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ロウソク売りの少女

作者:浅間未来
ウェルブという小さな女の子は大きな家に住んでいました。
私の寝ているところの隣には丸い金属の板がいくらか、置いてありました。
それを見ていると廊下から、扉を開ける音が聞こえてきました。
「ウェルブ、ほらウェルブ起きなさい」
私はそう言われたので、外は寒かったのですが、渋々、起きました。
「おはようございます、お姉さま」
私は、お姉さまに向かってそう言いました。
「調子はどうかしら、今日、一日は仕方ないわ、休んでいなさい」
と、お姉さまは言いました。
「いえ、働きに行ってまいります」
私は、そう言いました。お姉さまは本当のことを言わないからです。
「じゃあ、働きに行きなさい」
とお姉さまは言ったので、私は朝食を食べに行きました。
「おはよう、ウェルブ」
と、私よりも年上のお兄様、サファリは言いました。
「おはようございます、お兄さま」
うん、とお兄様は頷くと、お姉さまと同じことを質問しました。
「苦しくはないかい」
私は、はい、と答えました。本当に苦しくはなかったからです。
「それなら、よかったよ」
お兄様はそういうと、席を立ちました。
「おはよう、フィルガ」
と私は言いました。弟でした。
「おはようございます、お姉さま」
一番下の子供なので、私に敬語を使います。
我が家はそういうしきたりなのでした。
「お姉さま、昨日は、寝言を言っていましたが、解決したのでしょうか」
と訊かれたので、私は、
「夢の中のことは解決したわよ」
と答えました。弟は喜んで、
「それは、なにより、わたくしの幸せです」
弟はまだ、言葉遣いになれていないので、言い方がおかしいのは仕方ありません。
奥からやってきたのはお母さまとお姉さまでした。
「おはよう、皆さん」
「おはようございます、お母さま」
私たち兄弟は同時に答えました。
一人ずつ、母親が、名前を呼びました。
「ウェルブ」
「はい、お母さま」
「あなたは、体調がよくないけど、働く意欲はあるようだから、そこの町が担当ね。」
「承知しました。お母さま」
お母さまは私の体調を気遣っているようでした。
「ウェルブ、感謝を忘れない」
とお姉さまが言いました。確かに、私は一言忘れていました。
「お気遣いいただきありがとうございます。お母さま」
と私は言うと、
「もういいわ、ウェルブ」
というので、私は席へ戻りました。
それと、私は昨日と変わらない、いつも通りの体調でした。
「すみません、○○と○○は、うちにございますか?」
「僕が昨日、お姉さまに頼まれたので、買っておきました。」
私は弟に何か買ってきてと頼んだ覚えはありませんでしたが、あることには、使い物になります。私はそれを持って部屋にいきました。

「マッチはいりませんか」
私は町に出ると、マッチを売りました。
お姉さま、お兄様、私、弟は、それぞれ、母に言われた地域でマッチを売りに行きます。
「マッチはいりませんか」
私たちは、マッチを売るために雇われた子供でした。
子どもではなく、子供でした。
「マッチはいりませんか」
昼間、通行人からマッチの売り方を教わりました。
マッチに特徴を加えればというものでした。
「マッチはいりませんか」
段々、日も傾いてきました。
「マッチはいりませんか」
段々、空が暗くなってきました。
「マッチはいりませんか」
いつの間にか夕方になっていました。
「マッチはいりませんか」
マッチの数は減っていませんでした。
「マッチはいりませんか」
マッチは誰もいりませんでした。
「マッチはいりません」
と、言われた気がしました。
「マッチはいりませ」
と、クイズみたいに言ってくる人もいました。でも、買ってくれませんでした。
「マッチは?」
と訊いてくる、汚れた人もいました。
「マッチ」
需要と供給はかみ合っていませんでした。
「マ」
寒くて、声が出なくなっていました。
「」
私の声は誰にも聞こえていませんでした。
声が出ないときは口を温めれば声が出てくる気がしました。
手が悴んでいる時に、手を温めるのと、同じ理由です。
「シュッ」
赤い火が灯りました。
「シュッ」
赤い火の中に、橙色の炎がついていることに気が付きました。
「シュッ」
橙の炎は、中に何かを描いていました。
「シュッ」
中の何かには、二人の男性がいました。
「シュッ」
一人は黒い玉を作っていました。
「シュッ」
