表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣に捧げる願い  作者: 滸 いろは
20/23

第十九話 仕掛けの仕上げの裏には愛情

ローペース過ぎてすみません。

でも!

読んで下さる方々がいることが、本当に、心から励みになっていますっ!


ありがとうごさいます!!

 空は重い曇天に覆われた夜だった。


「……来たか」


 リュクロームは横になっていた寝台から身を起こし、静かに窓辺に近寄ると、音を立てないようにゆっくりと窓を開けた。

 暫くして、その窓枠にひょこりと手が掛けられた。その手を目で追うと、その先に見慣れた美青年の苦笑があった。


「夜分にすまんな、リュクローム殿」

「……随分と無茶をされましたね」

「小言は後で聞く。とにかく、入れてくれ。この体勢は流石にしんどい」


 窓枠に掴まったままのレオルリヒトは、窓枠にぶら下がったまま苦笑を更に深めた。


 ーーーーーー


「時間を取って貰って感謝する」


 窓から侵入したレオルリヒトは、向かいに座るリュクロームに詫びた。

 レオルリヒトとリュクロームの接点は、少ないようでいて多い。それは二人が軍属の立場であることに起因している。ただ、リュクロームはリューシディアに付いていることが多い為目立たないだけであった。


「しかし、態々城を抜けてここまでくるなんて、君、ヒマなのかい?」


 流石に侍従に頼む訳にもいかず、手ずからお茶を用意したリュクロームは自身の入れたお茶の味に満足して微笑みながら、レオルリヒトには刺すような鋭い視線を向ける。


「暇じゃないさ。でも貴方しかいないからな」


 レオルリヒトは、茶の入ったカップをソーサーに戻しながら、にやりと笑った。


「リューシディアはどこだ? 何をしようとしている?」


 遠回しな言い方をせず、真っ直ぐに切り込んできたレオルリヒトに、リュクロームは表情には出さずに苦笑した。

 予定通りではあるが、レオルリヒトの真っ直ぐさは危ういと思う。市井であれば、その気質は尊ばれるかもしれない。だが彼が身を置くのは権謀術数に長けた妖怪が闊歩するーーとまでは言い過ぎかもしれないがーーその真っ直ぐさが仇になる世界だ。

 これは一種の賭けだな、とリュクロームは思案する。

 妹のリューシディアはレオルリヒトを買っているが、リュクロームは別視点からレオルリヒトを見ていることもあり、リューシディア程には信用していない。

 確かに、頭の回転は早い。

 だが、素直過ぎる。

 思案した末、リュクロームは言葉を選びながら口を開いた。


「リューシディアの居場所を知って、どうするのかな?」


 レオルリヒトから見てリュクロームのその態度は、レオルリヒトの予想を裏付けるものだった。


「あいつが、勝手をするなら必ずそこには意味がある。そして、あいつは周囲の誰かに、必ず手掛かりとなるものを残す。だが今回はそれがない。ならば残された手掛かりは、貴方しかいない」

「買い被りだねぇ? ルゥはさ、こう、と決めたら誰の意見も聞かない子だよ?」

「貴方以外はな」

「私の意見だって同じだよーー私はあの子の気持ちを最優先するだけだよ」

「っーーそれがっ!!」


 リュクロームが僅かに声を荒げ掛けたとき、リュクロームはふっと顔を窓に向けた。それはレオルリヒトが侵入した窓と同じ窓だ。

 リュクロームは、レオルリヒトの悪運の強さを感じて嘆息した。


「レオルリヒト皇太子。貴方は本当に運が良いよ」


 そう言い置いて、リュクロームは窓辺に近寄ると、躊躇いなく窓を開いた。人一人がやっと通り抜けられるくらいの隙間から、するりと音を立てずに忍び込むその姿は、レオルリヒトには見覚えのない人物だった。


「こんな夜更けにすまないね。二人は元気かい?」


 迎え入れたリュクロームは、親しげにその人物に声を掛けた。レオルリヒトからは逆光で顔はわからないが、背格好から男であることは確かに思えた。

 事実、リュクロームに対して片膝を付いて頭を下げる人物から紡がれた、声も言葉も、男のものだった。


「リューシディア様、イアリナ様とも、お元気でいらせられます。若干一名、予定外の足手纏いがおりますが、お二人とも気にされるどころか、程の良い暇潰しとされて、戯れておられます」


 その言葉に、レオルリヒトの腰が浮いた……が、目線だけでリュクロームに制されて、無言でソファに腰を戻した。


「それなら良かった。リューシディアとイアリナ殿が万全なら問題はないよ。わざわざすまなかったね。ティルト」

「……リューシディア様の為ですから」

「うんうん。そういう君だから、僕も安心出来る。これからも頼むね。あの子は……あの子は自分を蔑ろにするから」

「……必ず、守ります」


 事情のわからないレオルリヒトを置いて、二人の会話はあっさり終了した。

 忍び込んで来た青年は、来た時同様、僅かな窓の隙間からするりと姿を消した。


「……リュクローム殿。しっかり説明してもらいたい」


 レオルリヒトは、自分が完全に遅れを取っていること、蚊帳の外であることを自覚する余り、座り切った目でリュクロームを睨み付けた。

仲間外れが嫌いな、寂しんぼな王子様。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