幼女キタコレ!?
第2話「幼女キタコレ!?」
死神の仕事とかなんすか!あれですか!鎌でズバッとかですか!魂の取引とかですか!
そんなこと考えていると死神はクスクスと姿に似つかわしくない可愛い笑い方をした。
「やはり、人間界での私達のイメージはそんな感じですか」
「違うんですか?」
しまった!心を読まれていたか。恥ずかしい。
「そうですね簡単に言えば人間界でいう郵便屋さんみたいな感じでしょうか」
「郵便屋さんですか?」
「そうですね。行く場所なき魂をあるべき場所に届けたり、終わるはずのない命を紡いだり」
思っていたこととだいぶ違うな。
「想像していた通りのことなんてたまにしかありませんよ」
「たまにあるんだ...」
やっぱり死神ぱねぇ!
「まぁ、なにがともあれ私は死神だ!と叫んでもらっていいですか」
「ええ!どうしてですか、何か恥ずかしんですけど」
「さっさとやれよ...」
「はい...」
マジトーンだった。私涙目...。
「わ、私は死神だー!」
半分やけくそだった。
「やりましたよ。いったい何の意味が...」
そう言って振り返るとそこにはさっきまで無かった人影があった。
「どうですか?どんな風見えますか」
「か...か...」
「か?」
「可愛いかよぉぉぉぉぉぉ!」
目の前には幼女がいた。可愛い女の子がいた。
「可愛いとは何ですか!これでも死神なんですよ!」
怒ったところもまたキュートだ。
「ええ、分かっていましたよ!私が死神にふさわしい外見をしていないことくらい...」
いじけてしまったようだ。少し悪いことをしたな。
「そ、そんなことないですよ。死神に似つかわしい威厳にあふれた姿だと思います」
すかさずフォローを返す。
「本当ですか!」
ぱぁぁぁ!という効果音がどこからか聞こえてきそうなくらいの笑顔だ。まるでおもちゃを与えられた子供のようである。ダメだ!ここで笑ったら殺られる。
「あのー、全部心よめてるんですけど...」
そういえばそうだった。
「まぁ、お世辞でもそう言ってくれて嬉しかったです」
「ところでどうして急に姿が見えるようになったんですか?」
露骨に話を逸らすと幼女...死神はジト目を向けてきたがすぐに話に移ってくれた。
「それはあなたが自分のことを死神だと自覚したからですよ」
「私には死神さんの心が読めないのは、私に自覚が足りないからでしょうか」
「基本、死神の心は読めませんよ、あなたの心が読めるのは、やはり半分人間の血が流れているからでしょうか」
「そうなんですか」
一方的に心を読まれるのはなんか悔しいな。
「あ、それといつまでも死神と呼ばれるのはあれなんで...」
そう言いつつ身なりを正す。
「改めまして、私はモルスといいます。以後、お見知りおきを」
「私はゆきです。鹿島 ゆきです」
「もっと話したいことはあるのですが、私も多忙の身であるのでこの辺で失礼します」
そう言いつつモルちゃんは立ち上がる。
「いま私のこと心の中でちゃんずけしませんでしたか?」
笑顔が怖い。
「はぁ、まぁいいです。死神の仕事についてはまた後日」
「待ってください!私はまだやるとは言って...」
そう言いかけた私にモルちゃんはクスクス可愛らしい笑い声と一言を残して私の前から消えた。
「死神の能力が必要となる日がもうじきやってきますよ」
無邪気な子供のような、けれど決して暖かくはないそんな声だった。
目が覚めると既に朝日が昇っていた。どうやらいつの間にか寝てしまっていたようだ。
ふと、昨日のことを思い出す。死神か...夢だったのかな?それにしてはリアルだった。けれど昨日死神にあったというような証拠があるわけではない。そんなこと考えていると1枚のプリントがはらりと床に落ちた。昨日、林道さんが届けてくれたやつか。そういえば目を通していなかった。
「そっか、今日だったか、学園祭」
