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剣に捧げる願い  作者: 滸 いろは
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第十五話 仕掛けは念入りに ー閑話休題ー

本作の主人公は、リューシディアです。

が。

子供は一人で大きくなる訳じゃありません。

見守る大人が周りにいるから、転んでも立ち直れます。

子育てに正解はないんだと思います。

 レオルリヒト・デュオ・ヴァルスウェイル・グォルディオラ。グァルディオラ帝国ヴァルスウェイル朝第二十三代皇帝の長子として生まれ、幼少期から次期皇帝となるため、文武ともに徹底的に教育されてきた。そして幼いながらも周囲の期待に応え続けてきた少年は、六歳の時に己に魔術の才能が皆無だと知らされた。

 グァルディオラ皇室には、代々魔術の才能に恵まれた皇帝が多い。現に父皇帝も上級大規模魔術を行使できるほど、優れた魔術師である。

 レオルリヒトに下された判断に、周囲は落胆した。だが、レオルリヒト自身の落胆は周囲の比ではなかった。父のように堂々と格好良く、高難易度の魔術を放ちたいという、少年らしい憧れが一瞬で砕かれたのである。夢も希望も失ったに等しい彼の落胆ぶりに周囲は焦り、さりとて慰めの言葉さえ浮かばない。

 そんなレオルリヒトは、やさぐれた。

 それまで苦しみながらも続けていた勉学に剣術その他、世継が身につけるべき事柄を疎かにし、同世代で優れた魔術の才を見せた者に対しては辛く当たるようになった。

 だが、そうなっても父皇帝は何も言わなかった。


「自ら立ち直れぬ者に、皇帝など務まらん」


 そう言い放ち、周囲の干渉も禁じたのである。それからのレオルリヒトは傍若無人な我儘馬鹿皇子一直線だった。

 しかし。

 それから十年以上が過ぎた今、レオルリヒトは皇太子として立派にその務めを果たしている。


「……アレが現れなければ、レオルリヒトは駄目だったな」

「そうですわね。でも陛下は相変わらずリューシディア姫には厳しいのですわね?」

「それだけの価値がある娘だからな。レオルリヒトは…まだ甘い」

「自分の息子より、よそ様の娘を褒める親も珍しいですわ」

「事実なのだから仕方あるまい。現に、あの娘は真相を掴み動き始めた。だがレオルリヒトはその足元にさえたどり着いていないのだからな」

「……陛下も大概お人が悪いのですわ」

「そんな男の子を宿したいと願った其方も、大概同類だと思うがな」

「あらまぁ。それは最上の褒め言葉ですわ」

「当然だ。褒めているのだからな」


 ……人前では堂々たる威厳を崩さぬグァルディオラ帝国の現皇帝は、正妃の膝に頭を乗せて、のんびりと他愛ないお喋りに興じていた。

 正妃は、レオルリヒトの生母でもある。

 正妃の子であり、しかも長子であるレオルリヒトに掛けられた期待は大きく、それ故に皇帝も正妃も甘やかすことは一切しなかった。しかし愛情がない訳ではない。むしろ愛情は有り余っていた。二人は聞き分け良く、出来の良すぎる息子の将来を案じていた。

 そこに魔術師の才能か皆無という知らせを受け、二人は最愛の長男を敢えて、谷底へ突き落とした。


「またまだ足りぬが、皇太子としては充分だ。あとはあの娘はを御することができるかどうか」

「無理ですわね」

「ははは! なかなか手厳しいな。その心は?」

「覚悟が違いますもの。全てを持つ者と、全てを持たざる者。どちらが求める気持ちが大きいかなど、一目瞭然ですわ」

「其方と同類の姫だからな」


 皇帝の言葉に正妃は曖昧に微笑んだ。

 正妃はグァルディオラ帝国貴族、元は伯爵家の令嬢とされているが、真実は違う。彼女はかつてグァルディオラ帝国が滅ぼした小国の王女であった。敗戦の折、彼女は一般兵に混じって剣を振るっており、グァルディオラ帝国軍に捕虜として捕らえられていたのだった。

 さらに彼女は、捕虜の監視の目を掻い潜り皇帝の天幕へ、ただ一人奇襲をかけた程、剛毅な性格をしていた。

 当時婚約者の定まっていなかった皇帝は、彼女の豪胆な性格に緻密な計算のできる頭脳を買った。彼女を国内の伯爵家の養女にした上で、正妃に迎え入れたのだ。


「あの娘は動き出した。随分と遊ぶ気で策を練ったようだ」

「あらあら。相変わらずお転婆さんですのね」

「かつての其方のようにな」

「ふふふ……そんな私を受け入れ、愛を下さった陛下に感謝しておりますわ。側室の方々を苛めたくなる程度には、嫉妬もしておりますわ」

「仕方あるまい。王の務めだ」

「それでも、嫌なものは嫌なのです!」


 正妃は、膝に転がる皇帝の髪をぎゅっと引っ張った。


「……痛いぞ」

「痛くしてるんですから、そうでなくては困ります」

「ふむ。儂だけが困るのはおかしいな」


 言葉と共に身を起こした皇帝は、正妃を一瞬で押し倒した。



 ーー威厳に溢れ、厳格な第二十三代皇帝。

 文武に優れ、厳しくとも為政者としての敏腕を讃えられる皇帝が、正妃にベタ惚れであることは、側近しか知らぬ現実である。


実は「育て方を間違えた!」と、父親に言われたことがあります。

ですが!

私は今の自分をこれっぽっちも後悔していない!!

持って生まれたものを、どういう方向に伸ばすかなんて、やってみなきゃわからないものですよね?

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