もう一人は、大きな建物で働いていました。
「シュッ」
二人目の服が変わりました。
「シュッ」
一人目の人が、黒い玉を私に向かって投げてきました。
「ボンッ」
音が割れました。
私の見たことがない、エメラルドの炎で私を包みました。
包まれた先は、化け物の世界でした。
「キャッ」
声が出たのはどこか連れられてからでした。気温が高いからかもしれません。
あるいは、この状況に安心できたからかもしれません。理由は言い表せませんが。
「ウェーイ」
「俺のクオリティ、いいだろ」
「しわ、もう少し必要じゃないか」
「これがあれば、十分だろ」
「写真、ぶれちった」
私の周りはとてもうるさいように感じます。
ここは、やはり、私の知らないところみたいです。
私は持ち物と、服装を確認しました。
どうやら、何も忘れてはいないようです。持ち物も、思い出も。
私がいるところは暗いところでした。しかし、私は慣れています。多分、ここは店の裏なのでしょう。誰も人は入ってこようとしません。
「おっと、あんなところに…あれは、何がテーマだと思うか」
一人の男性が私を見つけて、誰かにそう言っていました。
どこかで、聞き覚えのある声なのですが、顔が見えなければ思い出せる思い出も思い出せません。
「貧乏少女?でもさぁ」
私には、よく分かりません。
「お嬢ちゃん、聞こえるかなー。いくら、設定を合わせようとするのは分かるけど、そこは流石に不審者と間違われるぞ、こっちに出てきた方がいいんじゃないか」
私には、全て聞こえていたので、頷き、外に出ました。
そこには、私の見たことがない光で満ち溢れ、私が見たことがない生き物で満ち満ちていました。
私を案内した二人は、私を見ると、言いました。
「なんだ、汚れているじゃん、どうしたんだよ」
私は言いました。
「マッチはいりませんか」
そういうと、もう一人の男性が笑って答えました。
「これは、マッチ売りの少女かい。手ごろだけど、分かりやすいじゃん」
「でもまぁ、面白いな、確かマッチ売りの少女って年末の設定だったと思うけど、ハロウィーンか、それもまたいいじゃん」
マッチ売りの少女とは、私の事なのでしょうか、確かに、私はマッチを売っています。
マッチをたくさん持っています。
「マッチ買ってくれないと、家に帰れないんです」
二人は、私が来ている服とは全く違う、見たことがない、服を着ていました。
とても動きやすそうな、緑の服。もう一人は、今からでも戦いに出ていくことができそうに感じる服装でした。そして、それは、私にとって、とても新鮮でした。
「いいよ、マッチは大丈夫だから
というか、ここで、こんなことしていて、親はどこにいるの?
いくらハロウィーンでも子どもが一人じゃまずいんじゃないか」
と、もう一人の男の人が言いました。
私には、親という人がいませんでした。
小さいころから、今の主人に仕えていたので、親の姿を覚えていないのです。
なので、姉とか、弟はここの主人に仕えた順番でしかないのです。
「親はいません」
前にいる二人は顔を見合わせました。
「そうすると、迷子になったのかな」
確かに、私は知らないところにいるので、一つの迷子かもしれません。なので、私は頷きました。
「どこに住んでいる」
私は、丘の上にある館だと答えました。
「こんなところに、丘なんてないけど、お前の方が地元だろ、分からないか」
「いくら地元って言っても、電車で二十分ぐらいのところを地元とは言わないよ」
彼らはとても考えてくれました。私はこれ以上、覚えていることはありませんでした。
小さいころから教えられていたのは、マッチの金額と、「マッチはいりませんか」という売り文句だけでした。もっともこれだけでは買ってくれる人はいないので、それぞれ人の合わせて、売り方を変えるというのも学びましたが、どれも私の住処へ戻るのに役立ちそうではありません。
「交番でも行ってみるか。預けるというのは、人任せにしている気がして申し訳ないけど」
「いや、親も最愛の娘さんを交番で探しているだろうよ、逆にその方が、すぐに見つかるんじゃないか」
と、二人の話し合いは決まったようでした。
「いいかい、僕たちについてくるんだよ」
と一人は言い。
「いや、一旦ここは手をつなごう、あまりに人が多すぎるし。」
ともう一人は言ったので、マッチを持っていない、もう一つの手で、手をつなぎました。
私は他の人と手をつないで歩くのは初めてだったので、とても柔らかくて暖かいその手は、とても優しく、爽やかなものを感じました。
