第二十話 密やかな足音1
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亀より遅く猫より気紛れな更新ですが、楽しんでいただけましたら、嬉しいです!
「イェンリート公は約束通り軍部の動きを牽制していらっしゃます」
「そう。それであの馬鹿は?」
「姫様。幾ら何でもその呼び方はどうかと……」
「馬鹿で充分よ。自分の足元も見えてないんだから。 だからこんな手間暇掛けてお膳立てしてるんじゃないの」
「……」
身も蓋ない、正し過ぎるリューシディアの言葉に、イアリナもティルクも無言を通した。
「それより、あの変態爺の相手は疲れたでしょ。嫌な役を押し付けて悪かったね、ティルク」
「いえ。いただいていた薬が役に立ちましたから」
「なら良かった。それで変態の動きは?」
「リューシディア様の予測の範囲を出ていません。軍部の上層部は兎も角、中堅どころは軒並み流れてます」
「そっかー。本当はこんなことまでする義理なんてないけど、売れる恩は売っとくべきよね」
和やかな空気ではあるが、此処は牢屋であり、リューシディアもイアリナも序でにフランも、未だ牢屋からは出ていない。
ティルクも三人を牢から出す為に来たわけではない。
「引き続き内偵をお願い。こちらは今夜にでも脱出するわ」
「畏まりました。リューシディア様もイアリナ様も、お気を付けて」
ティルクは名残惜しそうにしつつも、三人を解放する事なく牢屋を後にした。
さて。
ここで状況に取り残されている男が一人いる。言わずもがな、フランだ。
フランには、ここが何処なのかさえはっきり分かっていないのに、目の前の二人はここが何処なのか、明らかに分かっている。
とはいえ、フランとて決して鈍い訳ではない。
先ほどの会話で、明らかにリューシディアの配下だと分かるし、男の身形から、それなりの身分のある人物に仕えていることもわかる。
だが、彼はそれらを繋ぎ合わせる……点と点を結んで一本に結ぶことは、酷く苦手だった。自覚があるがゆえに、フランのプライドはそれを認めない。
結果。
「おい! どういう事なのか説明しろ!」
謙ることも出来ない彼は、高圧的な態度を取る以外なかった。もしこれがフランの部下であったりフランの実家の爵位より下の者であれば、一から全てを説明したかもしれない。しかし、相手は実質的な身分はないとはいえ、一国の王女としてグァルディオラ皇帝が認めている姫である。しかも性格はーー
「ご自慢の優秀な血筋とやらから優秀な頭脳を受け継いでるならわかるでしょ」
この通り、捻くれている。
「無駄ですわ。リューシディア様の深謀遠慮など、このような屑には到底想像もつきませんよ」
「……いや、そこまでは言ってない」
「似たようなものです」
「ぜんぜん違うから!!」
二人の会話に、フランの握り締めた拳が怒りで震えた。
「いい加減にしろっ! 何処まで私を愚弄する気だっ!」
本人的には、最大限の怒りを込めて怒鳴ったつもりだったのだがーー
「分かってないのは事実だろーが」
それまでの軽口を止めた二人が、示し合わせたかのように根底にあるものを串刺しにした。
「馬鹿は放っておいてーーイアリナ。鍵は持ってるわね?」
「もちろんです」
「予測範囲内とはいえ、少し動きが早すぎるわ……あのクソ狸、まさか面白がって余計な事してんじゃないでしょーね」
「……否定、できません」
「あぁぁぁっ! だからユーモアある紳士ぶって無駄に茶目っ気とか出す暇人は面倒なのよっ! あのクソ狸! ここから出たら一回〆てやる」
「協力致します」
リューシディアは、気持ちを落ち着ける為に、とりあえず脳内で憎ったらしい、本当なら協力なんて仰ぎたくもなかった某大御所貴族の首を締めた。
「よし! ひとまず気は済んだ。ーー夜まで寝るわよ。フラン・マドリュース。あんたも国を思う貴族の端くれなら、個人的感情は蓋をしとけ。血筋しか誇れない馬鹿でもそれくらいは分かってるでしょ」
「貴様っ……!」
「うるさい。黙れ。気が散る」
「っ……ーー」
イアリナ共々、あっさり石造りの冷たい床に、薄っぺらい毛布を纏って、リューシディアは早々に横になると、言い返そうとするフランを睨んだ。
まるで刺し殺さんばかりの鋭い視線に、フランは言葉を失い、苛立ちげに自らも同じく薄っぺらい毛布を纏って石床に座り、片膝を抱えた。
ーー殺される
一瞬でもそう感じてしまったフランは、軽く頭を振って、立てた片膝に頭を凭れさせた。
進まない…
書きたいことがあり過ぎて。
結末は決めているんですが、そこに持って行くには。説明も欠かせなくて……
地味に頑張ります!




