父の形見:中
あけましておめでとうございます。
そして、投稿非常に遅れてすみません!
「その玉の銘は『桜』。そのまんまだろ?」
そう言った後、一仁さんが歩き出す。
「今度は何処へ行くんですか?」
「んー、地下の広場かな」
広場…地下に作る必要あるのだろうか…。
武器庫を出て、エレベーターの前を右に曲がる。
「さっき、狐塚の苗字に変えたいって言ってたよな?」
しばらく歩いていると、突然訊いてきた。
「…はい」
ついさっきまでの雰囲気がまったくなく。
その真剣な様子が怖い。
「……すまん、博義…」
「響ちゃん〜!」
朱莉さんの呼ぶ声で一仁さんの言葉がよく聞こえなかった。
「さっきなんて言いました?」
こちらを見た後、そのまま涼介と朱莉さんがいる方に歩いて行く。
「とりあえず、ここの説明を…涼介してやってくれないか?」
「は?俺??」
「お前が一番利用してるだろ」
「へいへい。響、ここはまぁ…訓練所としてよく使うところかな?」
「へぇー」
この広い施設の説明をざっと涼介が案内しながら説明してくれた。
とりあえず、更衣室とシャワールームは「女子用を使用する」これだけ
覚えておけばいいはず。
「お前…説明殆ど聞いてないだろ…」
「うん」
「お前なぁ…」
涼介は呆れているが普通のトレーニング施設とか行ったこともないから
細かく説明されても覚えられるわけがない。
さらに、女性用を使用することを考えれば気が滅入る。
だから、僕は開き直って下を向いて溜息をついている涼介にお願いをしよう。
「わからなかったらその時にまた教えて?」
「…っ、わかったから顔を離せちけーって!」
何がいけないのだろうか?確かに、こういう形で涼介にお願いすることはなかった。
しかし、お願いをするときは人の顔を見てするものだし。
下を向いていたらか覗き込んだだけなのに…。
「とりあえず、親父のいるとこ戻るぞ」
考え込もうとするとそういって涼介がスタスタ歩いて行ってしまった。
「説明は終わったか?」
「あぁ、とりあえず一通りは」
「んじゃ、俺の番だな」
そう一仁さんが呟くのに涼介は渋々頷き少し離れたところに居る朱莉さんの方へと向かった。
「さて、響。この先、お前には常に死が付きまとう事を覚悟しているんだろ?」
死にたくはない。
僕は涼介と朱莉さんのいる方を見つめる。
「はい。僕はもうあんな思いをしたくないし、させたくもない」
そう言い切ると、一仁さんは険しい顔をつきをした。
「そうか、ならその言い分を実力で通せ」
そう言いながら、拳を振り下げてきた。
咄嗟の事で反応が遅れたが、右手で何とか受け流す事が出来た。
はずだったが、体勢を大きく崩し右手が痺れた。
どんな馬鹿力だよ!!
「反応速度は悪くないな。が、さっきのでお前は死んでるぞ」
「…」
そう言われ、返す言葉もない。
「そんな事で心は折れないか。さて、本場と行くか」
構えをとった一仁さんの雰囲気で、僕は固まる。
息がしっかり吸えない。動けない。
「どうした、さっきが怖いのか?相手はお前を殺しにくるぞ」
殺気って本当にあるんだ…。
創作の中の物だとばかり思ってたよ。
捕食者と見つめあってる気分でしかない。
深呼吸をして、現実逃避から戻る。
相手が殺す気できているのなら自分も殺す気でいけば良い。
ただそれだけだ。
「それが、”呪い”か…」
一仁さんがそう言いながら蹴りを入れようとする。
簡単なこと。
殺せばいい。
響の髪の毛は、新品の毛筆に墨を付け染み込んでいくように毛先から黒くなっていく。
読んでくれてありがとうございます(`・ω・´)ゞ