「絶対に手を離すんじゃないよ、できるだけ、強く手を握るんだ」
私はそう言われると、まるで、釣られた魚のように、私は人海をすり抜けていました。
「人、多いけど、大丈夫かい」
と質問してくれましたが、そこに、いつも見ているような人と言える者はいませんでした。
妖怪、光るもので包まれた者、動物などなど、十人十色でした。
どれも一つとして、同じものはおらず、そして、どれも自由に動いていました。
もしかしたら、私もこの祭りに参加しているのかもしれないと思うほどでした。
「マッチ売りの少女か、面白いじゃん」
「飲み物、頂けませんか。」
私は、いつの間にか、のどが渇いていたので、そう言いました。
なにかを欲しいと今までの私は言ったことがありませんでしたが。
「俺たちの飲みかけじゃあ、やっぱり悪いよな」
「流石に、見ず知らずの子どもだし、そんな話を親が聞いたらねぇ」
「訴訟もんだよなぁ」
「そうだろうね、コンビニでもよるか、お金は俺が出すし」
「じゃあ、俺も。温かいカフェオレを」
「それは、お前は自分で買え」
「そりゃ自分で買うよ、誰もお前に出してもらうなんて言ってねぇ、後払いでいいな」
「後払いかよ、まぁ、それはどうでもいいや、値段によるし。」
二人は、私が意味を知らない言葉でたくさん話しています。
いつの間にか、私は一人と手をつないでいませんでしたが、それでも、私は楽しそうな彼らの話を聞いていました。
私にとって、その話は、その中まで入り込めず、どこから断ればいいのか分からなかったのですが、とても楽しそうに話す彼らが、私とは違う何かを持っているみたいでした。
「なんか飲みたいものあるかい、マッチ売りの少女さん」
私が知る飲み物は汁物しかありません。
「コーンスープ」
あーと、二人はなぜか何か、頷きました。
「俺も、そうしようかな」
「はいはい、コーンスープ二個ね」
と、会話している光景が段々遠くに薄れていくように思えました。
「おいおい、手放している間に、流されてるぞ、彼女」
「彼女じゃねえけど。」
「とりあえず、引っ張ってこい」
と彼らが話していましたが、その声は聞こえるか聞こえないか、ギリギリになっていきました。
「おいおい、大丈夫か」
「はい」
私は、返事とともに手を伸ばすと、彼の手をつかむことができました。
「よかった、とりあえず、あいつのいたところに戻るか」
そう言うと、彼は、遡上するサケのように、男の人がいたところまで戻ってきました。
「全く、お前は不安だ。ちゃんと手を繋いでおけよ」
「すみません」
どこか、謝らないとといけない気がしました。なので、私は謝りました。
「君は全く悪くない、手を掴まれていた方なんだからそれは、どう見ても失くしたときは、掴んでいた方が、悪いと思うよ」
そう、一人は優しく私に対して言ってくれました。
「というわけで、店の中に俺が連れてく、お前じゃ不安しかねぇ」
ありがとうございます、と私が言う前に話は変わっていました。
「だったら俺も、店の中に行くよ」
「お前、前陶芸展いった時に、作品二つ割っただろ、ただでさえ仮装しているんだから、お前はここで待ってろ。やっぱり怖いし、俺にはトラウマしかない」
「まだ、それ言ってんのかよ、まぁいいや、寒いけど」
彼らは結論が決まったらしく、私は、目の前にある、雑貨屋さんらしき建物に向かいました。
「あいつ、寒いだろうからな、早く戻らないとな」
とその人は独り言を話していました。私はそれに頷きましたが、それに気づいたかどうかは分かりません。
横には、多分、紙を縦に丸められたものが、見たことがない、透明な上にカラフルな袋に詰められているものがありました。
カラフルな袋には火が描かれていました。
私はそれを見つめていたのでしょう。緑の服を着ていた男声が、私に向かって声をかけました。
「まだ、この店は花火を売っているのか、保管、大丈夫だろうな、湿気っていたら、商品にならないだろうに」
「花火?」
初めて聞いた言葉でしたが、袋に描かれていた絵も気になったので、質問をしました。
「そうか、最近の子って花火、禁止されているところも多いから、コンビニで売っていても知らないのか。俺の世代なんて、よく砂浜とかで遊んだんだけど。」
と、話してくれましたが、私には、ほとんど分かりません。知らないところには、知らないことも多いのでしょう。
「まぁ、花火大会とかって呼ばれてる、あの打ちあがる花火とは違うんだけど、うん、そうだね、これは入っていないや、たまに小さい打ち上げ花火が入っているんだけど」
