第十四話 仕掛けは念入りに2
タイトルを変更しました。
今回は短めです。
リューシディアから話を聞いたリュクロームは、その秀麗な容貌の眉間を顰め、リューシディアの話を吟味していた。
その間、リューシディアは借りてきた猫のように身を竦めていた。
幼い頃からリュクロームがリューシディアを溺愛しているのは、リューシディア自身も自覚しているし、レフェト王国滅亡以後のそれは、もはや依存とも呼べる程度に悪化しているという自覚もある。だが側から見れば盲目的でも、リュクロームの本質は盲目的になることを決して許さないことも、リューシディアは知っている。
飄々としているような兄だが、誰より王族として誇り高く、強い意志を持っている。故に、リュクロームが否としたら、それはもはや覆すことが出来ないのである。
それがわかっているからこそ、リューシディアは緊張していた。
今回の作戦はリュクロームの同意が不可欠であり、そのリュクロームこそが、最も危険な位置に立つことになる。
リューシディアだって、リュクロームが誰より何より大切なのは変わらない。だからこそリューシディアも考えに考え抜いてなんとか別案を練った。そして考えるほどに、これ以上に効率的かつ最大効果を得られる作戦はないのだと気付くだけだった。
リューシディアは只々、兄の判断を待った。
「策としては良く出来ているけど……これをリューシディアがやる必要があるのかな? この国のことはこの国の人間が対処すべきだと思うけど」
「……う」
「そりゃね、帝国内での味方は多いに越したことはないよ。でもこれだけの危険を冒す目的がはっきりしていないよね。脳筋、体力馬鹿の多い軍部は上層部含めて、大半がリューシディアに好意的だし、先の戦で辺境伯もリューシディア寄りだよね。他に誰を巻き込むつもりかな?」
「巻き込むなんて、非道いですね兄様」
はは、とリューシディアは苦笑した。
「今回の獲物はイェリート公が隠している秘密です」
「……また随分な大物が出てきたね」
「当たり前です。それくらいの報酬が無かったら動きません」
「だからって、リューシディア。随分と非道いんじゃないかな?」
「だから、兄様の許可を求めに来たじゃないですか」
「この僕に最愛の妹を、芝居とはいえ変態に差し出せなんて、随分と鬼畜だと思うけどね」
「差し出すんじゃありませんよ。罠を仕掛けに行くんです。むしろ差し出されたのは変態の方ですよ?ーー誰も望んでませんし、寧ろ願い下げですが」
「おまけに小物だし?」
「小物ですけど、金の繋がりは厄介ですから、早々に御退出願いたいのですよ」
「んー……」
「駄目ですか?」
リューシディアは下から伺うようにリュクロームを見つめる。必殺!ウルウル上目遣い、である。兄がこれで落ちなかったことは、過去一度も無い。
案の定、リュクロームは額に右手を当ててがっくりと俯いてしまった。
「リューシディア。それは卑怯じゃないかい?僕がそれに勝てないってわかってるよね?」
「未来の為です」
「……あぁ、もう! そんな子に育てた覚えはないよ⁉︎」
「ええ、そうですよ、兄様。育てたのはあの皇帝です」
「…………」
しれっと答えたリューシディアに、リュクロームは絶句した。
事実である。
兄と別れ、ひとりだけ皇帝の後宮に残されたリューシディアは皇帝の正妃に預けられ、用意された教師陣の他、ことあるごとに皇帝自らの教育を施されてきた。
結果として、リューシディアには徹底した帝王学、外交術が施される結果となった。
「あの皇帝、ほんっとに! 碌なことしないねっ……!」
「同感です……」
麗しき兄妹は、揃って溜息を吐いた。
リュクロームは明るく素直だった可愛い可愛い妹が、いつの間にか腹黒鬼畜仕様な性格に変貌を遂げていく現実を嘆き、リューシディアは皇帝から受けた、五歳の幼女に何教えてんだよ⁉︎と、誰もが全力で突っ込んだ数々の教育と言う名の鬼畜訓練を思い出したのだった。
どこまでも不憫という言葉が付き纏う、美形兄妹である。
話が進まなくてすみません。
毎月60時間超の残業って、今時アリなのでしょうか……
時間を見つけてチマチマ書き溜めてたのですが、ストックが終わりました……さらに更新ペースが落ちるかもしれませんが、見放さずお付き合いくださると嬉しいです(^ ^)
ありがとうございました!




