あの日あの時のプロポーズ
「私と結婚しなさい!」
そんなマーリンの盛大な告白という名の求婚から俺の人生は大きく変わったんだーー。
俺、アテナはどこにでもいる普通の高校生だった。三年までは。
四年になりクラス替えをして、特に知り合いもいなかった俺はいわゆるボッチになっていたんだ。まぁ、ボッチでも気楽に暮らしてたから不自由はなかった。椅子に座ってずっと寝ていただけだが。
そんなボッチも慣れてくる頃、マーリンは俺に声をかけてきた。
「一緒に昼ご飯食べない? 私も一人だし? ボッチ仲間として、ねっ?」
断っても良かったけど俺は四年になって久しぶりに声をかけてもらえたと内心「うっしゃー!」と思っていた。うん。俺はボッチを回避したんだ。
「いいよ。これから毎日一緒に食べよう」
軽い気持ちで俺は言った。それが後々あの言葉を言ってくるとは知らずに、だーー。
特にいつもと変わらなく昼ご飯を食べていたんだ。いや、マーリンは顔を赤くしてたんだっけ。それと話す声が震えていたような。あ、なかなかの良い天気だったから外に行ってベンチに座って一緒に食べてたんだった。
俺達は食べ終わって教室に戻ろうと階段を登っている際中だった。マーリンが「待って」って言ってきて俺は立ち止まった。「なに?」って聴くとマーリンは顔や耳までをも赤くして俺に言ってきた。それも上から目線に。
「私と結婚しなさい!」とな。
これを人に聞かれてたらどうなっていただろうか。幸い一人もいなかったが。俺はマーリンに「なんの冗談?」と言った。するとマーリンは目つきを鋭くして言った。
「冗談なんかじゃない。私は本気よ? 冗談でこんな恥ずかしいプロポーズすると思ってるの? 私はアテナのこと好きになったって言ってんの!! それでアテナの返事は?」
俺は立ち尽くしていた。急に返事って言われても困る。好きじゃないと言ったらマーリンは悲しむだろう? なら、どう返事すれば良いのか。
返事に悩んでいた俺の気持ちを察したのかマーリンはため息をつきながら言った。
「まぁ、いいよ。要するにアテナは私の事をなんとも思ってないってことでしょう? なら、私が好きと言わせるまでよっ!!!!」
悲しむどころか逆にマーリンの火をつけてしまったようだ。そんなこんなで俺の人生は変わったわけだ。
これを機にマーリンはどんな時でも俺にくっついてくるようになった。もう、周りからすれば熱々カップルにしか見えていなさそうだ。今まで空気の様な存在になっていた俺は一気に校内有名人にのぼりつめた。注目されるのはあまり好きじゃないんだけどなーー。
休日までもマーリンは俺の寮に訪ねて来て、呼び出され、デートとなる。俺に休日をくれー! そう叫びたい。
これはある日のデートだった。この日から俺は変わっていったと気づいたんだ。マーリンは変わらないけど。
マーリンの方はいつも幸せそうに微笑んでいる。それを俺は「可愛いいな」と思ったんだ。
俺はマーリンの事を好きになったのか? いやいや、そんなはずは。毎日会って「好き」と言われて、知らず知らずのうちになったのか? まじかよ、俺。……あ、もしくは同情しているのかも。マーリンの顔を見たら何か分かるかな? と思いそっとバレない程度に見る。
「どうしたの? 私の顔に何か付いてるの?」
思いっきりバレた……。マーリンの短いスカートは俺の方に振り返ると同時にヒラッとする。おい! 気をつけろ! パ、パンーが見えそうに……。お、俺キモッ。どこ見てんだよ。思わず自分自身にそう突っ込む。それで俺は顔を赤くしたところでマーリンにこう言われた。
「もしかして、私の事、好きになちゃった?」
小悪魔だ。隙をつきやがってー!
俺は「全然だよ?」と応える。するとマーリンは難しそうな顔をする。
「どうすればアテナを落とせるのよー! 中々しぶといわね!」
マーリンは頬を膨らました。俺はこれを機にマーリンを意識するようになっていった。
ドジッたところも怒ったところも些細なことも可愛いと思ってしまう。はい。俺の負け確定です。完全ノックアウトですよ! でも、俺の気持ちはまだ伝えない。あと少しこのひと時を堪能したいね。マーリンには悪いけどーー。
堪能したところで俺も告ろうとしたんだ。マーリンしかいない時に。……けど、イザってなると恥ずかしいな。ダメだ!! マーリン凄いよ! よく言えたな! 告白通り越してプロポーズするのは正直に驚いた。今考えたら凄い勇気だな!! 憧れるぜ! 改めて俺も言うか。
「マーリン。俺が負けました!! 好きだよ!」
初めはきょとんとしていたマーリンだが、この言葉を理解したのか俺の方を見て泣いて、そして嬉しそうに笑っていたーー。
ホントに俺の人生はプロポーズされてから変わったね。いや、マーリンに昼を誘われてからか? まぁ、今となってはどっちでもいいことだけど。
懐かしそうに回想を巡らせーー頬から雫が滴れた。そして君の手を力強く握りしめる。溢れそうになる感情を押さえつけながら俺は言うーー。
「懐かしいね。君からのプロポーズーー」