と彼は私に説明しながら、黒色の箱をひたすらなぞっていました。魔法の装置か、なにかなのかもしれませんが、私には分かりそうにありません。
「あったあった、そうそう、これこれ。」
と言いながら、黒い箱の反対側を私に見せてくれました。
それは、絵が光って映しだしてくれる箱でした。どうなっているのか、気になりましたが、人のものなので、それを見るだけにしました。
「きれい」
と思わず、口からこぼれ出てしまいました。言いたくない言葉ということではありませんでしたが、自分から感動を口にするなんてあるのか、と自分自身の発言に感動するぐらいの出来事でした。
「やっぱり、見たことなかったのか、しかたないね、湿気っていたら、ごめんだけど、あげるよ、これ。トリックオアトリートか?ちょっと違うか」
と微笑みながら私に話しかけてくれました。その人は、それを手に取ると、金属でできた丸いもの、も二つ手に取って、反対側に人がいる、机の前にそれらを持っていきました。
その緑の人は、何かに気づいたようです。
「やべぇ、全身タイツだったの忘れてた!」
そういうと、周りの人たちは失笑していました。
雑貨屋を出ると、さっき、彼が持っていた金属の丸いものと、花火というものが入っている袋を私にくれました。
袋の方は、ただ、なんとなく受け取りましたが、金属の方に関してはなぜか熱くて触れそうにありませんでした。
「確かに熱いな、嬢ちゃん」
「一旦、公園にでも行った方が休めるか」
「裏の公園でいいか?」
彼らはそう会話すると、静かに、先ほど手を繋いでいた戦の服を着た人ではなく、緑の服を着た人と手を繋ぎながら、私の知らない場所に向かいました。
「全く、人の流れに酔うところだった」
「同じく、さすが都会は違うな、地元だったら、ハロウィーンに仮装している人なんて、一人いるかいないかぐらいだし、そんなところで、こんなの着てたら、警察に通報されるの一択だし。」
「いや、うちは、そこまでではないんだけど。」
淡々と話す彼らが、とても変化を楽しんでいるように見えました。
私はこの状況を楽しめているのか、分かりません。それでも、私、頑張らないといけないのかもしれません。何を頑張ればいいのか、私には分かりませんが。
「それ、花火じゃん、コンビニで売ってたん?」
と、私に訊かれましたが、そもそも、コンビニとはどういうものか分かりません。
おおよその察しをつけて、あの雑貨屋さんがコンビニというお店なのかということぐらいでしたが、間違ったことは、商売の不利益につながると、お母さまは言っていらした以上、言うわけにはいきません。
「そうそう、この時期まで売れ残ってるし、もう湿気ていると思うんだけど」
「でも、一応、十年ぐらいは、持つって親父が言ってたし」
「あーそういえば、お前んとこ、花火屋だっけ?」
「う、うん、まぁ、これでも?」
私は、熱くて丸い金属をひたすら持っていました。
「飲まないの?」
と、緑の服を着ている人が言いました。一体、私はここから何を飲めば良いのでしょう。
「飲まないんじゃなくて、飲めないんじゃないの」
「飲めないって?コーンスープを頼んだのに?」
「いや、そうじゃなくて、ほら、最近、温かい容器ってさ」
「温かい容器?」
「ほら、最近は、こういうのって、ペットボトルが多いからさ、こんな丸い金属を目の前にして、空け方が分からないんじゃない?」
「ふーん、そういうもんかな?」
「まぁ、そういうもんでしょ」
どうやら、私のことみたいでしたが、多分、私にとって、どちらも知らないと思います。
私の世界では知らないものだと思います。
「いいかい?」
と、私に話し始めました。
「ここのつまみを持ってごらん」
そこにつまみはありません。
「あーうらうら」
逆側を見ると、確かにつまみは存在していました。
「それを上に引き上げる、ちょっと力がいるだろうけど」
不思議な金属がパチンと音を立てて持ち上がると、その反対側の溝があった部分を境に下に凹みました。
「で、飲む!」
というと、その男性は、その金属に口をつけました。
なので、私も真似をしました。
すると、鼻の上から、熱い液体がかかってきました。
「あーそこも、説明しないとだめなのか」
「全く、説明不足なんだから」
「説明していないやつに言われたくない」
と、聞こえたので、凹んでいるところを逆向きにしました。すると、口の中に、温かい、コーンスープの味がしました。
私は驚き、むせてしまいました。
