私の秘密
第1話「私の秘密]
「くだらない」
私は雲一つない空に向ってそうつぶやいた。
人間関係とかだるいのにどうして人は群れてばかりいるのだろう。
「おーい、待てよ! 待てってば!」
そんなことを考えている私の後ろから間抜けな声がした。
「はぁはぁ、やっと追いついたぞ、ゆき!」
振り返ると、やや、やせ型の髪の短い男性が息を切らしてそこに立っていた。因みにイケメンである。こんなにも息を切らして私を追いかけてきてくれたのか、なにがともあれ私はこの人に声をかけなければならないだろう。だから私は自分のできる精いっぱいの笑顔で彼にこう告げた。
「どちら様ですか? というか名前で呼ばないでください、警察よびますよ?」
決まった!誰も寄せ付けない完璧な挨拶だ。
私の口から嘘偽りのない言葉がスラスラ出てきたことに悦に浸っていると彼が食い下がってきた。
「いや、おかしいだろ! 初対面じゃないだろ! てか教室で隣の席だろ!」
激しい突っ込みの嵐だ。
「あーはいはい、隣の席の佐藤君ね」
「椿だ!柏木 椿だ!お前今適当に多そうな名字いっただろ!」
あー、こいつマジめんどくさいわ、一瞬でかかった言葉を私はなんとか飲み込んだ。
「で、その加藤君が私に何の用ですか?」
あくまで嫌悪感を隠してクールに返す。
「だぁかーら、加藤でも...まぁいいや...。ほらこれ、ハンカチ落としたぞ。」
わざわざこのために走って追いかけてきたのか私だったら絶対無視するのに。
「ありがとう...」
私はハンカチを受け取り持っていたアルコール消毒液をプッシュした。
「お前...俺に対する扱いひどくない?」
「いえいえ、私は誰に対してもこんな感じです」
胸を張ってそう答える。
「自慢げに答えるなよ...」
柏木は呆れたようにそうつぶやいた。
「ところでゆきは今帰りか?よかったら一緒に...」
「いやです★」
即答だった。
「お前のそんな笑顔同じクラスになって初めて見たよ。ちなみに理由は?」
「家に帰る途中なんで」
私は足早に歩きだした。
「いや、だからその帰り道を一緒にだな...あっ!待てなんだその全力疾走は!」
****
「ふぅ、ようやくまいたか...疲れた。あんなにしつこい奴ははじめてだ」
私は家の玄関をくぐるとそうつぶやき一息ついた。誰もいない、一人で住むには広すぎる冷たい空間だ。でも私は不思議とこの空間が嫌いじゃない何故だろう?よくわからないや...。
私の名前はゆき、鹿島 ゆき、人と関わることが苦手な高校1年生だ。人と関わることが嫌いな理由の大きな部分、それは私の体質、対話している相手の感情が大まかに読み取れてしまうためだった。心が読めるといっても実際に考えていることが分かるわけでわない。ただ感じるのだ、その言葉に隠された感情を、例えるなら人間の喜怒哀楽の部分を強く感じるといったところだろうか?自分のこの能力に気が付いたのはいつだっただろうか。少なくとも、物心ついた時にはすでにあった。
「はぁ、嫌なこと思い出した」
私はそうつぶやき自分のベットに横になった。
「ピーンポン」
はぁ、めんどくさいな居留守使うか。
「ピンポーン」
そんなことを考えてると2回目のチャイムが鳴った。仕方ない、出るか。
「はぁーい」
重い気持ちで玄関の扉を開けた。
「あー、よかった。鹿島さんいてくれた」
玄関先にはクラスメイトの林道夏樹が立っていた。林道夏樹、私のクラスの委員長だ。人当たりも良く、クラス外からの人気も高い。ゆきと夏か、名前の通り正反対だな私は、そんなくだらないことを考えていると再び林道さんに話しかけられた。
「大丈夫?顔色も悪いしボーっとしてたけど」
「ごめん、大丈夫だよそれより何か用事だったかな?」
考え事をやめて林道さんに向き直る。
「うん、はいこれ」
そう言って1枚のプリントを私に手渡す。
「鹿島さん学校終わったらすぐ帰っちゃうんだもん、もらい忘れてたよ」
「わざわざありがとう」
私はすぐにお礼を言った。すぐにでも会話を打ち切りたかったのだ。
「うん、じゃあまた明日学校でね」
そういうと林道さんは帰って行った。彼女の姿が見えなくなってから私は大きくため息をついた。
「はぁー、ほんとに疲れる。」
哀の感情か...。大方、友達がおらずプリントの存在に気ずかなかった私にでも同情していたのだろう。他人の気持ちが自分に流れ込んでくるのはどうにも気持ち悪い。
「はぁ、今日はため息ばかりだ。とりあえず横になろ」
そう思って自分の部屋に戻ろう時...。
「ピンポーン」
再び家のチャイムが鳴り響いた。流石に渋い顔をしてしまった。しかし、無視すると後々面倒だ。私は重い気持ちで扉を開いた。
「どちら様ですかー?」
玄関先に出ると...。
「あれ?だれもいない」
聞き間違いか?そんなに疲れているのかな。そう思いつつ扉を閉めようとした時...。
「ピンポーン」
三度、チャイムが鳴り響く。
「誰もいないよね...。故障かな?」
私は玄関先に目を凝らす。
「何かいる...。」
そうつぶやいた瞬間、全身に鳥肌が立つような不気味な声が響いた。
「やはり...私が見えるか...」
玄関先には禍々しい、言葉では言い表せない何かがいた。
動けない...。全身金縛りにあったようにその場から動けない。
「ふむ、やはり私がみえているようだな...」
そう言いながら禍々しい"何か"が私に向かって近ずいてきた。
「はっきりとは見えてないか...半分といったところか...」
そいつは私の前まで来て肩に手を置いた。触れられると、不思議と体の震えが止まった。それからのことはあまり覚えていない。気が付いたら私はリビングでそいつと対面していた。
(なんなんすか!なんなんすか!この状況ー!)
