敵対組織:上
誤字のパレード修正
目を覚ますと頭痛がした。
僕はぼんやりした頭のなかで昨日のことを思い出していく。
「大丈夫か?」
声のする方を見ると、涼介が居た。
「ここはどこ?病院?」
パイプベッドに薄い白のカーテン、病院というよりは保健室のような場所だった。
「俺の家。んで、ここは医療施設」
「そう」
ふと、母さんをあのままにしたままだったと思い動こうとする。
「待てって、体の方の傷は治ったかもしれねーけどさ。昨日の今日だ。それに、俺の話しを聞いてくれ」
「どうでもいい、それよりも母さんは?」
「…」
どう伝えたらいいのか迷っているような顔をする京介に
「昨日のことなら覚えてるよ」
「全部か?」
「全部」
「そうか……、遺体はこっちで保存してある」
「母さんの場所まで案内してくれ」
昨日のことは覚えてる。でも僕は、母さんをもう一度見るまで認めたくなかった。
「いや…響、それはやめとけ」
「っ!……わかったよ…」
涼介の泣きそうで苦しそうな顔に僕は少し怯んだ。
「響…葬儀がしたいならこっちで準備する」
「お願い…」
「…分かった」
体が寒く感じ、シーツを抱きしめた。
「ところでさ…、涼介の家ってなんなの?」
「ん?んー…、簡単に言えば響ん家の本家と敵対関係の組織かな」
「え?」
敵対…それなら僕も殺されるのでは?と警戒した。
「いやいやいや、警戒すんな!そもそも、この組織立ち上げたのは響の親父さんだよ」
「父さんが?」
「おう、響の親父さんは俺の親父と敵対関係の家の癖に仲が良かったみたいでな。
二人で立ち上げて、まとめた組織らしい。ここの組織の構成員はほとんど響の境遇と一緒の奴らばかりだな」
「特殊な人と普通な人との間の子ってこと?」
「そうだ」
「つまり、涼介はこの組織リーダーの息子ってことか…」
「そうなるな。あと、響。本当にすまない…俺たちがあの場に間に合っていれば…」
「いいよ」
土下座をする勢いで頭を下げる涼介が悪いとも組織が悪いとも思っていなかった。
だって、もう、あの場所もあの時間も母さんも二度と帰ってこないのだから。
「すまない…本当に…。それと、…これ」
僕の手に綺麗に畳まれたマフラーを渡してきた。
今まで忘れていた感情が一気に溢れ出し、制御が利かなくなった。
「ちょっと、一人に…させて…」
「無理だな」
「なん…で?」
涙で前が見えない僕は俯いて聞いた。
「人の感情ってのは人に伝えるもんだ。一人で笑ってても虚しい。でも、誰かと一緒に笑ってれば楽しいだろ?
だったら泣くのも一緒だ。人前で泣くことは情けないことじゃない。」
「…っく…」
僕の頭を撫でながら、そういう涼介に反論する余裕はなかった。
「確かに、俺らの歳だったらそうはいかないかもしれないが。それでも、泣くのを耐え切れないなら、信用できる人の前だけでも、泣いて慰めてもらえ。泣くのは弱さじゃない。悲しみを受け入れるための感情なんだからな」
「なんで言いたいこと…わかるんだよぉお!!!」
今の精一杯の反論をして、僕は涼介の前でしばらく泣き続けた。
すみません。土曜日は仕事が忙しくて暇がなかったです…。