「大丈夫?」
そう言いながら、背中をさすってくれました。私の背中は小さいので、さする場所もほとんどないように思えましたが。
なんとか、呼吸を整えると、私はもう一度驚きました。
「どうだ、コーンスープ、この会社のものは結構おいしいんだよね、まぁ、あれだな、粒なしなのは、少し残念だけど、それぐらいは、逆に缶ということを考えると、その方がいいかもしれない。」
コーンスープはいつも小母さんが作るものしか飲まないので、良し悪しを感じることができませんでしたが、これはこれで良さがあると思います。
「おいしいだろ、これ」
「はい」
「いい笑顔だな、お嬢さん」
私が笑顔なのか分かりません。
「ついでに、花火もやってみようぜ」
「この公園は大丈夫なのかよ」
「あっちの看板を一応、見てきたけど、書いてないよ」
「書いていないって。ちゃんと見たのかよ。よくよく見ないとだめだろう。と言ったはいいけど、確かに書いてないなここに。」
というと、もう一人、緑の服を着た人は、さっき、私に下さった袋を開けると、中から丸められた髪を取り出してきました。私の周りでは見たことがない、薄い紙だということに、空けた時、気づきました。
「マッチ、くれるかな」
私に、言って下さった言葉でした。
私は今日、マッチひと箱も売っていないことに今更ながら気づき、お母さまの怒る顔が瞼の裏に浮かびましたが、ひとまずは、そういう表情をされなくてすみそうでした。
そう思い、渡されたのは、夕暮れの空のように輝いている、コーンスープが入った金属よりも薄い丸い金属でした。
「まぁ、これで少し足しにしてくれや、五百円、これだけあれば、家まで帰れるんじゃないか。いや、この年だと、家までの帰り方とか、分からないか。分かるか?」
「すみません、分かりません」
「だよなぁ」
彼は、少し、申し訳ない表情をしていましたが、そんな表情もすぐに晴れました。
「まぁ、そんなときは、花火でもして楽しもうぜ!」
と、言っている時には、もう袋が破かれていました。
持ち帰ってどうするというわけでもありませんでしたが、心なしか虚しさというものが、袋の中から出てきているみたいでした。
「百見は一つの行動にしかず!」
「さっきっからやたらビックリマークがついているけど」
「気のせいだよ、きっと」
私はただ聞いているだけでは分からない高度な会話をしているように思えたので、ただ黙り聞いていました。下手に割り込むと、話を壊しそうな気がしたからです。
「彼女のマッチ、五百円だってよ」
「まじか、原価から考えると丸儲けじゃん」
「って言っても、俺が五百円の値段をつけたんだけどな」
「まぁ、マッチ売りの少女から買うんだ、それぐらいボランティアだよな」
「なんだよ、お前が買ったような口をして。あくまで値段をつけたのは俺だ」
「まぁ、そう強がるなって」
彼らは話し合い、鎧をつけている男の人からも、さっきより黄昏色の、金属を貰いました。
「まぁ、あいつが払っておいて、俺が渡さないのも、なんか嫌だしな。ちょっとした小遣いだ、自由に使ってくれ」
そういうと、マッチをもうひと箱買っていってくれました。
「ふーん、お前もお金をやるときなんてあるんだな」
「俺だって、そんなにケチじゃない」
「まだ、コーンスープ代、払っていないのに?」
「うちの親父が言ってたんだけどな…」
「誤魔化すな」
また、会話は始まったようでした。
「マッチありがとうな」
「はい」
結局は売れ残り、ということですが。
「案外、花火やるときって、火をつけるのに困ったりするからな」
「久々だよ、花火するのって」
「お前んち、花火屋だろ、それぐらいするんじゃないの」
「作るのと楽しむのは、やっぱり違うからな、火薬の匂いはもうごめんだ」
「あーそうなんだ」
私の推論の域を出ないものでしたが、先ほどの袋に入った紙が花火というものなのかもしれません。魔法の箱から、見せてもらいましたが、マッチのように、先端から火をつける道具の一つのようです。しかし、マッチよりも派手に燃えていたのが、不可思議でした。
「よし、つけるぞ」
「水も準備できた、やっぱ公園は設備がいいな」
私はその様子を近くで見ていました。
火が、紙に燃え移った瞬間でした。
「!」
前に向かって噴水のように火が飛び出たのです。
見たことが無いはずの光景なのに、どこかで見た、二度目の光景だった気もしました。
「いやぁ、久々だけど、綺麗だな、ススキ花火」
「こんな衣装で、花火をするとかなかなかだけど」
