プロローグ1【古の物語】
この世には様々な者たちがいる。
魔の力を扱うのに長けたものがいれば武の力に長けたものもいる。
生まれたままの姿で生きるものもいれば竜や獣に姿を変えるものもいる。
それぞれの者たちは様々な長所と短所を持ち、様々な価値観を持っていた。
そしてその価値観の差により争いが生まれた時代が多く存在した。
きっかけは人族と魔族の争いだった。その争いの飛び火が他の者たちにも降り注ぎ、何が目的なのかも忘れ、ただひたすらに目の前に存在する『敵』を憎み、争うことだけを続けた厄災。
それに決着を付けるべく魔族の長は犠牲を厭わず、異界から『招かれざるモノ』を呼び出し味方に付けようとした。しかし、それは失敗に終わり、世界を更なる絶望へと叩き込んだ。
制御できず理性を完全に失った『招かれざるモノ』はただただ破壊を繰り返し、数多の土地を焼き、生命を奪った。
自分達がやっていたことも同じことだと漸く頭の片隅で理解したのだろう。この危機に種族を超え、協力し合い、なんとか魔族たちの拠点であるオメガ島に結界で封じた。
だがそれは単なる時間稼ぎに過ぎなかった。
残された日々を脅えて過ごし、生まれ育った故郷を離れぬ者もいれば、なんとか少しでも島から離れた所へ行って生命を長らえさせようとするものもいた。
これは古の物語。
この戦の後の名前は『天魔祭』
天から送られた絶望と言う名の魔の祭。
しかし、そんな絶望に抗おうと生きるものも中にはいた。