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剣に捧げる願い  作者: 滸 いろは
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第八話 隠された心

すいません……

長くなってしまいました。


良ければお付き合い下さい。

 ガキンっーーその音は静まりかえる競技場に、どこまでも響き渡った。


「勝者! 赤」


 審判の宣言に、観客席から盛大な拍手と歓声が上がる。

 皇帝が思いつき、軍部上層部が賛同した剣闘競技会は既に3日目となっている。初日、2日目までは一般からの登録者が中心の予選。そして三日目からは騎士階級以上からの登録者が参加する。

 予選の選抜方法は単純だった。

 登録者をくじ引きでグループ分けし、乱戦を想定した総当たり戦。競技場内にグループ全員が立ち、隣り合わせになった同士が只管戦い続ける、まさに文字通りの総当たり戦。言ってみればサバイバルゲーム。目的は持久力の確認と向上だ。

 日々の訓練も義務である騎士階級と違い、一般参加者は傭兵や冒険者、剣士見習いや剣士を目指す者が大半で、一般登録者は二日目までの戦いである程度篩に掛けられる。

 三日目からは篩に掛けられた一般参加者と騎士階級からの登録者同士のトーナメント。

 一見騎士階級が優遇されているように見えるが、日々訓練している騎士階級の者が一般参加者に負けるとなれば、相当の恥である。とはいえ相手が冒険者や傭兵の場合は実力者も多い。一、二回戦を勝ち上がってくる大半が彼らなのだ。そんなわけで三回戦以降はかなり激しい勝ち抜き戦となる。

 しかし、その前に。


「……なんで見世物にならなきゃならないのよ」

「俺に言うなよ。皇帝命令に逆らえるわけないだろうが」

「貴方、皇太子じゃない」

「皇太子だから逆らえないこともある」

「使えない……」

「言いたいことはそれだけか」

「言いたいこと? 他にも言い出したら切りがないわね」

「よく分かった。今日こそ謝らせてやる」


「あのぉ?お二人とも、試合を始めたいのですが……」

「あ?」

「あら! ごめんなさい」


 今日はリューシディアとレオルリヒトの模擬戦が、三回戦の前に催されることになっていた。

 リューシディアが「剣姫」であるなら、レオルリヒトは「剣神」と渾名されている。彼もまた、無敗を誇る常勝の将なのだ。

 純粋な剣技で言えばレオルリヒトに分があるが、リューシディアは魔法剣士。総合的には互角の戦いが予想されていた。

 そして始まる対決。

 高らかに響いた開始の合図と共に、レオルリヒトが地を蹴る。対するリューシディアが、剣を受けるべく身構えた……かに見えたが。


「なっ⁉︎」


 レオルリヒトが斬りつけた剣は空を裂いただけ。代わりに背後から頚動脈に突き付けられた剣。

 咄嗟に何が起きたのか、誰もが理解し得ない中、レオルリヒトだけは何が起きたのか理解していた。


「戦闘前から陽炎を使うかよ⁉︎」

「……使ってはいけない、とは言われてないわ」

「ご丁寧に影まで作り込みやがったな」

「当然でしょ。小細工でも策は策よ」


 ーー陽炎。光属性と火属性を用いた、幻影を創り出す魔法。そこに水属性で水鏡を作り

 闇属性を使って、水鏡に映った姿を黒くする。


 全て、試合開始前から準備されていた。


「甘いのよ。戦うと決まった瞬間から、戦いは始まっている」


 敗因はレオルリヒト自身の甘さだと説かれ、レオルリヒトはぐうの音もでなかった。


「しょ……勝者、リューシディア王女殿下!」


 遅れて、漸くリューシディアの勝利宣告が下り、客席からは怒涛の歓声が上がった。その歓声の中、二人は改めて礼を交わし、競技場を下りる。


「次は絶対勝つ」

「思うのは自由ね」

「その自信、砕いてやるよ」

「はっ! 簡単に砕かれるような自信なんて持ち合わせてないわ。それに私、負けるのは大嫌いなの。もう二度と負けないって決めてるから」


 リューシディアには後がない。負ければ即、人生の終焉だ。

 負けた時、リューシディアはグァルディオラの貴族の誰かに嫁がされる。リューシディアが今、こうして一定の自由を得ているのは、皇帝がそれだけの利用価値を見出しているからだ。利用価値が下がれば、あの皇帝は容赦なくリューシディアを切る。