そういうと、また、別の花火を取り出してきました。
「ほら、これはどうだ!」
その火は、私の目でも分かるぐらいに色を変えました。
赤色が緑色に、緑色が黄色に変化していきました。
「変色花火か、作るのめんどくさいんだよな」
「流石です、師匠」
もう一度、さっきの噴く花火が続きました。
「きれい…」
「でしょ、手持ち花火はやっぱりこうじゃないと」
「どうやって、光るんですか」
「それはねぇ…」
と言っている時、横から、さらに緑の人が、入り込んで、また別の花火を持ってきました。
「線香花火、ちょっと、早くないか」
「まぁ、ランダムってことで」
そう言いながら、花火に火をつけると、小さな火の玉から、火が飛び出てきました。
「えっ」
私が火の玉をこの目で見たのは初めてでした。
そもそも、火で遊ぶという感覚が私の中に存在していなかったというのもありましたが。
「驚いたろ、俺も小さい時、この花火には、驚いたね、幽霊が出てくると思ったよ」
「幽霊?」
「そう、幽霊、お化けみたいなもんだよ」
今、この状況だけでも多くのお化けがいるので、私は化かされているのかもしれません。
でも、それでも、幸せでした。
見たことがないものばかり、が幸せでした。
「幽霊と話せてうれしいです」
私は、そう言いました。
「僕も、お化けと話せたらって思うときもあったよ。でもね…」
「ほら、新しいの開けたよ」
火をつけると、さっきまで見たのとはまた違う花火でした。
一つ前の火の玉が出てくる花火と似ているような気がしましたが、それよりもメリハリがついているような気がします。
「スパーク花火か」
「見た目と音が出るんだけど、勢いがあまり強くないから、子どもでも楽しめるとかなんとか」
「子どもいないから、俺には関係ないな」
パチパチと鳴る音が、耳元まで聞こえます。
以前の思い出でも、このような音は聞いたことがありません。
「きれいな音だろ」
「はい」
「俺の周りだと、夏の風物詩というか、イメージだったね、これが」
私には、季節にイメージなど、考えたことがありません。せめて夏なら、過ごしやすいからありがたい、その程度に考えていました。ですが、あまりマッチが売れない時期でもあります。
「夏ですか」
「いまとなっては秋だけど」
「私は冬でした」
「まぁ、もう雪降り始めているところとかもあるからね」
私と、話が交わっていない気がしましたが、多分、私が間違っているのでしょう。今は秋という気温です。
そのあとも、それら四つの花火をひたすら燃やしながら遊んでいきました。
どれもマッチでつけた瞬間には、鮮やかに光るのですが、最後は、しょんぼりと消えてしまいます。
儚きという言葉に当てはめられそうな、そんな姿です。
一つ一つの花火を燃やすたびに、マッチをつけたように、物語が中に存在しているみたいでした。しかし、花火が燃え尽きるときも思い出が消えていくようなそんな感じが、どこか、悲しく感じました。
「さて、花火も、これで最後かな」
最後の一本まで燃やすのに、時間は短く感じました。
「案外、あっさりしているな」
「手持ち花火なんて、そんなもんだよな」
夜も更け、いつもなら寝ているぐらいの時間でした。
起きていないような時間でした。
心なしか眠くも感じます。
「そんな寂しい顔して、可愛い顔が持ったいないぞ」
と、緑の服を着た人が言いましたが、私は気にしていませんでした。
いつも言われていることだからです。
商品を売るときは愛想をよくしなさいと、私にはいつも聞かされます。
「お前、キャラ変化しているぞ」
「キャラは変化するものだ」
そう会話すると、戦闘服を着た人が、私に言いました。
「まぁ、確かに名残り惜しいよな、花火の終わる瞬間って」
と言うと閃いたような表情を彼はしました。
「そんな名残り惜しそうにしているマッチ売りの少女さんに一ついいことを教えよう」
そう、青年は私に対して言いました。

「ウェルブお姉さま。大丈夫ですか」
お姉さまは一向に起きる様子がありません。
周りには十本ぐらいの使われたマッチが転がっていました。
「そうなんですか、試してみます」
お姉さまは寝言を言っています。
寝言を言える程度には意識が戻ったようです。
一時期は裏道に向かって歩いたり、何かに対して手を繋ごうとしていたりと、疲れていて憑かれているように僕には見えました。
寝言を言っている限り完全に元通りではありませんが。
「これを全部それに変えることはできますか」
これとは何のことでしょう。