正直、だるいが私にも作業が充てられてるため休むことはできない。まだ眠い頭を無理やりたたき起こして朝の身支度をする。
「市民の皆さんは十分注意してください。続いて今日の天気は...」
朝食をとりながらぼんやりニュースを眺めていると、時計はすでに7時を回っていた。
「今日は晴れか、じゃあ傘はいらないな」
ふと、玄関の扉に手をかけたとき昨日のモルちゃんの一言が頭をよぎった。
「死神の力が必要となる時が来るか...」
あいにく私はそんな力必要ないし、怪しげな仕事を引き受けるつもりもない。そう思いつつ私は外に出た。
****
学校へ向かう道中、うざいやつの声が聞こえてきた。
「おーい、ゆき!おはよー」
朝から元気なやつだ。私はため息をついてしまう。
「人の顔見るなりいきなりため息かよ!」
時々こいつの元気がうらやましくなるな...。まぁ、こいつになりたいとは思わんが。
「なんだよ...人の顔ジロジロ見て」
柏木が聞いてきた。
「いや、あんたは悩みとかなさそうだなぁ...とか思っただけ」
「失礼な奴だな、俺にも悩みの一つや二つあるぞ」
それは意外だな、こんなやつにも悩みはあるのか。
「例えばどんな悩み?」
純粋に気になって聞き返す。
「うーん、学園祭どこまわろっかなとか?」
平凡すぎる悩みだ。私が昨日いろいろあったというのに、こいつはへらへらと...。なんか腹立ってきたな。てかこいつなんで私のとなり歩いてるの?コミュ力?コミュ力の塊なの?
「てかなんで私のとなり歩いてるの?」
「ダメか?」
「ダメ!いや!今すぐ天に召されて!」
「ひでぇな、さすがの俺も傷ついたぞ...」
そう言いつつも柏木は笑っている。
「なに笑ってるの?もしかしてМなの?」
一歩距離を開ける。
「そんなんじゃねーよ」
ただ柏木はその一言だけかえした。
(昔は話しかけても無視されるだけだったのにな)
頭の中に直接言葉が流れ込んできた。
「ん!?あんた今なんか言った?」
「何も言ってないぞ?」
「そうか...きのせいかな」
確かに今、心の声が直接聞こえてきた気がする。けれど今は何も聞こえない。やはり気のせいだったのかもしれない。
****
そんなこと考えていると、学校についてしまった。
「じゃあ、私こっちの教室だから」
「待て、俺も同じ教室なんだが...」
「じゃあ、先に行って」
「なんだよ、最後まで一緒に」
私は無言のまま柏木をただ見つめた。
「ん、そうか分かった。俺は空気の読める男だ」
そう言い残すと柏木は教室に向かって行った。絶対になんか勘違いしてやがるなあいつ...。学校内は学園祭の浮ついた空気で染まっている。
(トイレに行きたいならそう言えばいいのに)
また聞こえた。気のせいじゃなかったか...。けど、心の声が全部じゃないにせよ前より鮮明に聞こえた。
「自覚するところから...か」
モルちゃんも言っていた。自覚するところから変化は起こると。私は眉間を抑えながらため息をついてしまう。どうやら今日もため息だらけの1日になりそうだ。とりあえず人の多い場所は疲れる移動しよう。心もなるべく読まないように心がけるか...。頭が痛くなるだけだしな。私は気持ちを切り替えて教室に向かった。
****
教室に入ると一部のクラスメイトの視線が刺さった。怒りを含んだ感情、嫉妬ってところかな。どうやら柏木と登校してきたのを見られていたようだ。
忘れがちなことだが柏木は割とイケメンだ。今感じた感情は柏木に思いを寄せる女子達のものだろう。やはりあいつと関わるとめんどくさいことになるな。これからは対応を考えねば。女子達の痛い視線を感じながら朝のホームルームがはじまった。
「ということで、今日は学園祭です。学校外からもたくさんの方がいらっしゃるので失礼のないように」
先生の話が終わり教室中が一気ににぎやかになる。
今日から学園祭が始まる。
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