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プロローグ

 水分を多く含んだ湿った空気が僕の頬をかすめた。

 僕は洞窟の薄暗がりの中を必死に目を凝らして走っているところだ。


 高さ10メートルはあると思われる、巨大な竜が巣食う大きな洞窟。


 壁や天井のあちこちにきのこのように生えている光輝く鉱石ライトミネラルはこの洞窟の薄暗がりを照らす唯一の光源だ。


 《ライトミネラル》はこのゲームの世界では、電球の代わりにもなり、この鉱石自体が電池の役割を担い、日常生活における消耗品だ。


 ところで、この世界。

 僕が今、プレイしている『パラノーマル・オンライン』。略してPNO。

 これは、文字通りオンラインゲームであり、今はやりのVRMMO(仮想現実大規模他人数オンライン)である。


 ちなみに今、僕は1人でこのゲームでプレイしているところだ。


 ……うん、1人だ。


 あれ、でも何故せっかくのVRMMOをみんなで楽しくプレイしないんだって声が聞こえてきそうだ。


 何しろ、VRMMOだ。オンラインゲームだ。

 オンラインゲームの醍醐味だいごみと言えば、みんなでわいわい楽しみながらゲームが出来ることに違いない。


 確かに一理ある。

 それが普通のゲームとオンラインゲームの最大の違いだからだ。


 だが、僕はだからと言ってオンラインゲームをみんなでやる気はない。

 ゲームを楽しんでいる最中に、くそ面倒なやり取りをしないといけないし、みんなに動きを合わせなければならない。


 ゲームを純粋に楽しみたい僕からすれば、他人数プレイなんぞ何と無駄なことか。


 何度か過去に他人数プレイをやってみたが、他人に上手く動きを合わせることが出来ず、敵との戦闘中に掛け声もなかったために、僕は結局のけ者にされてしまった。


 ていうか、戦闘中に足を引っ張る足手まといが悪いんだし、敵を倒すのに掛け声が必要なほど酷いザコプレイヤーの実力が悪いんだよ。

 僕は、敵を倒すのにしっかりと貢献したというのに、メンバーはチームワークを乱すなとか何とかグチグチ言うし。


 そんな訳で、僕はVRMMOでボッチプレイを楽しんでいるわけだ。

 うん、最高だ。


 誰からも不満を言われることもないし、面倒な人付き合いをしなくても済む。

 所詮、コミュ障の僕にはVRMMOのメリットを100%生かすことは無理だったらしい。


 そんなことを考えながら先を急いでいると、僕の視界には、あまりにも頑丈そうな分厚い門がうっすらと見え始める。


 ボスの部屋の入り口だ。


 確信のこもった表情で、僕は前方の巨大な門を見据えた。

 そして、門の側に駆け寄り、直接門に手を触れる。


 石で出来た門のひんやりとした冷たい感覚が、僕の手から足先まで全身に伝わる。


 その時、僕は洞窟内の温度の低さを改めて肌で実感するのだった。


 巨大な門はびれた古い歯車が動き始めるような、鈍い音を立ててゆっくりと開き始める。


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