そう言うと、なぜか、気のせいか姉上の重さが変わっていました。
「ありがとうございます」
姉上は私に感謝しました。因みに感謝されるようなことをした覚えはありません。
すると、姉上は目を見開きました。急な出来事だったので、驚きました。
「そこにいるのはウェルブですか」
はい、そうです。僕は答えました。
「フィルガ、ここで売っていますか」
「何をでしょうか、お姉さま。」
僕はお姉さまに品物を聞くと、彼女は寝てしまったので、お兄様がここに来ると聞いていたことから、しばらく待っていました。
お兄様がここにくると、僕はお兄様にお姉さまを預けて、お姉さまに頼まれたものを買いに行きました。
夜遅くだったので、開いている店が少なかったのですが、なんとか、見つかりました。

「お姉さま、昨日は、寝言を言っていましたが、解決したのでしょうか」
昨日の夜は不思議な体験をしました。私はそう覚えています。
いろんな化け物が町の中を闊歩する、恐ろしく不気味な祭りでしたが、それを楽しんだ私もそこにはいました。
そして、その夢が昨日の夜にあった私が経験した出来事のようにも感じていました。
「夢の中のことは解決したわよ」
と、私は答えました。
それはたとえ夢だったとしても、私の中で収穫があったからです。
そしてそれは、今私がここにいるという時点で解決しているのと同然だからです。
それともう一つ、私には実益も存在しました。
「それは、なにより、わたくしの幸せです」
この声、いつも聞いている弟の声でした。しかし、また、別のところで聞いたような気がします。
このあと、私の元にお母さまがやってきました。
お母さまは私にマッチの売る場所を決めて下さると、私は一つ質問をしました。
「すみません、黒鉛とやすりは、うちにございますか?」
私に必要なのは、この二つでした。
戦闘服を着たおじさんは、もう一つ必要なものをと言っていましたが、それは枕元にあるので、心配ありません。
「僕が昨日、お姉さまに頼まれたので、買っておきました。」
そう弟が言ったので、私はついていきました。
弟が紹介した通りに、よく見ると、机の上には、金属の板が数えると百枚ありました。
また、机の引き出しにも、私が頼んだ二つのものが入っていました。
勿論、枕元に置いてあるものは、今日もおいてあるみたいです。
私は弟にお礼を言うと、昨日の夢で言われたことを言っていました。
いや、夢ではないのでしょう。
金属の板が百枚あるのですから。
それと、もう二枚、輝く色の違う、金属もおいてありました。

昨日、聞いた話を思い出しながら、私は、手元にある、鮮やかな土色に光る金属を加工していました。
「まずは、これを黒鉛と一緒に温める」
金属の板とともに黒鉛を温めました。すると、金属の板が少しずつきれいになっていきました。
「次に、やすりで、これを粉にする。
というと、俺が警察に捕まっちゃうから、これで代用する。
実際、十円玉は他の金属も含まれているからね、銅単体のこれなら、反応しやすいはずだ」
そういうと、土色の金属を私にくれました。
「あと、時代考証も、ちょうどいいだろうね、マッチ売りの少女なら」
「そういや、銅線作ってたからな、端材とか、もらえるのか。」
「そういうこと、売ってもいいんだけど、いまいち気が引けたし、だからといって使い道が見つからなかったから、何もせず持っておいた。親父が、別の時に、簡易的な花火として使えるとかって言ってた、ってのもあるけど」
ふーん、そうなんだ、と緑の服を着た人は適当な相槌を打ちました。
そして、青年からもらった、金属を私は削りました。
「で、最後にロウソクと混ぜる。ロウソクを溶かしてその中に、この粉を入れる。あとはロウソクを燃やすだけだね、色は秘密にしておくかな。多分、ロウソクはどこにでもあるんじゃないなかな」
「俺、色、知らないから教えてくれよ」
「高校の教科書でもお前は読み返しておけ」
言われた通り、私は、枕元に置いてあったロウソクを溶かし、金属の粉と混ぜました。
必然的に火をつけるものも近くにあったので、燃やしてみました。
ロウソクに火がうつると、私はそれを見つめました。
「わっ!」
そのロウソクは、エメラルド色の火の粉が周りに向かって飛んでいきました。
中心にあるのは、今まで通り、橙色の炎でしたが、そこから、知りたいことへと飛んでいく私たちのように、外へと散らばっていきました。
「そうして、最後に、マッチ売りの少女なら、マッチと一緒に、今作ったロウソクを売る。珍しいんじゃないの、色がつくロウソクって」