 落ちたら死ぬとわかっている崖っ淵の人間と、一見崖っ淵に見えて、落ちても足場があるとわかっている人間とでは、同じ覚悟でも覚悟の質か違うのだ。

 リューシディアはそれを知っている。知らざるを得なかった。

 王族専用席へ戻るレオルリヒトと別れ、リューシディアは一度、与えられた自室へ戻る。


「おかえり。リューシディア」

「……兄様!」


 部屋でリューシディアを迎えた人物に、リューシディアは珍しく屈託のない笑顔を見せた。

 リューシディアと同じく銀髪。だがオッドアイのリューシディアと違い、瞳は両眼とも深紫だ。だが面差しは良く似ており、一目で兄妹とわかる。

 リューシディアの実兄、リュクローム。

 普段なかなか会うことの出来ない兄に出迎えられ、リューシディアの気持ちが高まる。リューシディアにとって、何より誰より大切で、唯一無条件に心を開ける最愛の兄。

 リューシディアは確かに両親から愛されていた。だが、決して恵まれた王女ではない。側室の娘として生まれ、父王は優しく慈しんでくれたが、国王として忙しくする父に会えるのはごく稀だった。

 側室でありながら王の寵愛を一身に受けているという、ただそれだけの理由で、リューシディアの母もリューシディア自身も、王の目の届かぬ場所では心無い暴言や悪質極まりない嫌がらせを受けていた。

 尤も、そのお陰で生き残れたと思えば、悪いことでもなかったーーリューシディアはそう考えている。


「見事な勝ちっぷりだったね、ルゥ」

「正攻法ではありませんけどね」

「戦いに定石など不要だろう?」

「そう仰るのは兄様だけです」

「生き残ることこそ重要だと、なぜ皆、理解しないのだろうな」

「滅ぼされたことがないからでは?」

「強国であるのも、考えものか」

「……兄様は、そんなのことを話に来たの?」

「まさか! ルゥの祝いに来たに決まってる!」

「なら、ちゃんと褒めてください!」


 リューシディアは、ぷぅ、と頬を膨らませてリュクロームを睨む。その表現は年相応に幼く、可愛らしい。

 我が妹ながら、将来が怖い……と思いつつも、リュクローム自身リューシディアが可愛くてたまらなく甘やかしたくなるのだ。

 だからこそ、心が痛むこともある。


「リューシディア。私の、最愛で自慢の妹。今日はなんでもお願いを聞いてあげるよ。皇帝陛下から、今日から競技会の終わる日まルゥの側に居る許可を貰ったんだ」


 心に渦巻く気持ちに全て蓋をして、リュクロームは微笑んだ。途端にリューシディアの表現は明るくなる。


「何もいらないわ! 兄様がずっと一緒に居てくれるだけで、嬉しい!」


 ぎゅっと抱き付いてくるリューシディアに、リュクロームの心はほわほわと暖かく、そして、ぎゅっと胸が締め付けられる。


 ーー 俺は、何を考えた?


 咄嗟に胸の内を過ぎったものに、リュクロームはぞっとし、否定した。


「それじゃあ勝ったご褒美にならないよ?」

「兄様が一緒にいてくれるだけで、褒美だわ! 今日はこのまま、二人でゆっくり過ごしたいです」

 抱き付いたまま、下から見上げてくるリューシディアの目には、純粋な好意と喜びが溢れ、リュクロームの心を癒す。


「全く。ワガママの聞き甲斐がないな」

「えー? 兄様と一日一緒に居たいって、十分ワガママだと思うけどなぁ」


 心からそう思っているリューシディアに、リュクロームの心が幸福感と罪悪感に揺れる。

 家族と居たいという、ごく当たり前のことを「ワガママ」と言ってしまう、哀しくて優しく、誇り高い妹。

 リュクロームは、少しずつ育つ気持ちを自覚しながら、同時に絶対に悟られてはいけない気持ちだと、強く自身を戒めた。


戦闘シーンを臨場感溢れるように書けるようになりたいっっ!!


会話でごちゃっとなるのは、悪い癖ですね。

このページは後日改稿するかも。


今日もありがとうございました!

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