババ様に相談してみよう。
物知りなババ様なら何か分かる筈だ。
「明後日に婚約の件で改めて食事会を開く予定です。祈ちゃんにプレゼントを用意する、それが出来る男ですからね優人」
「祈ちゃんがあっと驚くようなプレゼントを用意するんだぞ!」
なんて楽しそうに話す両親達に俺はまたしても深いため息を吐き出すしかなかった。
両親と別れてから心臓がおかしくなった話をババ様にすれば「あらあらまぁまぁ」と言って微笑むだけだった。
自室に戻っても祈の笑顔が頭から離れなくてモヤモヤが止まらないし、好きな漫画を読んでても頭に入ってこない。
一体、どうしちまったんだ俺は。
ーーピリリリッ
「っ、」
ベッドに寝そべりながらページが進まない漫画を読んでいれば突然鳴る電話。
ベッドサイドに置いてある携帯を取り、表示されている名前を見れば、それは今の今まで考えていた人物の名前で。
無意識に通話を開始する方のボタンを押してしまい、慌てて電話を耳に当てた。
そして聞こえてきたのはーー…
《もしもし、優人?あの…今って電話で話したりしても大丈夫、かな》
ドキリと俺の心臓が大きく鳴った気がした。
投稿が遅くなってすみません(´□`; 三 ;´□`)!
土日がかなり忙しく、書く時間を作れませんでした。その分をどこかで補って2話投稿出来たら良いなぁ…と。