「はい、私は見たことありません」
「こだわってるね、応答までマッチ売りの少女なんて」
「だったら、もっと目立って自分がよく知っている、別のキャラでもよかっただろうに」
「余計なこと言うな、まったく」
という指摘や、特徴を自分で考えれば売れるという指摘があったので、私は、それを持ち、街に出ました。
「マッチはいりませんか」
私はそう言うと、いつも通りマッチを売りました。

「これを全部それに変えることはできますか」
と、少しずつ意識が薄れる中で私は目の前にいる戦闘用の服を着た男性に言いました。
「別に子どもに対して、お金をもらって端材と取引する趣味はないから、あげるよ。親には内緒だけどね、お小遣いって思ってもらって大丈夫だよ」
彼はそう言いました。
私は、何か感謝を伝えなければなりません。
そう思っていたら、伝えるタイミングを失うからです。
だから、私は彼に、彼らに感謝の意を伝えないと、ならないからです。
私は、ふと少し前に青年二人と話した会話を思い出しました。
「マッチ売りの少女ってどんな少女なのですか」
「え、知らないで仮装していたの」
緑の青年は驚いた表情で私を見ました。
私は、何にも装っていませんでしたが。
「マッチ売りの少女って、童話があるんだけどね…」
彼が話した童話は、私にとって遠いものではないと思います。
明日のわが身、という言葉が適切に当てはまるかもしれません。
もし、私が今、ここにいなければ、彼女と同じ運命をたどることになるからです。
マッチの火は夢を見せて、消えるときは、全ての夢がなくなる、私もそう思うからです。
ふと、我に戻りました。私にはお礼をしなければなりません。
どんな言葉から始めればよいのだろう、と思えば思うほど、意識ははっきりしてきます。しかし、言おうとすればするほど、意識が遠のいてく、不思議な感覚に襲われていきました。
だから、私は何がなんでもお礼を言わないと、いけません。
そういう時は、シンプルな言葉の方が伝わるような気がしました。
「ありがとうございます」
私は、そう言いました。「何について?」と一人に訊かれるような予感がしましたが、そのように声をかけてくれる青年たちは、目の前にいませんでした。
しかし、それでも、誰かに声をかけられ、誰かに抱えられて、誰かに心配され、誰かに連れていかれたのは、触覚とは異なる感覚で、私に伝わってくるような気がしました。

「マッチはいりませんか」
「マッチか、マッチだけだったら、うちは要らないかも」
と、私に一人の男性が私に向かって言いました。
「ロウソクもあります、火の粉に色がついています」
と、私が持っているロウソクについて説明しました。
「炎に色がつく?どんなのかな、俺、色、知らないから見せてくれないかな」
私は、この話し方に心当たりがありました。
それは昨日の昼、私にマッチの売り方を教えてくれた一人でした。
そして、もう一人、それとも違う人物が裏にいると思いました。
「じゃあ、ロウソクに、火をつけますね」
そう私は言うと、ロウソクに、エメラルドの火の粉が町へ散らばりました。
「お母さん、これ、買って」
「確かに、誕生日もうすぐだし、買っていこうかしら」
そのように話すお客さんが私の周りに近づいてきました。
「ありがとうございます」
私は、マッチを買ってくれた人たち、一人一人に感謝していきました。
勿論、最初に聞いてくれた男性には一番、気持ちを込めて、私は感謝しました。
私の感謝は、私を変えてくれる人に最も感謝すべきだと思ったからです。
私の聞いた、マッチ売りの少女はこの火を見て、消えると同時に、この世界からいなくなったそうです。
彼女が見ていた炎はきっと、赤色か橙色だったのでしょう。
私と異なる点はたったそれだけかもしれません。
たったそれだけでも大きな変化をもたらすような気がします。
だから、私は、色を付ける方法を教わりました。そして、それを試してみました。
それは、私にとって大きく変化でした。
今の、客が集まる姿を、マッチ売りである彼女は知らなかったことでしょう。
私はきっと色のついた、マッチ売りの少女なのでした。
最後に、私は黄金色に輝く、ロウソクの中に入れたものとは異なる金属に対して私は願いました。
「これからも、二重にご縁がありますように」

この作品は「冬の童話祭2018」に参加しています。

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