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○○な男

馬鹿な男

作者: 末吉

どうしてもプロローグみたいになってしまう短編。どうしたものか

『お前の彼女は預かった』


 放課後。帰宅してのんびりしていたところ、俺の携帯電話にそんな電話が入った。

 生憎彼女という存在に心当たりがないので首を傾げていると、『今から言うところに一時間後こないと、その彼女がどうなるか分かったもんじゃねぇぞ?』と言われたので「正直に言うが、俺は自分の彼女に心当たりがない」と答えた。


 本当に心当たりがない。見間違えられたのか分からないが、罪悪感があるのでさっさと行こう。


 そう思ったので相手が答えようとしたところで電話を切り自分の部屋へ向かい適当に見繕って向かうことにした。


 ……場所を聞いてなかったな。



「ちょっとあんた達。まさかあいつを呼ぶために私をさらったの?」

「よく分かったな。しかし、どうしてそう冷静でいられるんだ?」


 電話を突如切られ、困惑していたところ連れてきた少女が的確なことを言ってきたので疑問に思った集団の一人が質問したので手首を後ろに縛られて座っている彼女は「こうなった以上、あんた達自分の命の心配しなさい」と忠告した。


「は? お前何言ってるんだ?」

「親切な忠告よ。あいつバカだから。こんな状況で相手に手加減することなんてしないわよ」

「そうか。やっぱりバカだからあいつ場所の確認せずに電話切ったのか」

「ああそれ? たぶんあいつ、私の事彼女だと認識してないからとりあえず行こうと思って電話切ったのよ。どうせ――」


 ピリリリ。少女の言葉の途中で一人の電話が鳴り響いた。

 誰だと思いその人が電話に出たところ、件の人物からだった。


『もしもし。すまないが場所を聞くのを忘れていた。今からで申し訳ないが場所を教えてくれないだろうか?』

「ハァ!? なんでお前、俺の番号を!!」

『むしろどうしてお前の電話番号が分からないと思うんだ? お前は俺に電話を掛けた。非通知だろうが、俺の電話には相手の電話番号が表示される。ところで、場所はどこだ?』

「……桐ケ谷第二倉庫だ」

『何とか間に合わせるので待っていてくれ』


 そう言うと電話が切られたので全員が少女に視線を向けると、「だから言ったでしょ? あいつバカだって」とため息交じりに言われた。


「どこがバカなんだよ! 非通知設定の番号暴くとかそんなの直接改造しなきゃできないだろ!!」

「だからバカなのよ。『非通知の設定が度々来ると用件の確認ができないから番号を通知させるか』と言って色々弄ってたし」

「は?」

「あいつはね」


 目が点になるこの場に集まっている一同――約三十人。

 何やってるんだろこいつらと思いながら、少女は続けた。


「何をするにしても正直すぎるし、テクノロジー大好きだからそれに対して一直線で延々開発してるのよ今は。『発明王になりたい』とか言う現在の夢に向かってね」


 でも喧嘩が強いのは子供の頃に鍛えていたからね。見た目は昔からだけど。

 そう付け足したところ、倉庫のシャッターが吹き飛んだのでそちらに視線が向く。


 そこにいたのは、傷だらけになっているのに表情を変えない、銀髪で後ろ髪を肩まで伸ばし、背中に何かを背負っている長身の男。


 見るからにボロボロのその男は背中にしょっているものを丁寧に下ろしてから三十人の方へ近寄りながら「最初に言っておくが、俺に彼女はいない」と言い出した。


『……は?』


 なんで今そんな事? そんなことを一同が思っていると、「喧嘩がしたいのかお前達?」と用件を切り出した。

 そりゃそうだろうと全員が思い黙っていると、「そうか」と言ってボロボロの身体で拳を打ち合わせ、構えてから「来い。人質を取るその性根叩きなおしてやる」と切り出した。


 その言葉を皮切りに相手の一人が駆け出したので、そこから喧嘩が始まった――



 パンパンと手を叩く音がしばらくして聞こえた。


 喧嘩の場となった倉庫内の現状は悲惨という言葉がぴったりだった。

 誰も彼も死んではいないだろうが、全員が血の海に沈み言葉を発していない。

 その惨状を作り上げ、唯一立っている男は腫れ上がった顔や動かない腕の事など気にせず座り込んでいる少女の元へ近寄る。


「大丈夫か? 災難だったな」

「別に大丈夫よ。あんたと一緒にいるってことはこう言うことになることもあるし」

「スゴイな」

「あんたの方がすごいわよ。その一直線で」

「別に」


 そう言うと少女はすくっと立ち上がる。縛られていたはずなのだが、いつの間にか縄は切られていた。


「本当にもう傷だらけで。無茶しすぎ」

「時間に間に合わなそうだったから出力上げてきた」

「……そう。ありがとうね」

「悪かった」


 そう言うと男は背を向け、足を引きずりながら少女を置いて歩き出す。

 あまりにも遅いので息を吐いた少女は隣まで歩いてから歩幅を合わせて「病院まで行くわよ」と有無を言わさぬ口調で彼に言った。



 これは、どこまでも愚鈍で一直線な不良然の科学少年が歩く青春の1ページである。

ご覧いただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  最近は愚直な人は多いかもしれません。 [一言] あまりに正直すぎるのも考え物です。
2015/09/21 11:18 退会済み
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