そんなこんなで混乱していると、そいつが話しかけてきた。
「単刀直入に言おう...私は死神だ」
「はぁ、死神ですか...」
時間が経過していく...。
「そしてあなたも死神です」
「はぁ、私もですか...」
そしてまた時間が過ぎていく...。
「いやいやいや!ありえないでしょ!私が死神とか!」
驚きすぎて反応するのに遅れた。
「普通に人間だし!そんな禍々しいオーラ放ってないし!そもそも...」
「人間の...心が読めませんか?」
そんな一言で言葉を遮られた。
「自分を死神と気づかず人間の暮らしを送るとはなんと残酷な...」
死神から"哀"の感情が伝わってきた気がした。
「ご両親から説明は受けていないのですか?」
「父の顔は見たことありません。母は私が幼い時に事故で...」
一瞬、母の事を思い出して俯き気味にそう答える。
「そうでしたか、失言だったようです」
死神は感情の読み取れないような声でそう答えた。
「死神もそういう風に気を使えるんですね」
私は苦笑いしてしまう。
「そうでしょうか?そう言うあなたはころころ表情を変えますね」
「おかしいですか?」
死神に質問とは私も大それたことをしているなと、心の中で苦笑してしまう。
「おかしくは無いですが死神とは本来、感情の起伏が少ないものなので」
「そうなんですか?じゃあ私はやっぱり死神じゃないんじゃ...」
そう言おうとした時、今度は死神から質問がとんできた。
「私のことどうゆう風に見えますか?」
変な質問だ。
「えーと、何か禍々しい感じの黒い靄みたいなものに」
「黒い靄か...やっぱり半分ってところかな」
なにやら死神は考え始めてしまったようだ。しかし表情を読み取ることができない。感情も読み取れない。人間相手ではまずありえなかったことだ。そういったことからも目の前のものが人間以外の何かだという思いを強くさせる。
「ふむ、おそらくあなたは人間と死神のハーフといったところですかね」
「ハーフですか?」
死神は続ける。
「ええ、おそらく父親のほうが死神だったのでしょう」
「どうして父が死神だと、母ではないのですか?」
「その可能性は低いかと、母親はしばらくあなたと一緒にいたのでしょう?」
私はうなづく。
「でしたらあなたの母親はあなたが死神の血を継いでることを伝えているのでは?」
「たしかにそうですね」
母は隠し事の苦手な人だった。私にそんな大切なことを隠し通すのは無理だろう。
「そもそも死神とは人間の魂を扱うのです。人間と結ばれるという行為自体がすでに禁忌なのですよ」
「おそらくあなたの父親は自分の素性を隠しあなたの母親に近ずいたのでしょう」
死神は呆れたようにため息をついた。
「あのー、それで私はいったいどうしたら...」
「失礼、話がだいぶそれてしまいましたね」
死神は考え事をやめこちらに意識を向ける。
「死神の仕事をしてみませんか?」
死神は開口一番にその一言を口にしたのだった。
今回、初めての作品を投稿させていただいてます。拙い部分や読みにくい部分はあるかもしれないですがご勘弁ください。この物語は3話辺りから少し動き出すかなということをお伝えしておきます。何分多忙の身でありますゆえ、投稿頻度が遅いのはご勘弁ください。なんか初回から謝ってばっかりですね(笑)。まぁ、失踪しないように頑張ります!
よかったら感想などお待ちしておりますので是非お願いします。